半分異世界

月野槐樹

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第3章 瑛太1

第39話 状況確認

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話を続けようか迷ったけど、話すことにした。

「あの‥‥しゃべれないなら首を縦とか横に振って返事はできますか?」
三人が首を縦に動かした。少しほっとする。

「貴方達はさっき俺が呼んだ名前の方達であっていますか?」
頷く。

「今日みたいな形で召還されたんですか?」
頷く

「そのときも誰か死んだ?」
首を横に振る。

「こっちに来てすぐ、その呪具をつけられたんですか?」
頷く

「貴方達は最初の‥‥埼玉の召還者ですよね。他のところからの召還者にも会いましたか?今日以外で。」
頷く

「皆同じように呪具を付けられて捕まってる?」
頷きと否定。

「誰か逃げたとかですか?」
頷くそして柄舟さんが首を横に振って指を一本立てた。

「‥‥一人?」
意味が良くわからなくて首を傾げていたら、ライアンさんが補足した。
「気に入られたものはその呪具は付けられていない。逃亡防止用の腕輪は付けられているが。」
「はぁ~。」

俺は圭の手帳の最初に書かれた言葉を思い出した。
ーーーーそれは勇者召還や聖女召還だ。
ーーーー可能であれば逃げろ。

「圭‥‥ここまでわかってて、なんで異世界に行きたがってたんだ?」

手元のバインダーに目を落とす。
もう少しだけ質問をしよう。

「その呪具は外れないんですか?」
頷く

そうだよね。外せるなら外すよね。
「それ以外に逃亡防止の腕輪とかは付けられてますか?」
首を振る。

あれ?

「それなら逃げられるのでは?」
首を横に振る。
そして俯く。

ライアンさんが声を絞り出すように言った。
「呪具自体が奴隷の証だ。逃げても他で生きて行くのは難しい。声も出せないしな。それに、あまり物事を考える事も出来なくなる。」
「は~?何それ!?」

藍ちゃんが声を上げた。俺が言おうと思ってたとこ。

「なんで、何でそんな目に遭わないといけないんですか。酷すぎる!」
藍ちゃんはそういうとハッとして俺の方を見た。

「ねえ。クラスの人たちも?」
「‥‥そうだと思う‥‥。でも‥‥何もできないよ‥‥。少なくとも今は‥‥。」
「そう‥‥だね‥‥。悠宇君‥‥いなかったよね?」
「悠宇は廊下に居たのが見えた。召還されずに済んだのか‥‥もしかしたら悠宇も‥‥。」
「だめ!言わないで。悠宇君はきっと生きてるよ。生きてて、何があったか家族に伝えてくれてるよ!」

藍ちゃんが顔を両手で覆った。そうだね。そう信じたい。

手元のバインダーを見る。埼玉、栃木、千葉でページが別れている。
埼玉の行方不明者の一人一人の写真と名前。生年月日。
ページにポケットがついていて、それぞれ紙が入っていた。
引っぱり出してみて、驚愕した。
圭よ。一体どこまで予測してた?
一人一人のページのポケットに入っていたのは、それぞれの人の家族からのメッセージを小さいサイズでまとめて一枚の紙に印刷したものだった。
いや、これって会う前提でないと用意しないでしょ?
俺は、とん、と藍ちゃんの腕をつついて、印刷されたメッセージを見せた。藍ちゃんも口を大きく開けた。そして俺を見る。
もうタッパーと紙皿類は片付けあったので、広くなった布の上に藍ちゃんが膝で進みでた。

「あの‥‥。声出しそうな物をお見せします。どうしても見せたいんです。声ださないようにあらかじめ気をつけてください。」

何事かとちょっとぽかんとした様子の三人。藍ちゃんはまず柄舟さんにメッセージの紙を差し出した。

「これ‥‥圭君‥‥。今埋葬した私達の友達が持って来たんです。是非、見てください。」

緒方さん、江角さんにも次々に紙を渡した。三人は一瞬口を大きく開けて声を出しそうになり、涙を流しながら紙に印刷されたメッセージに目を通し始めた。

これ‥‥他の召還者達にも渡せるだろうか。
神殿に戻ることはできないだろうなとは思いながら一体何人いたんだっけとバインダーを見た。表紙の裏側のポケットが少し膨らんでいるのに気付く。
マイクロSDカードが入っていた。
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