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焦らし責め

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 責めの趣向が変わっても、ヘルディの執拗さは変わらなかった。

「あああっ、イクっ、イクイクっ、イ……ぅぅううううううっ!」

 もう何度目かもわからない寸止め。取り上げられた絶頂の回数に比例するように愛液を垂らし、ベッドの下の床にまで淫乱な蜜を広げるアリアは、白い肌を薄く染めて体を跳ね上げさせていた。

「狂ってきたね。大丈夫? まだ初日だけど」

 初日、という言葉に、アリアの心がギシギシと軋む。
 朝から始まり三時間、陰核を中心に筆で撫でまわされ、熱い体を弄ばれた。
 さらに昼を挟んで午後も同様の責めを受け続けている。
 先ほどから脳の奥までもが、じんじんと熱い。

「この程度、なんでも、ありません」
「ふうん、ずいぶんと腰が動いているけど」
「ふぅ、……ぅぁっ、イ……っ、ふああっ」

 鼠蹊部を撫でて官能を高められ、焦れたところで秘壺を責められる。開ききった肉びらの中に振動刺激が伝わり、愛液が泡立てられて白く溢れる。
 そんな色責めがしばらく続いた後、唐突にヘルディは筆をひっこめた。
 懐から怪しげな液体の入った瓶を取り出し、その中に筆を突っ込む。

「はあっ、はあ……っ、……それは?」
「僕が生成できる媚薬を貯めたものだよ。依存性はないけど、効果は保証する」

 どろりと、蜂蜜のように重たい液体をたっぷりと筆に纏わせるのを見せられて、ぞくぞくと怖気が走る。
 いままで打たれてきて、何度も狂わされてきた、ヘルディの媚薬。
 アレが、全部そうなら……。

「怖いかい?」
「……馬鹿も、休み休み言いなさい」
「そうだよねぇ、君は気持ち良いだけだものねぇ。怖いわけがない。じゃあほら、存分に鳴くと良い」

 ふざけ切ったヘルディの口調に脳が沸騰しそうになるが、筆が肌に触れてすぐ、怒りは快楽に塗りつぶされた。
 翡翠色の飾り毛を弄られ、その上の臍に媚薬を塗られる。
 途端に塗られた部分が熱くなり、空気の流れすらも感じ取れるように敏感となって、アリアは肩で息をする。

「はあ……ふぅ、ん、う……っ」
「次は、どこかな」

 蛞蝓のように筆がゆっくりと移動する。内腿を撫で、陰唇にさわさわとした感触が走った。
 陰核か、膣内に突き入れられるか。
 そのどちらかだと思い、ぎゅっと目を瞑って耐えていたアリアは、べったりと媚薬の付いた筆が菊座に押し当てられ、狼狽して目を開いた。

「待って! そこは違っ……んううっ!」
「違くないだろう。喘いでるんだから」

 窄まりの襞を一本一本舐めるように丁寧に媚薬を塗られ、アリアは顔を振り乱した。排泄器官を見られ玩弄されていることも、それで快楽を得ている自分も信じられずに、うめき声をあげる。
 しかし、その声には確実に快楽を感じる女の響きが混じっていた。

「んうう、っぐぅ……ぅぅ、あっ」
「思ったよりも敏感で何より」
「あっ、あ、んう……っ、待って、待って、止まって、ぇ、うぅぅっ! あああっ」

 媚薬のせいか、元の素養か。
 尻穴責めだけで果てる寸前まで押し上げられ、アリアは涙に濡れた目でヘルディを見る。減らず口に反論する余裕もなく必死に首を横に振る。
 ヘルディはそれを見て、にたりと笑って、ナスチャの肛門に筆を押し入れた。
 大きく硬いものに後ろの穴を貫かれ、さらに内部の腸壁を繊毛で擦られて、すでに果てかけていたアリアはすぐさま狂い喘ぐ。

「あああああっ! あ、だめ、も、う……っ」
「M字に足を開いて、肛門で果てるといいよ」
「っく、うぅっ! はああっ、イクっ、イクイクっ! イ……っ、ぅぁ、ん……」

 もう、宣言は反射で行ってしまっていた。
 果てると良い、なんて言いながら寸前で筆を抜かれ、アリアはすべすべと張りのある双臀を震わせて切なげな息を漏らす。

「さて、後ろはこのぐらいでいいかな」
「……や、っと、終わりです、か」

 昂らされたままのアリアが息も絶え絶えに問うが、ヘルディは笑って首を振った。

「まさか、あと陰核と耳と胸があるよ。で、残った媚薬は全部膣の中に流し込むから」

 地獄のような予定に、さあ、と頭が冷たく重くなる。
 裂けたような笑みを浮かべて、ヘルディの顔が近づいた。

「さあ、頑張ってくれ。アリア」

 ねちゃ、と媚薬が陰核に塗られる。
 すぐに熱く燃える敏感な突起に、アリアはまたがくがくと痙攣した。

    ◇

 もう、何時間経ったのかもわからない。
 時間とか、状況とか、ヘルディの憎たらしい問いかけとか、そういうのに構う余裕はとっくになくなっていた。

「イク、イ……っ、あ、ぁぁ……。あ、まだ、今された、ら……っ、くぅぅううああああっ! う、ぅぅ、ん……っ」

 ヘルディが言った通りの責めを輝くような肢体に受け、汗と愛液と媚薬でてらてらと光るアリアは、しきりに膝を揺らし、がたがたと枷を鳴らす。

「気持ち良いかい?」

 筆責めが止み、ヘルディの笑顔。
 黒曜石のような瞳。光を吸収する深い黒髪。
 忌子は軽薄な顔で、アリアに問う。

「気持ち良かったと認めれば、一回だけは果てさせてあげる。さあ、どうだった?」

 ―――どうせ、選択権なんかないくせに。
 実質的に同胞を人質に取られているアリアは、顔を背けて、ぽそりと呟く。

「……気持ち、良かったですよ……」
「そう。よかった。それじゃ」
「ま、待って!」

 それきり牢から出ようとするヘルディに、アリアは慌てて声をかける。
 そして、失敗だったと気が付いた。
 笑みを深くして、ヘルディは粘つくように言う。

「どうしたんだい、アリア。心の内では、僕に触られるのは気持ち悪いと思っているんだろう? 一緒にいたくなかったんだろう? なぜ止める?」
「そ、それは……っ」

 まさかイかせてほしいなどとは言えずに、アリアは言いよどむ。
 その沈黙をヘルディは許さずに、かちかちと壁際のボタンを操作した。
 ベッドの側面から触手が出てきて、アリアの全身をすっぽり包む。

「ひっ、やめなさいっ! やめ、ああ……っ」

 全身を舐めるように刺激されるが、強さはない。
 もどかしい快感に震えるアリアに、ヘルディは言った。

「果てることはないよ。そういう仕様だ。たくさん感じると良い」
「ああ……っ、あ、あああ……、んうううっ」

 イかせてくださいとも言えず、反抗は喘ぎ声に潰される。
 焦れた体でただ悶えるだけになったアリアを置いて、ヘルディは牢を後にした。
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