36 / 305
第3章 瑛太1
第36話 埋葬
しおりを挟む
「‥‥。」
そうっと手帳が入っていたポケットに手を突っ込んだ。ビニールっぽい感触の物が手に触れる。
引っ張り出すと、フードバッグの中に茶色い小さい紙袋が綺麗に並んで詰められていた。
小さく「岩塩」「胡椒」とか書いてある。
「圭‥‥。」
なんだ、この‥‥。準備の良さ‥‥。
自分居ない前提なのか?
「瑛太?」
藍ちゃんが覗き込んできたので手帳を開いてみせた。何か他のページに、「ある一人で大草原に現れちゃったら」ケースとかもあった。
「圭君‥‥。」
ボソリと藍ちゃんが呟く。
顔を見合わせた。
「‥‥とりあえず逃げ出せた?」
「そうだね‥‥。」
圭からしたら、今の状況は多分「何とか逃げ出せた」ってことだろう。変な水晶にも触らずに済んだ。
俺は、手帳トフードバッグをポケットに戻した。このデイバッグは召還された時に中身が出てしまったのかぺっちゃんこだけど手放したくない。
一度肩から下ろして、背負っていた自分のデイバッグの中にねじ込んだ。
そして自分のバッグもしっかり背に背負ってから、穴堀をしている人達の方にむかった。
穴堀は俺も手伝った。藍ちゃんも手伝おうとしたら、ライアンさんに「そこらの花を少し摘んでこい」と言われていた。
藍ちゃんが言う通りにすると、ハンカチのような物を穴の脇にしいてその上に置くように指示された。
穴が大分大きくなったころ、おもむろにライアンさんがナイフを取り出した。ギクリとして身構える。
ライアンさんは、布にくるんでいた圭の遺体に手を触れた。
「おい!何を!」
止めようとしたら、ライアンさんが俺の事をじっと見た。
「髪を持って行け。遺体はここに埋めるしかないが、どこかできちんと墓を作るときがあったら墓に入れてやれ。」
「髪‥‥。」
ライアンさんは少しだけ布をめくると、圭の髪の一房をナイフで切り取った。
「ハンカチとかあるか?なるべく清潔なものを。」
「あ‥‥。」
藍ちゃんがポケットからハンカチを取り出して両手で広げて差し出した。そのハンカチの上に圭の髪の一房が置かれた。
藍ちゃんは丁寧にそれを包んで、ギュッと手の中に抱えた。
圭の遺体が包まれた布をライアンさんが抱え上げた。俺も手伝おうとしたら端っこだけ少し持ってろと言われた。
布には血が大量にしみ出していた。乾いているように見えてもじっとりとしている。
ライアンさんが圭の遺体を穴の中に安置した。圭の遺体は身体が縦にまっぷたつになっていた。断面部分を下に横向きに安置した形になった。
顔の位置の布をそっと開く。もう目は閉じていた。横顔だけ見ると眠っているようにも見える。
「圭‥‥。」
涙がボロボロこぼれてきた。袖でふいていたらライアンさんが花が並んでいる布を差し出した。藍ちゃんと一本ずつ花を取って圭の顔の近くにそっと置いた。
「圭‥‥。こんなことになって。なんにもしてあげられなくて、ごめん‥‥。」
「圭君‥‥。」
藍ちゃんは名前だけ呼んで黙り込んでしまった。ライアンさんも花を遺体を包んでいる布の上に置いた。
ライアンさんは周囲の兵士を見やった。兵士達が顔を見合わせて、花を一つずつとって置いていった。
そうっと手帳が入っていたポケットに手を突っ込んだ。ビニールっぽい感触の物が手に触れる。
引っ張り出すと、フードバッグの中に茶色い小さい紙袋が綺麗に並んで詰められていた。
小さく「岩塩」「胡椒」とか書いてある。
「圭‥‥。」
なんだ、この‥‥。準備の良さ‥‥。
自分居ない前提なのか?
「瑛太?」
藍ちゃんが覗き込んできたので手帳を開いてみせた。何か他のページに、「ある一人で大草原に現れちゃったら」ケースとかもあった。
「圭君‥‥。」
ボソリと藍ちゃんが呟く。
顔を見合わせた。
「‥‥とりあえず逃げ出せた?」
「そうだね‥‥。」
圭からしたら、今の状況は多分「何とか逃げ出せた」ってことだろう。変な水晶にも触らずに済んだ。
俺は、手帳トフードバッグをポケットに戻した。このデイバッグは召還された時に中身が出てしまったのかぺっちゃんこだけど手放したくない。
一度肩から下ろして、背負っていた自分のデイバッグの中にねじ込んだ。
そして自分のバッグもしっかり背に背負ってから、穴堀をしている人達の方にむかった。
穴堀は俺も手伝った。藍ちゃんも手伝おうとしたら、ライアンさんに「そこらの花を少し摘んでこい」と言われていた。
藍ちゃんが言う通りにすると、ハンカチのような物を穴の脇にしいてその上に置くように指示された。
穴が大分大きくなったころ、おもむろにライアンさんがナイフを取り出した。ギクリとして身構える。
ライアンさんは、布にくるんでいた圭の遺体に手を触れた。
「おい!何を!」
止めようとしたら、ライアンさんが俺の事をじっと見た。
「髪を持って行け。遺体はここに埋めるしかないが、どこかできちんと墓を作るときがあったら墓に入れてやれ。」
「髪‥‥。」
ライアンさんは少しだけ布をめくると、圭の髪の一房をナイフで切り取った。
「ハンカチとかあるか?なるべく清潔なものを。」
「あ‥‥。」
藍ちゃんがポケットからハンカチを取り出して両手で広げて差し出した。そのハンカチの上に圭の髪の一房が置かれた。
藍ちゃんは丁寧にそれを包んで、ギュッと手の中に抱えた。
圭の遺体が包まれた布をライアンさんが抱え上げた。俺も手伝おうとしたら端っこだけ少し持ってろと言われた。
布には血が大量にしみ出していた。乾いているように見えてもじっとりとしている。
ライアンさんが圭の遺体を穴の中に安置した。圭の遺体は身体が縦にまっぷたつになっていた。断面部分を下に横向きに安置した形になった。
顔の位置の布をそっと開く。もう目は閉じていた。横顔だけ見ると眠っているようにも見える。
「圭‥‥。」
涙がボロボロこぼれてきた。袖でふいていたらライアンさんが花が並んでいる布を差し出した。藍ちゃんと一本ずつ花を取って圭の顔の近くにそっと置いた。
「圭‥‥。こんなことになって。なんにもしてあげられなくて、ごめん‥‥。」
「圭君‥‥。」
藍ちゃんは名前だけ呼んで黙り込んでしまった。ライアンさんも花を遺体を包んでいる布の上に置いた。
ライアンさんは周囲の兵士を見やった。兵士達が顔を見合わせて、花を一つずつとって置いていった。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい
りゅうじんまんさま
ファンタジー
かつて、『神界』と呼ばれる世界では『女神ハーティルティア』率いる『神族』と『邪神デスティウルス』が率いる『邪神』との間で、永きに渡る戦いが繰り広げられていた。
その永い時の中で『神気』を取り込んで力を増大させた『邪神デスティウルス』は『神界』全てを呑み込もうとした。
それを阻止する為に、『女神ハーティルティア』は配下の『神族』と共に自らの『存在』を犠牲にすることによって、全ての『邪神』を滅ぼして『神界』を新たな世界へと生まれ変わらせた。
それから数千年後、『女神』は新たな世界で『ハーティ』という名の侯爵令嬢として偶然転生を果たした。
生まれた時から『魔導』の才能が全く無かった『ハーティ』は、とある事件をきっかけに『女神』の記憶を取り戻し、人智を超えた力を手に入れることになる。
そして、自分と同じく『邪神』が復活している事を知った『ハーティ』は、諸悪の根源である『邪神デスティウルス』復活の阻止と『邪神』討伐の為に、冒険者として世界を巡る旅へと出発する。
世界中で新しい世界を創造した『女神ハーティルティア』が崇拝される中、普通の人間として平穏に暮らしたい『ハーティ』は、その力を隠しながら旅を続けていたが、行く先々で仲間を得ながら『邪神』を討伐していく『ハーティ』は、やがて世界中の人々に愛されながら『女神』として崇められていく。
果たして、『ハーティ』は自分の創造した世界を救って『普通の女の子』として平穏に暮らしていくことが出来るのか。
これは、一人の少女が『女神』の力を隠しながら世界を救う冒険の物語。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
辺境で魔物から国を守っていたが、大丈夫になったので新婚旅行へ出掛けます!
naturalsoft
ファンタジー
王国の西の端にある魔物の森に隣接する領地で、日々魔物から国を守っているグリーンウッド辺境伯爵は、今日も魔物を狩っていた。王国が隣接する国から戦争になっても、王国が内乱になっても魔物を狩っていた。
うん?力を貸せ?無理だ!
ここの兵力を他に貸し出せば、あっという間に国中が魔物に蹂躙されるが良いのか?
いつもの常套句で、のらりくらりと相手の要求を避けるが、とある転機が訪れた。
えっ、ここを守らなくても大丈夫になった?よし、遅くなった新婚旅行でも行くか?はい♪あなた♪
ようやく、魔物退治以外にやる気になったグリーンウッド辺境伯の『家族』の下には、実は『英雄』と呼ばれる傑物達がゴロゴロと居たのだった。
この小説は、新婚旅行と称してあっちこっちを旅しながら、トラブルを解決して行き、大陸中で英雄と呼ばれる事になる一家のお話である!
(けっこうゆるゆる設定です)
充電式勇者。サボればサボるほど俺TUEEEE
初枝れんげ@出版『追放嬉しい』『孤児院』
ファンタジー
無気力系の高校生、殻田幹彦《からたみきひこ》は授業中に神様の手違いで事故死してしまう。お詫びとして何でも願いを叶えようと言う神に対して、ミキヒコが頼んだのは、「そんなのいらないから怠惰に過ごすスキルを下さい」であった。
これはサボり、怠け者、無気力系の主人公、ミキヒコが、たまたま助けたお姉さん奴隷と四六時中イチャつきながらも、与えられた怠惰ポイントを駆使して、成り「上がらず」、ただただ最強になりながら、日常を怠惰に過ごす普通の物語である。あ、悪徳貴族とかモンスターは普通に殺ります。
※小説家になろう様、カクヨム様でも連載しています
暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~
暇人太一
ファンタジー
仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。
ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。
結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。
そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる