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エピローグ あなたと結ぶ生涯の恋愛結婚
しおりを挟む戻ってきてほしいと言われても、世間的にシャルロッテ・マンスフィールド公爵夫人は死んだ事になっているのでは?
後で冷静になってそう考えたシャルロッテだが、トーベアナの家に一緒に戻って来たオスカーは、「いや」と涼しい顔で答えた。
「え、どうしてです?」
「アラマキフィリスの特効薬が、カイラン王国でも発表されたのは知ってるか?」
「ああ、はい。確か、3か月前ですよね」
ミルルペンテのレシピにある薬草が、カイラン王国のどれに相当するのかの照合が終わり、そのうちの幾つかが国内にないものと分かった。
近隣諸国と連絡を取り、薬草の手配をして残り1種類まで揃えたものの、その最後の1つが問題だった。
ミルルペンテのいた島近辺でしか採取されない特殊な薬草だったのだ。
ミルルペンテ、およびイグナートの協力で、島の長との話し合いが行われ、交易を開始する事になり。
こうして安定した薬の提供が可能になって、ようやく3か月前に薬が発表された。
「シャルロッテは、その薬で無事に回復した事にする」
「へ?」
「君の罹患した時期が1年前だと、皆は思っているからな。誰も疑問に思うまい」
「あ・・・」
「社交界に復帰するのにちょうどいい時期だと思う。だから・・・戻ってきてくれないか」
「で、では、私は死んだ事には・・・?」
「なっていない。もちろん俺と離縁もしていない。君は今もマンスフィールド公爵夫人で、ずっと闘病中で、最近開発された薬で回復した事になる・・・だからどうか、戻ってきてほしい。もう半年限定とかそういうのはなしで、この先もずっと俺の側にいてほしいんだ」
切実な目で、オスカーはシャルロッテを見つめる。
ケイヒル家の家族たちから邪魔をされ、なかなかシャルロッテに会えずにいたオスカーは、だいぶ堪えているようだ。
縋るような、そう、まるで捨てられたペロ(こちらで言う犬のような動物)のような目で見つめられれば、オスカー大好き人間であるシャルロッテに「はい」以外の返事はない。
―――垂れ下がった耳が見える気がするわ。か、可愛い・・・
なんて心中で悶えていたシャルロッテだが、オスカーをペロと思ったのは全くの勘違いだったとすぐに気づく。
「よし。帰ったら初夜だ」
「へ? しょ、や?」
「ああ、俺もシャルロッテが好きだし、君は健康な体になった事だし・・・何の問題もないだろう?」
そう言ってにやりと笑ったオスカーは、まるでロボ(こちらで言う狼のような動物)のようだった。
シャルロッテ・マンスフィールド公爵夫人がアラマキフィリスに罹ったという知らせがカイラン王国の社交界を騒がせてから約1年と少し。
回復したマンスフィールド公爵夫人が、麗しのマンスフィールド公爵に伴われ、王家主催の夜会に登場して注目を集めるのは、トーベアナ王国でこんな遣り取りをしたひと月ほど後のこと。
ついでに言うと、シャルロッテ・マンスフィールド公爵夫人のお腹に新しい命が宿るのは、それからさらに半年ほど経ってからの話である。
【完】
これにて完結です。
最終話までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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