半分異世界

第1章 圭

第4話 クラスメート

藍ちゃんは、小学校も同じで僕と瑛太ともよく遊んでいる。だけど、最近瑛太と仲がいいんだよね。多分この間のバレンタインの頃からかな。
なんとなく二人の距離感が違って来た感じがするんだ。
チラリと悠宇の顔をみたら、悠宇もそう思っていたのか口元がニヨニヨしてた。

‥‥まあ、いいんだけどね。僕には絵琉ちゃんがいるし。
藍ちゃんは小さい頃から小柄なのに元気で可愛かった。中学でも同じクラスになって嬉しかったけど、ある日ふと藍ちゃんの目線が瑛太を追っているのに
気がついちゃったんだよね‥‥。
瑛太は運動神経もいいし、凄くいいやつだ。今朝だって一緒に登校しようって家まで来てくれた。

僕は小さい頃の事故の後遺症で右足を少しひきずっている。歩くの遅いので気にして一緒に登校してくれているんだ。
小学校からずっとそうで、最近は同じクラスで近所に住む悠宇も一緒に登校するようになった。
多分、僕が一人で歩いていてクラスのやつにからかわれたりしないか気にしてくれているんだと思う。

同じクラスに小学校も一緒だった本木炎一郎がいる。運動部で身体が大きくて女子にも人気があるやつだ。
そいつは僕が一人で歩いていたりすると、「元気かー！」なんて言いながらドンと背中を叩いてくる。僕がバランスをとれずに転んでも
「修行が足りないぞー！」なんて言ってきて更に背中を叩いて、僕がよろけたり転んだりすると他の連中と笑ってるんだ。
瑛太が見てた時には怒って文句を言ってくれたけど、本木は「コミュニケーションだよー。」なんて言って悪びれないんだ。

まあ、いじめ、だよね。軽め？の。そこそこ陰湿だと思うけど。

一度、瑛太と藍ちゃんが先生に相談しようって言ってくれて職員室に行ったんだ。
でも、本木は運動部でもエースで先生達からの印象は良いらしくて、「ちょっと力が強いからかしらね。」なんて真剣に取り合ってもらえなかった。
まあ、本木はそういうグレーゾーンを狙ってるんだって思う。
瑛太は「決定的な証拠でもあれば。」なんて言ってくれているけどね。

今のところ、ちょっとどついたり嫌みを言う程度で、殴られたりとか露骨な事はされていないし、考えないようにしてる。

瑛太、悠宇、藍ちゃんはガヤガヤしゃべりながらも僕の歩く速度に合わせて歩いてくれていた。
早めに家を出ているから遅刻したりはしない。
予定通りに始業ベルが鳴る5分くらい前には教室に付いた。ドアを開けると、窓際の辺りで机に腰を下ろして数人でしゃべっていた本木と目があった。
本木はちょっとわざとらしく目を見開いた。

「あれ？早いじゃないか。香住クン。凄いな。よく間に合ったね。」
「本木、嫌みかよ。」

瑛太が不機嫌そうに本木を睨んだ。本木は大げさに肩を竦めた。

「まさか。考え過ぎだよ。褒めたのに。‥‥なあ。」

本木はそう言って周囲に同意を求めるように見回した。本木の周辺の連中がニヤニヤしている。

不穏な空気を読んでなのか読まないのか、クラス委員の広田桜威が立ち上がってよく通る声で言った。

「そろそろ先生が来るぞ！席につこう！」

広田がそう言うと、隅っこでおしゃべりしていた女子達もそれぞれの席についていく。
広田はテニス部のキャプテンだとかで、なんというかちょっと王子様キャラ。
もしもクラス召還されたら真っ先に「勇者様」って呼ばれそうなタイプだ。聖剣とか貰っちゃう系。

本木は‥‥名前と雰囲気から火魔法の強いやつとかのスキルでも得そうだなぁ。