【完結】お前さえいなければ

冬馬亮

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エピローグ

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 カールハインツエッカルトに関する記憶は、人々の中から消えた。

 カーライルとシンシアの間に生まれたのは双子ではなく、最初から男の子ひとり。そう、カークライトひとりだけで、前日の騒動も、カーライルが酒瓶を振り回しながらカークライトを追いかけた事になっていた。

 今となっては、カールハインツエッカルトの存在を覚えているのはカーライルだけだ。


 そのカーライルは、ずっと地下牢に繋がれたまま、ひとりブツブツと怨嗟の声を上げ続けている。


 ―――お前さえいなければ、俺が跡取りだった。


 ―――お前さえいなければ、彼女は俺を見てくれた。


 ―――お前さえ、そうだ、お前さえいなければ。




 カーライルは、最後まで前を向けなかった。



 その後、カーライルは生涯を終えるまで地下牢に留められる事になった。突発的に酷く暴れるからだ。


 対外的には病で伏せっている事になっているカーライルが公的に病死・・するのは、これより15年も後となった。


 カークライトが22歳。

 祖父から公爵位を継いで一年が経つ頃だった。






 [完]











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