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汚れた大地に芽吹く新緑

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 集中できる場所で入眠しないと、ヘルディは能力を使えない。
 と上には報告してあるが、実際には違う。
 気絶も睡眠も、意識を失うという点では同じ事だ。
 そして、久しぶりにアリアの夢に入ったヘルディは、ざらりと足許から帰ってくる乾いた感触と、荒涼とした景色に額を押さえた。

 ―――酷いな。

 果てのない大自然は見る影もなかった。
 森林は枯れ、太陽は陰り、草原は砂漠に変わっている。風は身を刺すように強く、空気は乾燥して肌が痛い。
 これはひどい。かつてヘルディが渇望した綺麗さがさっぱり失われている。
 最初に彼女の夢に入ってこれを見せられていたら、ヘルディはアリアに何の興味も示さなかっただろう。
 だけど不思議なことに、今のヘルディに、アリアを見捨てようという考えは露ほども浮かばなかった。

「……なんでだろうね」

 自分の心の成り立ちみたいなものに、自分で首を傾げるヘルディだったが、そのとき少し先の空間が揺らいだ。
 ようやく、この夢の主がやってくる。

    ◇

 ―――汚い。

 久しぶりの、本当に久しぶりに夢の世界に訪れたアリアが思ったのは、それだった。
 何が、ではない。何もかもが、汚い。
 纏わりつく砂が、淀んだような空気が、濁った湖が、腐った木々が、全て汚い。
 そしてなによりも、夢の世界でも傷だらけ、汗だらけ、愛液だらけの自分が汚い。

「……う、ぅあ」

 ふらり、と重心が揺れる。殴られ鞭打たれた体が、芯から崩れる。
 しかし、アリアの体が汚れた地面に触れることはなかった。

「おっと」

 懐かしい声がして、抱き留められる。瘦身のくせにたくましさを感じさせる腕がアリアの体に添えられて、優しく横抱きにされる。
 ヘルディは苦笑した。

「ずいぶん頑張っちゃったみたいだね」
「離して、くだ、さい」
「そしたら倒れるだろう。とにかく君は休むべきだ。君のためにも、君が守りたい誇りと同胞のためにも」
「…………もう、いいです」

 最初は、アリアもそのつもりだった。ヘルディに責められているうちはなんとかして抵抗してやろうとそれだけを考えていた。
 だけど、ナスチャの責めを受けて、ヘルディが手加減をしていたことを身をもって知って、芯ごと食い破られてしまった。
 両手で顔を覆い、アリアは喉を震わせる。

「心は、屈したくないと、思っていました。ミクファや、同胞のためにも……、辱めを受けても、耐えなければ、と」
「うん」
「でも、今の私の姿を、見て……。果たして皆は、私を、……誇り高きエルフの同胞と、認めて、くれるのでしょうか……」

 ヘルディは無言でアリアを抱きしめる。
 幼子にするように背をさすられて、はじき出される様にするすると弱音と、嗚咽が零れる。

「何度も果てさせられて……。漏らす姿も、淫語を喚き散らして泣き叫ぶ姿も、自慰をする姿も、晒して……、わたし、はっ! もう……そんな、汚い女に……っ」
「そんなことはない、君は綺麗だ」
「適当ばかり言わないでください!」

 涙でくしゃくしゃになった顔で、相変わらず笑ったままのヘルディを睨む。

「へらへらと本音は言わずに、敵か味方も言わず目的も黙ったまま! いちいち裏を探らされる私の気持ちを考えたことがありますか!? ないでしょう、そうやって、あなたは何度も、何度も……っ!」
「…………」

 ヘルディが初めて笑みを消す。
 都合が悪くなったらだんまりか。
 頬を引きつらせて、ヘルディの表情が映ったように笑った。
 心の抑えみたいなものはとうに壊れていた。

「いえでも、わかりましたよ。もう……。あなたは嘘つきです。今までのも全部。だって、今の私が、綺麗なわけがない。……そういう嘘を、つく人です」
「違う」
「違いません。離してください。……もういいです。夢も、もう嫌です。早く私を石牢に戻してください。あんまり密着するとあなたまで汚れますよ」

 ぐいぐいと、硬い体躯を押して拒絶するアリアだったが、ヘルディの体は離れない。
 それどころか、より一層強く抱きしめられて、頬に手まで添えられる。
 すう、とヘルディの声が鼓膜を揺らした。

「魔法は使えるようにしてある。嫌なら首でも刎ねるといい」

 そう言われて、ちう、と頬に温かな感触。
 じわじわと、触れた部分から熱が広がっていって、アリアは目を見開いた。

「な、にを……っ」
「黙って」

 真正面に、汗ばんで色気を放つ端整な顔。
 本当に初めて見るかもしれない真顔が、視界一杯に広がる。忌子の象徴とされる黒曜石の瞳の奥で燃える情欲に、真っ直ぐに射抜かれる。
 欲。
 私に? 
 こんな、一束いくらの娼婦以下に成り下がった、汚れた女に?

「嘘……」
「黙ってって言っただろ」

 苛立った声も、初めて聞く。
 荒々しく唇を塞がされて、それきり何も言えなくなった。

    ◇

 アリアの言う通り、今までだったら汚いと思っていただろう。触手に犯させてさっさと夢から出ていたと思う。
 だけど、愛液に濡れた顔を見ても、汗と傷だらけの体を見ても、嫌悪感は一切湧かなかった。むしろその姿から目が離せなかった。
 本当に、不思議でしょうがない。
 被虐の色香を纏うアリアを綺麗だと思ったことも、自らを汚いものとして扱う彼女に苛立ったことも。

「綺麗だよ、アリア」
「嘘、ばかり……ん、むぅ、……んううっ」

 舌を吸い上げて、口蓋の奥まで舐めあげる。唇の端を舐めてやると、唾液と愛液の混じった甘酸っぱい味がする。首筋にかかるアリアの吐息は、熱く濡れていた。
 腕は抵抗するようにパタパタと動いているが、魔法による反撃は、ない。
 胸、腹、叢に守られた秘丘と、女肉の弾力を楽しみながら指を撫で下ろしていき、そっと秘裂を触る。

「もっと、見せて」
「…………ひ、あっ」

 自分でも驚くぐらい湿った声が出て、ヘルディはくすくすと笑う。
 アリアが再び目を鋭くした。

「……そんなに私が、滑稽ですか」
「ああ、違う違う。どうしてこんなに興奮するんだろうなって。こんな気持ちになるのはアリアが初めてだ」
「な、なにを……ひゃあ、ああっ!」
「その声、その顔……」
「あ、ああっ! そこ、何度も、された、らっ」

 くにくにと陰核を弄んでやると、面白いように体が跳ねる。
 すぐに果てないように陰唇も触ってやっているが、それでも度重なる調教で開花させた体は官能を貪って震え出す。汗と愛液がとめどなく溢れ、アリアの匂いが鼻腔に広がる。

「良い顔だね。やっぱり君は、汚れてなんかいない」
「ああっ、う、そっ、あああっ! ふあ、あああっ!」

 手にまとわりつく熱い愛液の感触も、腕の中にある柔らかな体も、ヘルディが焦がれていた清涼な夢に劣らず綺麗だと思える。
 くい、と陰核の皮を剥いて、二本の指で挟むように扱く。太腿を閉じて悶えるアリアに、キスを落とした。

「果てて良いよ」
「ああ、ああああっ! イく、イくぅ! ああああああああああっ!」

 ぎゅうう、とヘルディの手を挟んで締められた太腿に、愛液の線が幾本も伝う。くびれた腹が波打って、ふるふると胸が震える。
 ぴくぴくと頂点で震える二つの蕾に手を伸ばしたくなるのを抑えて、ヘルディは聞いた。

「これでもまだ、僕が君に嫌悪を抱いていると、思うかい?」
「………………」
「ああそう」
「あん……っ、待って! 今はまだ、くぅぅあああっ!」
「無言は返事に含まないよ。まあ、もっと君の悶える姿を見たいだけかもしれないけど」

 肉壺に指を押し入れる。多少強引かと思ったが、アリアの秘所は驚くほどすんなりとヘルディを受け入れ、そして強く締めあげる。
 鉤状に指を曲げて擦ってやると、嬌声が漏れる。
 口では待てというものの、魔法による反撃は来ず、ヘルディの愛撫はさらに深くなっていく。
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