半分異世界

月野槐樹

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第4章 詩英1

第48話 Yの妹

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そう言えば今日のバイトの時、Yは結構頻繁に携帯を見ていた気がする。
あれはお母さんからの連絡を気にしていたのか‥‥。妹さんの情報が入ってくるかもしれないなら、気になって仕方なかっただろうな。

「妹さん携帯持ってないの?」
「持ってるけど。全く繋がらない。電源落としてるみたいなんだよね。‥‥でさ、妹とか弟って、家出した時に兄に連絡してくると思う?」
「うーん‥‥。」

俺は弟の圭の姿を想像した。圭は‥‥して来ない気がする‥‥っ。だけど、気落ちしているYに連絡して来ないだろうなんて言えない。

「関係性によるんじゃない?兄弟姉妹だって、人それぞれだし。」
「は~。だよなぁ。」

妹さんが心配な上に、お母さんからの圧も感じてちょっと参ってきているそうだ。

具体的な対応策が浮かぶわけでもなく、Yからの話を聞いただけで駅の改札前で別れた。
高校生の女の子か。そりゃ心配だろうな。何か事件に巻き込まれたとかじゃないといいけど。
Yの乗る電車の改札口に向かって人混みに紛れて行く後ろ姿を少しの間眺めていた。

家に付いたのは夜中近かった。まあ、何時も大体そんな感じなんだけど。
玄関を開けたら、いつもなら真っ暗なはずの廊下に灯りが漏れていた。台所に誰かいる?
そっと覗いてみたら、圭が何やら瓶を持って振り回している。夜中に何やってんだ?

じっと見ていたら気配気がついたのか、圭が振り返ってちょっと気まずそうな顔をする。

「あ、おかえり。」
「おう‥‥。」

テーブルの上には、二人分食事が並べられていて、ラップがふんわりとかけられていた。
母さんはまだ帰って来てないってことか。
このまま食事にするかと思って流しで手を洗った。
水滴で曇っていたラップを取り外すと、ハンバーグだった。うーん、ハンバーグは昼も食べたんだよなぁ。
思わず、口に出してしまったらしくて、圭に謝られてしまった。

「あ、ごめんね。」
「‥‥いや。」

謝る必要ないだろ。俺が昼何食べたかなんて言ってないんだし。ちょっと気まずい気持ちで居たら、圭が冷蔵庫を開けて何かを差し出して来た。
小さい小皿にのった卵焼き3切れ。
卵焼きは好物だ。卵焼きだと毎日でもいい気がする。一切れ目は一口で食べた。
好みの味だ。冷めていても美味しい。
バイト先の居酒屋のは何だかちょっと俺には甘いんだよな。
残りはゆっくり食べたつもりだったけどあっという間に3切れ食べきってしまった。もっと食べたいな。
でも、ハンバーグも美味い。
圭、腕上げたかな。
俺も大学入るまでは、一緒に飯を作っていたりしたから、料理は結構やるほうだ。その流れで調理とかをする居酒屋をバイト先に選んだ。
でも卵焼きは圭の作る物の方が美味しい気がする。
集中して食べていたらしくて、いつの間にか圭が居なくなっていたのに気がつかなかった。

もっと圭と話をすればよかったかな。
今度、卵焼き美味かったって、言おう。
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