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いつもと同じで、でも今までとは違って
しおりを挟むアデラインの側にいられて幸せだと告げて、それから大好きだと続けた。
多分、僕の「好き」という言葉は、これまでもそんなに珍しくはなかっただろう。
口にする度に、アデラインはいつも照れて恥ずかしそうに微笑んでくれたから、僕はそれを想いが伝わったのだと勘違いしていたけど。
想いに関して言えば、「伝わる」のと「通じる」のと「叶う」のは微妙に、だけど決定的に違うと思う。
きっと、今日初めて。
それこそ、これでやっと。
僕の想いがアデルに「伝わった」気がするんだ。
この先、それが成長するかどうかは、きっと僕の頑張り次第。
可愛らしく呆けているアデラインをぎゅっと抱きしめる。朝じゃないけど。
それから頬にキスを落とした。夜じゃないけど。
はっきりきっぱり断られたら、どうしても嫌だと言われたら、諦めるけど、そうするしかないけど。
それまでは全力で君を口説かせて。
君が許してくれるのなら、僕は君の隣にずっといたいから。
「ありがとうね、アデライン」
「え?」
「僕を、君のお婿さんの候補にしてくれて、ありがとう」
取り敢えず、今、隣にいることを僕に許してくれてありがとう。
「・・・わたくしこそ」
「うん?」
「わたくしこそありがとう、セス。・・・いつも側にいてくれて」
「うん」
なんとなく気持ちが通じ合ったような、そんなむず痒い瞬間。
こんな時にいつも見せてくれるアデラインのはにかんだ笑顔が、なんとなくだけどいつもよりも可愛い気がして。
ああ、アデラインを笑顔に出来た、そう思ったら嬉しくて。
でもまだ自惚れちゃいけない。
そう自戒して、でも一歩は確実に前進したと思えた時。
嫌なことは突然にやって来る。
アデラインの自尊心を打ち砕いた元凶である義父が夕食後、突然に僕を呼び出した。
しかも僕だけ。
僕がこの屋敷に来てからの5年半に限って言えば、実子のアデラインよりも僕の方が侯爵に会う頻度は高い。
ショーンみたいに、アデラインへの伝言板代わりに使われる事もある。
「視察、ですか」
侯爵は頷いた。
「領地で代行が行なっている管理業務を実際に見るのも勉強だ」
「では、義父上と僕と義姉の三人で向かうのですね?」
気が重い旅程になりそう、そう思った時だった。
「・・・いや、私とお前の二人だ」
え?
「あの、アデラインは」
「あれは屋敷の留守を任せる。日程は五日間程だ。準備をしておくように」
侯爵とアデルの関係が良好だったら大して気にならない話かもしれない。
顔を合わせる方が余計に気まずい思いをするのかもしれない。けど。
最初から連れて行かないのは。
「あの、義父上」
「話は以上だ」
「ですが・・・」
「仕事の邪魔だ。早く行きなさい」
侯爵の声色は、有無を言わせない冷たいものだった。
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