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脳内に祝福の鐘が鳴り響く
しおりを挟むオスカーと契約結婚をして26日目。
今朝もまた、シャルロッテは足取り軽くダイニングへと向かう。
もはやお互いに習慣として馴染みつつある「おはよう」の挨拶と、最近少し弾むようになった食事中の会話。
オスカーはティトリー(人参に似た野菜)が苦手というちょっと可愛らしい弱点がある事も知った。
けれどこの日は、そんないつもとは違う始まりだった。
挨拶をして、席について。
食事を初めて少ししたら、オスカーがシャルロッテに質問をしたのだ。
「明日の予定は何かあるか?」
「予定、ですか?」
シャルロッテはきょとんと聞き返した。
オスカーは気まずそうに視線を逸らす。
「・・・結婚式の予定を無理にねじ込んだしわ寄せで、ずっと執務に追われていた」
「はい、ずっとお忙しそうにされてましたね」
「結果、君を妻に迎えたのに、放ったらかしになってしまった」
「え?」
「明日の午後だけだが、予定を空けられた。だから、君の予定はどうなっているかと」
シャルロッテは目をぱちぱちと瞬かせた。
「それはつまり・・・明日の午後は、私と一緒に過ごしてくださるという事ですか?」
「・・・君さえよければ」
「・・・っ」
―――これはもしや、いえ、もしかしなくても、私とデートしてくれるつもりなのでは・・・っ?
リーンゴーン、リーンゴーン、リーンゴーン・・・ゴーン・・・ゴーン・・・
シャルロッテの頭の中で、祝福の鐘が鳴り響いた。
放ったらかしとオスカーは言うが、これまで朝は約束通り、食事は全てシャルロッテと共にしてくれた。
他は確かに少なく、夕食は3回で昼食は1回きりだが、予め言われていた為、シャルロッテは全く気にしていなかった。
それに、オスカーは知らないだろうが、同じ屋敷に住んでいると思いもよらない時にオスカーの姿を見かける時がある。
窓越しとか、後ろ姿でとか、馬車を乗り降りするところとか、本当にただ遠目に見かけるだけ。でもシャルロッテはそれをご褒美タイムと称し、喜んでいたのだ。
だから、別にそんな気遣いなどする必要は・・・
―――と断るなんて、オスカー大好きなシャルロッテが、勿体ない事をする訳がない。
シャルロッテは、食事中という事も忘れて立ち上がった。
「ありがとうございますっ! すごくすごく嬉しいです!」
「あ、ああ」
若干引き気味でオスカーが頷くと、ハッと我に帰ったシャルロッテが慌てて椅子に座った。
「えと、すみません。嬉しすぎて我を忘れました」
「・・・そうか」
その後、食事を再開したものの、なぜかいつもよりも会話はぎこちなく。
「何がしたいか考えておいてくれ。君の希望に合わせる」
先に食べ終わったオスカーは、そう言うと席を立って足早に部屋を出て行った。
いつもはもう少しゆっくり食べるのに、明日の予定を空ける為に忙しくされてるのね、などとちょっとズレた事を考えながら、シャルロッテは幸せな気分でパンケーキの最後の一切れを口の中に入れたのだった。
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