半分異世界

月野槐樹

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第4章 詩英1

第47話 Yの相談

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「いいよな。俺もYシャツが欲しいわ。」
「Yシャツっていうと別のになりそう。」
「ワハハ。そっちでもいい。就活につかえるし。」

たわいもなく会話をしながら着替えて、職場に挨拶してから二人で駅に向かう。
帰宅方向が違うが、途中まで一緒だ。
雑踏の中を人を避けながら進む。

「なあ、Jは弟がいるんだったよな。」
「ああ。」
「仲良い方?」

Yに問われて、ちょっと考える。仲良いかというと‥‥そうでもない。仲悪いわけではないけど。

「んー。仲悪いわけじゃないけど。歳離れてるしあまりしゃべんないわ。」
「そっか‥‥。」

Yはそう言うと、空を見上げた。都心で街中が夜も明るいから星とか見えないけど。
どうしたんだろう。
そういえばさっき、家の事で何かあったみたいな事言っていたな。

「妹がさあ。高校生なんだけど‥‥。」
「へえ。妹いたんだ。‥‥可愛い?」
「うーん。顔は俺と似てるって言われるから‥‥。」
「髭面‥‥。」
「髭はないない。」

何か神妙そうな顔をしていたYが笑った。Yは顎髭を生やしていて、ちょっとワイルド系。まあまあモテそうな感じもするけど
似た顔の妹って‥‥、アスリートみたいな感じか?

「Yの顔でおさげをつけてみた妄想‥‥。」
「うん。やめて。おさげじゃないし。短めのポニテとかだから。」
「ほうほう。‥‥で?妹さんのことで何かあった?」
「うーん。」

Yがまた難しそうな顔をする。少し躊躇したような顔をした後、口を開いた。

「‥‥いなくなっちゃったっぽくてさ。」
「はあ?何?家出?」
「家出かも。」
「かも、なの?はっきりしてないの?」
「うちさ、両親が別居してて‥‥。俺は父親と一緒に住んでて、妹は母親の所なんだ。‥‥で母親が妹と喧嘩したらしくて
その後妹が帰って来なくなったから、俺んとこ行ってるんだろうって思ってたんだと。プチ家出的な。」
「でも来てなかったと。」
「そう。しかも、クラスの何人かもいなくなってるんだと。」
「集団家出? 全然連絡ないの?」

そりゃ心配するよなぁ。

「他の生徒もいなくなってるから学校から連絡あったらしいんだけど、うちの母親はこっち行ってるって思い込んでたから
なかなか話が噛み合わなかったらしくて。俺んとこまで話が来るのが大分後だったんだ。」
「いなくなって大分経つの?」
「3週間くらい」
「え!? そんなに?そりゃ心配だよな。」

Yが元気無い顔で頷いた。
妹さんとは最近あまり交流がなかったらしい。ご両親の別居の際に、Yは大学が近いということでお父さんと住む事を選んだんだそうだ。
でも妹さんは、一緒にお母さんの方について欲しかったらしくて、少し揉めてそれから疎遠気味だったようだ。

「は~。そうなのよ。お袋のやつ最初は意地になって連絡してこなかったみたいなんだけど、一度連絡来てからは、『何かわかったか。連絡ないか。』って頻繁に訊いてくるしさ。」
「おお‥‥。まあ、心配なんだろうなぁ。」
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