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やじうま

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「・・・私の幸せが貴方の幸せと同じ条件だったら?」
「は?」
「私も、貴方と一緒にいることで幸せになれるのなら、貴方はどうする?」
「それは・・・」

そこで言い淀んで黙り込んだ不甲斐ない叔父貴の姿に思わず「ちっ」と舌打ちして、それを横から窘められる。

「しーっ、音が大きいですよ、師匠。ここで見てるのバレたらどうするんですか」
「そうよ、ここは黙って見てないと」

洗濯竿の向こう側、木と茂みの陰に隠れて、俺たちはレーナの決死のプロポーズ大作戦を見守っている。

「・・・でも、これ、いけるんじゃないかな」
「そうですね。私もそのような気がしてきました」

否が応でも観客側の期待は高まっていく。

「あっ、見て。カーマインさんが跪いたわ」
「なに? いくか? とうとういくか?」
「とうとうレーナさんの悲願が叶う日が・・・」

サーヤなどは、祈りを捧げるかのように顔の前で両手を組んでいる。

もういい加減、腹を括れよ、叔父貴。
あんないい女にそこまでさせて。

「私が貴女を幸せに出来るという事でしたら、それは望外の喜びです」

そんな事、分かってなかったのはあんただけなんだから。
ほら、いけ。

横の野次馬たちも俺と同じ気持ちだったらしく、小声で「いけ」だの「ガンバレ」だのとぶつぶつ呟いている。

「・・・レーナ、どうか私と結婚してくださいませんか」

「やった」と誰かが囁くのが聞こえた。

ホントだ、やっとだよ。
見てみろ。レーナがあんなに嬉しそうにしてるじゃないか。

「はい」

輝くような笑顔でレーナが頷くと、吸い寄せられるように叔父貴がレーナを抱き寄せた。

「・・・やっと言ってくれたのね、カーマイン。もう一生、聞かせてもらえないんじゃないかって思ってたわ」
「申し訳ありません」
「いいの。でも、これからは、ちゃんと貴方の気持ちを聞かせてね。恥ずかしいとか、おこがましいとかって言い訳はナシよ?」
「・・・頑張ります」
「うん、頑張って」

・・・これ以上は聞いてらんねぇ。

皆もそう思ったらしく、こそこそと茂みから一人ずつ抜け出していった。

「あの二人って、最初からラブラブでしたよね。それが何であんなに時間かかるかなぁ」

呆れたようなクルテルの声に、俺たちも賛同するしかない。

「あの年で初恋だったからだろ。遅すぎるってののも問題だよな」
「そういう意味では僕たちは安心ですね。まあ、告白するチャンスもありませんでしたが」

しれっと言ってのけるクルテルに、隣のサイラスは苦笑のみで答える。

「まあ、でも、良かったですよね。ちゃんとプロポーズできて」
「ですね。これで心おきなく結婚式の準備に取りかかれます」
「式でお出しする料理などは、このランドルフにお任せください。とっておきのメニューを・・・。む? どなたか玄関に来てらっしゃいませんか?」

人の声がしたようで、ランドルフが耳をそばだてる。

まさか王宮関係の人間じゃないだろうな、と、庭からぐるりと回って玄関の方を覗いてみると、フィルとマリー、そして体格のいい男性が立っていた。

「なんだ、お前らか」
「あ! 魔法使いの兄ちゃんたち」

アユールたちの顔を見て、庭の方へと駆け出したフィルたちを、後ろに立っていた男性が「こら」と慌てて止める。

「すみません、躾がなってなくて」
「いや、元気なのはいいことですよ。ええと、そちらはもしかして細工師の・・・」
「はい、こいつらが大変お世話になりました。細工師をしておりますアレクフィードと申します」

帽子を取って、ぺこりと頭を下げる。

あまり変わらない表情に、意志の強そうな眼。
頑固そうな職人気質のおじさんを想像していたのだが、見た目は至って真面目そうに見えるだけの男性だった。

「アレクフィードさん、この間は素敵な贈り物をありがとうございました」

サーヤがぺこりと頭を下げて挨拶すると、少しだけ口角が上がる。

「いえ、息子たちが助けてもらったそうで。お礼を言わなきゃならないのはこっちですよ。それにこの間は美味しいお土産まで貰っちゃって」
「あ、あのお菓子、奥さんは食べられました?」

思い入れがあるためか、クルテルが心配そうに聞いてきた。

「ええ、喜んで食べました。ここのところずっと食欲がなかったから、私もびっくりで。本当にありがとうございました」
「いえ、よかったです」
「・・・ああ、それで」

話しながら、がさごそとポケットから何かを取り出した。
カーマインが前回、フィルに渡した魔道具だ。

「これの修理が出来るか、という話だったと思いますが、修理は可能です。それで、もし引き受けるとしたら、いくらぐらいで任せてもらえるのかを聞きにきたんです」
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