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永遠の今日の始まり
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今日も何でもない日のはずだった。
いつもと同じ、何気ない日常のはずだった。
自分にこんなことが、起こるなんて思いもしなくて。
「なんでだ・・・?」
朝、滞在先のホテルの部屋で、いつもの時間に目覚めた俺は、新聞を見て、思わず絶望の声をあげた。
これはもう、勘違いでも夢でもない。
紛れもない現実だ。
認めよう。
俺は・・・今日という日を、ループし続けている。
事の起こりは3日前。
・・・今となっては懐かしい、ループが始まる前の最後の普通の日。
俺はいつものように起床して、いつものように仕事に行こうとした。
すると上司から電話がかかってきて、取材を言いつけられて。
やって来たのは、地方のとある海辺近くにある、のんびりした漁師町。
第一印象は、ずばり『ど田舎』。
上空をカモメが飛ぶのは許せるが、鳶が飛ぶのはなんとなく許せない。
そんなことを思う俺は、心が狭いといわれても仕方がない。
だけど無理して「おお、鳶が飛んでる。カッコいいですねぇ」なんておべっかは使いたくない。
いや、能力的には言えるけど、気持ち的に言いたくないし。
付き合いづらい奴だって?
その通り、俺はそういう奴だ。
自慢じゃないが、友人なんて一人もいない。
知り合いなら、五万といるけど。
こんな性格だから、彼女が出来てもすぐ別れてたしね。
いや、そもそも深い付き合いなんて面倒だしな。
だって体の欲求が満たされれば、それでいいじゃん。
浅い付き合い、浅いつながり、それが一番。
限りなく薄っぺらく、それがモットー。
まぁ、きっと俺は一生こんな感じで過ごすんだろうな。
そう思ってた。
確保したホテルで、なかなか美味い海鮮料理を食いながら。
ただぼんやりと、そんな下らない考えを、さも良い事のように。
誰のことも気にかけない。
人は必要なときだけ使うもの。利用するもの。
利用はするけど、されたくない。
浅く適当な人生。
それで満足してた。
翌日は本格的な取材だ。
昨日は移動だけで終わっちゃったから、今日はバリバリこなさないと。
あちこち回って、写真撮って、色々書き留めて。
まぁ、こういうのって、なんかイイ感じのことつらつら~っと書いときゃ、そこそこ行けちゃうんだよ。
適当に回ってそれなりの情報が集まったら、後はのんびり過ごす。
夜、寝る前ちょちょっと原稿を書き上げて。
さぁ、仕事終了、と温泉入って酒をひっかけて、気持ち良く寝たわけだ。
なのに、朝、目が覚めたら、書き上げた原稿が何故か見当たらない。
撮った写真データも全て消えていた。
一瞬、泥棒でも入ったのかと思ったけど、財布もカードも無事だったし。
部屋も荒らされてはいない。
不思議がりながらドアの下に差し込まれてた新聞を広げると・・・。
日付が昨日。
取材で回った筈の昨日の日付けの新聞で。
当たり前だけど、中身も昨日呼んだのと同じ。
頭にきてフロントに電話して新しいのを持って来いって怒鳴りつけた。
・・・新しいのって言ったのに。
俺の持ってる新聞と、ホテルマンが持ってきた新聞は同じ日付のもので。
いや、これ昨日のだろって言ったら、何言ってるのこの人、って顔されて。
ブチ切れて怒鳴りつけたら、マネージャーがやって来た。
「お客さま、本日の新聞を、とのことでしたが、こちらの新聞で何か問題でも?」
と慇懃に聞かれて。
「いや、これ昨日のだし」
そう言ったら、マネージャーまで、こいつアホか、って顔しやがって。
思わずぎっと睨みつけたら、慌てて咳払いして、こちらは間違いなく本日の新聞でございます、と返してきた。
「はぁ? なに二人してとぼけたこと言ってんの。ほら、よく見ろよ。今日は・・・」
そう言って携帯を出して日付を表示してみせた・・・ら。
「はい、そうでございます。こちらの新聞の日付もご覧くださいませ。・・・同じでございましょう?」
俺はもう、次の言葉が何も言えず、呆然としてるうちにドアがバタンと閉じられた。
「なんで・・・?」
俺は新聞を見つめながら、小さな声で呟いた。
「嘘だろ。なんで新聞の日付が昨日のまんまなんだよ?」
そうして永遠の今日が始まったのだ。
いつもと同じ、何気ない日常のはずだった。
自分にこんなことが、起こるなんて思いもしなくて。
「なんでだ・・・?」
朝、滞在先のホテルの部屋で、いつもの時間に目覚めた俺は、新聞を見て、思わず絶望の声をあげた。
これはもう、勘違いでも夢でもない。
紛れもない現実だ。
認めよう。
俺は・・・今日という日を、ループし続けている。
事の起こりは3日前。
・・・今となっては懐かしい、ループが始まる前の最後の普通の日。
俺はいつものように起床して、いつものように仕事に行こうとした。
すると上司から電話がかかってきて、取材を言いつけられて。
やって来たのは、地方のとある海辺近くにある、のんびりした漁師町。
第一印象は、ずばり『ど田舎』。
上空をカモメが飛ぶのは許せるが、鳶が飛ぶのはなんとなく許せない。
そんなことを思う俺は、心が狭いといわれても仕方がない。
だけど無理して「おお、鳶が飛んでる。カッコいいですねぇ」なんておべっかは使いたくない。
いや、能力的には言えるけど、気持ち的に言いたくないし。
付き合いづらい奴だって?
その通り、俺はそういう奴だ。
自慢じゃないが、友人なんて一人もいない。
知り合いなら、五万といるけど。
こんな性格だから、彼女が出来てもすぐ別れてたしね。
いや、そもそも深い付き合いなんて面倒だしな。
だって体の欲求が満たされれば、それでいいじゃん。
浅い付き合い、浅いつながり、それが一番。
限りなく薄っぺらく、それがモットー。
まぁ、きっと俺は一生こんな感じで過ごすんだろうな。
そう思ってた。
確保したホテルで、なかなか美味い海鮮料理を食いながら。
ただぼんやりと、そんな下らない考えを、さも良い事のように。
誰のことも気にかけない。
人は必要なときだけ使うもの。利用するもの。
利用はするけど、されたくない。
浅く適当な人生。
それで満足してた。
翌日は本格的な取材だ。
昨日は移動だけで終わっちゃったから、今日はバリバリこなさないと。
あちこち回って、写真撮って、色々書き留めて。
まぁ、こういうのって、なんかイイ感じのことつらつら~っと書いときゃ、そこそこ行けちゃうんだよ。
適当に回ってそれなりの情報が集まったら、後はのんびり過ごす。
夜、寝る前ちょちょっと原稿を書き上げて。
さぁ、仕事終了、と温泉入って酒をひっかけて、気持ち良く寝たわけだ。
なのに、朝、目が覚めたら、書き上げた原稿が何故か見当たらない。
撮った写真データも全て消えていた。
一瞬、泥棒でも入ったのかと思ったけど、財布もカードも無事だったし。
部屋も荒らされてはいない。
不思議がりながらドアの下に差し込まれてた新聞を広げると・・・。
日付が昨日。
取材で回った筈の昨日の日付けの新聞で。
当たり前だけど、中身も昨日呼んだのと同じ。
頭にきてフロントに電話して新しいのを持って来いって怒鳴りつけた。
・・・新しいのって言ったのに。
俺の持ってる新聞と、ホテルマンが持ってきた新聞は同じ日付のもので。
いや、これ昨日のだろって言ったら、何言ってるのこの人、って顔されて。
ブチ切れて怒鳴りつけたら、マネージャーがやって来た。
「お客さま、本日の新聞を、とのことでしたが、こちらの新聞で何か問題でも?」
と慇懃に聞かれて。
「いや、これ昨日のだし」
そう言ったら、マネージャーまで、こいつアホか、って顔しやがって。
思わずぎっと睨みつけたら、慌てて咳払いして、こちらは間違いなく本日の新聞でございます、と返してきた。
「はぁ? なに二人してとぼけたこと言ってんの。ほら、よく見ろよ。今日は・・・」
そう言って携帯を出して日付を表示してみせた・・・ら。
「はい、そうでございます。こちらの新聞の日付もご覧くださいませ。・・・同じでございましょう?」
俺はもう、次の言葉が何も言えず、呆然としてるうちにドアがバタンと閉じられた。
「なんで・・・?」
俺は新聞を見つめながら、小さな声で呟いた。
「嘘だろ。なんで新聞の日付が昨日のまんまなんだよ?」
そうして永遠の今日が始まったのだ。
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