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99日目―絶望(前編)―

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 梓から空虚な口付けを与えられ、蛍は曇りガラスを通したようなぼやけた視界を、前に向ける。
 自らも媚毒風呂に沈められ、数秒おきに果てている梓は、夥しい汗をかきながらも表情がなかった。ただ機械的にイき、作業のように蛍に触れるだけだった。
 不安定な少女も妖艶な女性の面影もなく、ただ無感情に舌を絡められて、なんだかとても、泣きそうになった。
「やめて、よ……」
 そんなんだったら、目一杯好き勝手やってくれた方が良かった。
 傍若無人でどこか純粋な、野茨梓に戻してほしかった。
 体を燃やしつくす暴力的な疼きとは別に、ろうそくのような暖かい火が心に灯って、ようやく蛍は自覚する。
―――ああ、私は……。
 自覚はするも、それはすこし遅すぎた。
 こつこつ、とヒールの音が聞こえてきて、蛍はもう壊れかけている心を必死で奮い立たせる。
「はあい、良く休めたかしら。蛍さん」
「あ、お姉ちゃん。あんまり頻繁に漏らさないでね。それ洗うの大変らしいから」
 耳障りな声が牢屋に響く。
 ずけずけと入ってきたアイリーンとあかりに目をやって、蛍は吐き捨てるように言った。
「…………くそ、った、れ」
「へえ、まだ反抗できるんだ。慣れちゃったのかしら」
 アイリーンはスケジュール帳を確認しながら、蛍に言う。
「一応様子は見に来たけど、その様子じゃ不測の事態はなさそうね。溺れてる様子もなくて何より。それじゃあ私たちは、帰るから」
「ま、てよ……っ! いい加減、出せよっ!」
「安心しろ」
 こつり、と足音がもう一つ。
 アイリーンから錠剤を受け取って、ベルトをいくつも巻いた歪なスーツのシルエットが牢の前に立つ。
 沙羅は、ピンク色の液体に沈められ、穴も股も開きながらも弱弱しく睨む蛍を見下ろした。
「すぐに出すさ。それから一緒に、楽しもうじゃないか」

■■■

 給水器は、本来の用途通り水が出るようになっていた。
 自らにかからないように慎重に媚毒を排水溝から捨てて、沙羅は給水器とホースをつなぐ。そしてピンク色の粘液にまみれて部屋の隅で喘いでいる蛍と梓に放水した。
 動物を相手にするかのような洗浄だったが、その水の勢いで、蛍はがくがくと体を震わせた。
「ああ……っぐ、ぅあっ! ああ……あっ」
「あまり揺れるな、狙いにくいだろうが」
「狙う、なあっ! あ、ああ⁉ あ、あああああああっ!」
 絞った水流を陰核に当てられて、蛍は一瞬で大きく腰をくねらせて絶頂寸前まで持ち上げられ、首輪が発動する。電圧を受けてうめき声をあげ、さらなる放水でまた喘ぐ。
 おおむね蛍を洗い終わったところで、沙羅は低い声を通した。
「梓。いつまでも呆けてないで、相手をしてやったらどうだ」
「…………はい、っぎぁ! …………ぁ」
 ぱっくりと膝を割り開いて呆けている梓の秘部に水を当てて、沙羅は声をかける。過去の習性からか、沙羅に対してだけは律儀に返事をして、梓は股を広げたまま蛍の秘部に手を伸ばした。
「あ、ぁぁ……、やめ、……ああっ!」
「あ、あ、………ぁ、あ……ふ、ぅ、っくぁ」
 濡れそぼった陰部を撫でられて燃え上がる蛍と、放水で快楽を与えられる梓。
 蛍の寸止めと梓の絶頂が10回ほど積みあがったのち、水を止めた沙羅はするするとスーツを脱ぎながら笑う。沙羅に肉薄するほど強い女と、天才の名を恣に傍若無人にふるまっていた女の成れの果てに、舌なめずりして歩み寄る。
 無様に這いつくばって淫汁を垂れ流し、尻を振って喘いでいる姿を見下ろして。
「モルモット、わかるな? 蛍を抱いておけ」
 張形を模したバンドを、自分の腰に取り付けた。
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