31 / 256
レオンとケインは鬼になる
しおりを挟む
なんか、すごいことになってるんだよ。
ライナスは、ここ最近のレオンたちの変化に付いていけないでいる。
何というか、すごいのだ。レオンもケインも鬼気迫るものがある。
前は熱心に剣の稽古に励む、というぐらいの表現がピッタリで、微笑ましいと言うか、何というか、とにかく笑って見守っていられるレベルだったのだ……が。
……鬼気迫るってこういうことかな。
ついライナスがそう思ってしまうほど、今の彼らの自分への追い込み方がすごいのだ。
鬼のように稽古する。
鬼のように勉強する。
鬼のように調査する。
鬼のように稽古する。
鬼のように勉強する。
鬼のように……。
いや、オレのボキャブラリーの低さのせいじゃないよ。
細かい説明を省いたから、ただのバカみたいな言い方になったけどさ。
たぶん、この間の孤児院のバザー会場を視察したことが大きかったのだろう。
まだ12歳のエレアーナ嬢が、孤児院経営のため、また孤児の将来のために、懸命に考えて行動を起こす様子を目の当たりにして、まっすぐな性格のレオンと実直なケインは素直に触発されたようで。
もともと治安もよく、穏やかな暮らしができる国ではあるが、貧しい人や恵まれない人はもちろん存在していて、そのためのきめ細やかな政策は施行されているものの、やはり抜けているところはあるわけで。
自分の足りない所を突き付けられたような。
これまで安穏と、ただ学び励むだけで満足していた自分を恥じたくなるような。
背筋がびっと伸びるような、そんな感覚。
王太子でなければできないこと、宰相の一人息子でなければ知りえないこと、そんな自分なりの何かを、あの2人は見つけようと必死で。
今の2人の顔には、甘えなどどこにも見えない。
……すごいお嬢さんだよなぁ。
育ちが良くて性格が良くて頭もいい。
たぶん王族とか貴族とかだったら、それだけで十分崇められ誉めそやされるってのに。
綺麗なドレスを着て、笑っていれば安穏と暮らせるのに。
そういうことじゃない、まだ全然足りていないんだと、言葉じゃなく思い知らされた。
いや、きっとあのお嬢さんは、足りてないとか思ったりもしないんだろうけど。
そして、そんなことを人にも思ったりしない、それはわかってるけど、ただ自分で自分を恥じたくなくて。
だから、殿下も、ケインも、考える。必死になる。
民のために、今の自分には何ができるのかって。
……考えてみれば。
上から施すだけで満足してちゃダメなんだって、そんなことオレは思いもしなかった。
困ってるんなら、助けてあげればいい。なければあげればいい、そんな感じで、ただ軽く考えてた。
それも必要なんだって、エレアーナ嬢は言うけど、でもそこで終わらせないことも必要なんだって。
だから。
殿下もケインも、今は自分の時間を自分のためだけには使わない。
勉強や剣の稽古も今まで以上に励んでいるけど、合間を縫って国民のことを考える時間を取っている。
孤児院にハーブの苗を無償で提供したり、公共事業の視察について行ったり、病院を慰問したり、過去の災害のデータを調査して季節ごとの予想を立てたり。
無償で教育を受けられる学校なんて構想も、密かにあるらしい。
文字通り、小さなことから大きなことまで.それこそ、どんなことでも。
自分にできることを見つけようと、殿下もケインも必死だ。
その必死さが、男のオレから見てもすごくカッコいい。
……もうどっちが兄ちゃんか、わかんないよな。
ほら、オレって剣しか取り柄ないしさ。
いやいやいや、そういうことじゃなくて。
……とにかく、明日は、北区のキルフィエ街にある、もう一つの孤児院でバザーを開催する予定で。
殿下は、子どもたちのバザー用販売品の材料にと、小さめの木材をいくつも寄付した。
あと、加工するための道具も。
それを運び込んだときの子どもたちの顔が、ものすごく可愛かったっけ。
無邪気な顔で、オレたちに抱きついてきて。
オレも殿下もケインもぐちゃぐちゃにされて。
他の警護の者たちも、子どもたちに囲まれて、なんか嬉しそうだった。
……ケインが、黙ったまんま、一生懸命子どもを高い高いしてるの、すごく笑えたし。
殿下たちのここ最近の急激な成長ぶりは、陛下も宰相もいたく喜んでるらしい。
そのせいなのか、今度のバザーは最初から最後まで現場にとどまって手伝うよう言われている。
警護であるオレの存在に甘えすぎるなと、殿下たちも短剣一振りを腰に差して気を引き締めるようにとのお言葉だ。
もちろんオレは、いつもどおり長剣だけど。
だって護衛だもの。
ま、とにかく、剣の腕ならオレはまだまだ負けてない。
騎士だからね、オレはそれでいいんだ。うん、そう、絶対。
よーし、明日はオレも張り切って手伝うぞ!
ライナスは、ここ最近のレオンたちの変化に付いていけないでいる。
何というか、すごいのだ。レオンもケインも鬼気迫るものがある。
前は熱心に剣の稽古に励む、というぐらいの表現がピッタリで、微笑ましいと言うか、何というか、とにかく笑って見守っていられるレベルだったのだ……が。
……鬼気迫るってこういうことかな。
ついライナスがそう思ってしまうほど、今の彼らの自分への追い込み方がすごいのだ。
鬼のように稽古する。
鬼のように勉強する。
鬼のように調査する。
鬼のように稽古する。
鬼のように勉強する。
鬼のように……。
いや、オレのボキャブラリーの低さのせいじゃないよ。
細かい説明を省いたから、ただのバカみたいな言い方になったけどさ。
たぶん、この間の孤児院のバザー会場を視察したことが大きかったのだろう。
まだ12歳のエレアーナ嬢が、孤児院経営のため、また孤児の将来のために、懸命に考えて行動を起こす様子を目の当たりにして、まっすぐな性格のレオンと実直なケインは素直に触発されたようで。
もともと治安もよく、穏やかな暮らしができる国ではあるが、貧しい人や恵まれない人はもちろん存在していて、そのためのきめ細やかな政策は施行されているものの、やはり抜けているところはあるわけで。
自分の足りない所を突き付けられたような。
これまで安穏と、ただ学び励むだけで満足していた自分を恥じたくなるような。
背筋がびっと伸びるような、そんな感覚。
王太子でなければできないこと、宰相の一人息子でなければ知りえないこと、そんな自分なりの何かを、あの2人は見つけようと必死で。
今の2人の顔には、甘えなどどこにも見えない。
……すごいお嬢さんだよなぁ。
育ちが良くて性格が良くて頭もいい。
たぶん王族とか貴族とかだったら、それだけで十分崇められ誉めそやされるってのに。
綺麗なドレスを着て、笑っていれば安穏と暮らせるのに。
そういうことじゃない、まだ全然足りていないんだと、言葉じゃなく思い知らされた。
いや、きっとあのお嬢さんは、足りてないとか思ったりもしないんだろうけど。
そして、そんなことを人にも思ったりしない、それはわかってるけど、ただ自分で自分を恥じたくなくて。
だから、殿下も、ケインも、考える。必死になる。
民のために、今の自分には何ができるのかって。
……考えてみれば。
上から施すだけで満足してちゃダメなんだって、そんなことオレは思いもしなかった。
困ってるんなら、助けてあげればいい。なければあげればいい、そんな感じで、ただ軽く考えてた。
それも必要なんだって、エレアーナ嬢は言うけど、でもそこで終わらせないことも必要なんだって。
だから。
殿下もケインも、今は自分の時間を自分のためだけには使わない。
勉強や剣の稽古も今まで以上に励んでいるけど、合間を縫って国民のことを考える時間を取っている。
孤児院にハーブの苗を無償で提供したり、公共事業の視察について行ったり、病院を慰問したり、過去の災害のデータを調査して季節ごとの予想を立てたり。
無償で教育を受けられる学校なんて構想も、密かにあるらしい。
文字通り、小さなことから大きなことまで.それこそ、どんなことでも。
自分にできることを見つけようと、殿下もケインも必死だ。
その必死さが、男のオレから見てもすごくカッコいい。
……もうどっちが兄ちゃんか、わかんないよな。
ほら、オレって剣しか取り柄ないしさ。
いやいやいや、そういうことじゃなくて。
……とにかく、明日は、北区のキルフィエ街にある、もう一つの孤児院でバザーを開催する予定で。
殿下は、子どもたちのバザー用販売品の材料にと、小さめの木材をいくつも寄付した。
あと、加工するための道具も。
それを運び込んだときの子どもたちの顔が、ものすごく可愛かったっけ。
無邪気な顔で、オレたちに抱きついてきて。
オレも殿下もケインもぐちゃぐちゃにされて。
他の警護の者たちも、子どもたちに囲まれて、なんか嬉しそうだった。
……ケインが、黙ったまんま、一生懸命子どもを高い高いしてるの、すごく笑えたし。
殿下たちのここ最近の急激な成長ぶりは、陛下も宰相もいたく喜んでるらしい。
そのせいなのか、今度のバザーは最初から最後まで現場にとどまって手伝うよう言われている。
警護であるオレの存在に甘えすぎるなと、殿下たちも短剣一振りを腰に差して気を引き締めるようにとのお言葉だ。
もちろんオレは、いつもどおり長剣だけど。
だって護衛だもの。
ま、とにかく、剣の腕ならオレはまだまだ負けてない。
騎士だからね、オレはそれでいいんだ。うん、そう、絶対。
よーし、明日はオレも張り切って手伝うぞ!
38
お気に入りに追加
1,355
あなたにおすすめの小説
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
【1/23取り下げ予定】あなたたちに捨てられた私はようやく幸せになれそうです
gacchi
恋愛
伯爵家の長女として生まれたアリアンヌは妹マーガレットが生まれたことで育児放棄され、伯父の公爵家の屋敷で暮らしていた。一緒に育った公爵令息リオネルと婚約の約束をしたが、父親にむりやり伯爵家に連れて帰られてしまう。しかも第二王子との婚約が決まったという。貴族令嬢として政略結婚を受け入れようと覚悟を決めるが、伯爵家にはアリアンヌの居場所はなく、婚約者の第二王子にもなぜか嫌われている。学園の二年目、婚約者や妹に虐げられながらも耐えていたが、ある日呼び出されて婚約破棄と伯爵家の籍から外されたことが告げられる。修道院に向かう前にリオ兄様にお別れするために公爵家を訪ねると…… 書籍化のため1/23に取り下げ予定です。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
自信家CEOは花嫁を略奪する
朝陽ゆりね
恋愛
「あなたとは、一夜限りの関係です」
そのはずだったのに、
そう言ったはずなのに――
私には婚約者がいて、あなたと交際することはできない。
それにあなたは特定の女とはつきあわないのでしょ?
だったら、なぜ?
お願いだからもうかまわないで――
松坂和眞は特定の相手とは交際しないと宣言し、言い寄る女と一時を愉しむ男だ。
だが、経営者としての手腕は世間に広く知られている。
璃桜はそんな和眞に憧れて入社したが、親からもらった自由な時間は3年だった。
そしてその期間が来てしまった。
半年後、親が決めた相手と結婚する。
退職する前日、和眞を誘惑する決意をし、成功するが――
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
好きな人の好きな人
ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。"
初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。
恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。
そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる