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プロローグ

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 地下深くに閉ざされた石牢に、陽光は届かない。
 腰まで伸びた翡翠色の髪が太陽の下で輝くことも、おそらく二度とない。
 両手を高々と吊り上げられたアリア=サレストは、無言で目を閉じていた。

「………………」

 先ほどからずっと、人間が作った悪趣味な器具が裸の秘部を責め立てているが、まるで何も起きていないかのように振る舞う。

「やあ、こんにちは」

 何時間か、そうして放置された後だろうか。
 石牢に穏やかな低音が反響して、アリアは薄目を開けた。

「……あなた方のやり方は、どこまでも下劣ですね。恥を知りなさい」
「ひどいなあ。一緒くたに否定しないでくれよ」

 目の前にいるのは、黒目黒髪の男。
 隣接する人間の国には、金髪や茶髪が多いと聞く。

「忌子ですか」
「初対面でそれは、君もたいがい失礼じゃないかな。初めまして、ヘルディと言います」

 からから、と乾いた音が股間の下では響き続けている。
 大量の繊毛に包まれた車軸がアリアの秘部に刺激を与え続けている。
 薄い陰毛に包まれたそこをなぞって、男は首を傾げた。

「全然濡れないね。そういう体質なのかい?」
「……答える義理はありません」
「そう邪険にしないでくれよ」

 ヘルディと名乗った男は、四肢を戒められ動けないアリアの顎を持ち上げて薄く笑う。

「ハイエルフの調教なんて初めてだからね。色々と生の声も聴いてみたいんだよ」

 それから、優しい手つきでアリアの耳を撫でた。

「本当に尖ってるんだね。感度はどうかな」
「……っ、気安く、触らないでくれますか。気持ち悪い」
「へえ、やっぱり感覚通ってるんだ」

 くにくに、と曲げたり撫でたりしながらアリアの耳を触り、それからヘルディは背後に回る。
 そっとアリアの目を手で覆って、もう片方の指でゆるく乳房を持ち上げる。

「大きくはないけど、綺麗な形だね。先端も綺麗な桃色だ。男性経験ないんじゃない?」
「…………無駄口が、多いですね。会話がお好きなら娼館にでも、行ったらどう、です」
「いやだよ。性を売る女は美味しくない」

 耳元で囁かれる粘つく低音が、アリアの鼓膜を強く揺さぶる。
 ヘルディの責めは、悔しいが巧みだった。
 もっとも感じる先端の突起には触れず、その周りだけを執拗に撫でる。ときおり腋や背筋にも指を這わせて、アリアが反応を殺しきれないように誘導される。
 秘部では相変わらず、車軸が回っていた。

「……っ、…………」
「我慢強いね。種族差かな、でも」

 正面に回る。
 ぴったりと閉じたままの陰唇を指で開いてやると、鮮やかな桃色の肉襞は、しっとりと濡れていた。

「感じてくれているようで何よりだよ」
「……気持ち悪い、だけです」
「じゃあこの、濡れているのは何?」
「……生理現象で、勝ち誇ったような顔をしないでもらえますか」

 両腕を吊られて、ハイエルフの長い寿命を今後ずっと、人間の慰み者として過ごす可能性が頭をよぎりながらも、アリアは気丈に敵を睨む。

「あなたがた、人間と違って、私たちは……、欲に流され我を失うような、そんな弱い種族ではありません。……せいぜい、体だけ弄んで、楽しみなさい」

 翡翠色の眼光を正面から受け止めて、ヘルディはきょとんとする。

「ああ、そうか。自己紹介が中途半端だったね」

 くつくつと笑う口元を隠すように、手をかざす。
 その爪が急激に尖っていって、アリアは目を見開いた。

「……あなたは?」
「淫魔族だよ。インキュバス、って言った方がなじみ深いかな?」

 悪寒が走る。
 一瞬、本当に一瞬だけ狼狽の表情を見せたアリアに笑みを返して、ヘルディは再び手を伸ばした。

「さあ、続きを始めようか」

    ◇

 ―――この女は、美味しそうだ。
 指に合わせて吸い付くように形を変える乳肉を楽しむように揉みしだき、すりすりと乳輪を撫でる。
 あくまでも頂点には触れず、焦らすように。
 最も快楽を感じる先端を外す動きをしばらく続けてから、すう、と指を下げる。張りのあるわき腹を抜けて、太腿まで撫でおろしてから、ヘルディはアリアの臀部を軽く握った。

「全体的に華奢だね。種族の特徴かな。まあ、人間みたいにいたずらに異性を刺激しなくても、君らは長い人生で一人でも子を成せれば十分なんだものね」
「……それでも、あなたみたいな下郎は、寄ってきますがね」
「もし里に帰れたら全員の顔をぐちゃぐちゃにしてみるといい。きっと侵略も減るよ」

 ま、そんな未来はないだろうけど、とヘルディはアリアの全身を眺める。
 エルフの英雄、アリア=サレスト。
 エルフの中でもなお目立つ鮮やかな翡翠色の髪、冷たさと意志の強さを内包し輝く目、染み一つなく、石牢でもなお白さがわかる肌。小ぶりな胸は、柔らかいのに重力に逆らって上を向き、その下でくびれる腰との対比が美しい。

「……まあ、顔がなくても需要はありそうだね」
「……どこまでも、馬鹿にして」

 敏感な部分はあえて避け続け、すっ、すっ、と全身を愛撫し続けても、アリアは全く表情を変えない。
 回り続ける股間の車輪、その繊毛にうっすらと愛液が付着するようになっても微動だにしない。
 ああ、本当に。

「君は、美味しそうだね」

 責め立てるのは、明日からにしよう。
 今日はこの、最初の表情を焼きつけておこう。
 舌なめずりは品がないから控えるが、本当にそれぐらいの気持ちで、ヘルディはずっとアリアの体を撫で続けた。
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