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必要とする理由

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「それは・・・」


言葉を発しようとして、だが直ぐに、カサンドロスが予め何の根拠もないと前置きしていたのを思い出し、カルセイランは口を噤んだ。


「いえ、恐らくはアイツならば私と似たような結論に達するのではないかと思っただけです」


だがカサンドロスは、カルセイランが言わんとした事を察したようだ。

軽く右手を上げて言葉を続けた。


「王太子殿下は、特使を派遣してまで術師の助力を請われた。それは、貴方のお目的の為に、あの女の術を跳ね返しつつ貴方のために動ける人物が必要だったからです。・・・ここにいる我々以外にも動ける人物が」


カルセイランは目を瞠った。


「ですが術を跳ね返すだけならば、私のように魔道具を調達すれば済むこと。・・・まあ、国中に術が行き渡った状態ではありますが、私という商人が貴方の側についている以上、それは無理な話ではありますまい」


でしょう? と首を傾ける。


「となれば、敢えて術師を求める理由は解呪だけではない、と考えるのが自然です。恐らくは術を扱い、何かをする事をお望みではないか、と。その場合、一度や二度、来国するだけでは足りない恐れがあります。ひと月以上の長期滞在ともなると、国属の術師としては自由が利かない」
「・・・その時の事を考えて、もう一人連れてくる可能性がある、と。成程、そう考えた訳だな」


感心したようにジークヴァインが呟いた。


「あくまでも仮定の話ですがね。私ならばそうするというだけのこと。王太子殿下のお考えは別にお有りかもしれませんので,余計な口出しだとは思いますが」


そう言ってカサンドロスは不敵に笑った。

ずっと耳を傾けていたカルセイランは、顎に手を当てると興味深げに微笑んだ。


「・・・いや、概ね間違ってはいない。むしろアルパクシャドがその様に考えて動いてくれるなら大いに助かる。まあ、とにかく魔法陣を作動させて貰おう。話はそれからだ」


カルセイランはジークヴァインに向かって頷いてみせた。

ジークヴァインはそれに応えて、手に持っていた魔法陣が描かれた紙を床に置き、予め伝えられていた通り、そこにある文字を書き入れていく。


すると、紙の上の魔法陣がにわかに青緑色の光をおび、じわじわと周囲に光が溢れ出した。


初めて見る光景に、誰かがごくりと唾を飲む音がする。


その場にいた四人全てが黙って見守る中、その輝きはいよいよ増していき、部屋全体を 覆い尽くした。


そして眩い光の中、おぼろげな人影がふたつ、魔法陣の中央に現れたのだった。
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