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86日目―燃えて留まる―
しおりを挟む「……あ、あああ、あん………」
あかりとアイリーンの姿は、昨夜から部屋にない。いるのは3人の奴隷と蛍だけ。
キングサイズのベッドに大の字に押さえつけられて、今日も蛍は焦らし責めを受けていた。
ぴちゃぴちゃと陰部を舐められて、鼻から甘い声が抜ける。
「あん、あんん……、んんぁ、あぁ、ぁ……」
聴かせたくない相手が不在のせいか、媚びるような音になってしまうのがもう止められない。
ほとんど一日中焦らされ続けて、イかされるのは正午に1度だけ。蛍の体はもう、限界を超えて昂っていた。
「く、……ぁぁ! も、う……して、よっ」
必死に体を揺らして、奴隷の舌に陰唇を押し付けようとするが、そのたび顔を離されて、悲痛な声を上げる。
勃ち続けている乳首と陰核は数日間の舌による責めと吸引でさらに一回り大きさを増し、てらてらと光っていた。
寸止めを続けられ、やがてのどの痛みから喘ぎ声も小さくなってきた蛍を見て、奴隷たちは床に置いてある数種類の淫具の1つを手に取る。
繊毛まみれの管を見て、蛍はがたがたと体を揺らした。
「まって、まってって、っくはああああああああああっ!」
吸引機能こそないが、何十本もの筆に一斉に撫でられているような感触に、蛍は声帯が焼ききれそうなほどの叫びを発する。
果ててもないのに潮のように淫液を噴き出し、すぐさま達しそうになるが、そこで振動を止められた。
「っぐ、ぁあ……、っく、あぁぁ……っ!」
涙に潤んだ目で訴えかけるが、願いは決して届かない。
何日も続けられた寸止めを今日も続けられ、蛍は全身を紅潮させて悶え続けた。
■■■
「…………おねがい、……、お、ねが、いぃ……っ!」
奴隷たちの快感を受け入れやすくするためか、無意識に股を開いて愛撫を受けていた蛍は、異変を感じていた。
何時間か、正確な時間はわからないが、もう正午は過ぎているはずだ。にもかかわらず、いつもの問いかけがやってこない。
「あっ……っ! ううう! ぅ、ぁあっ!」
ぷっくらと腫れあがった陰核への責めでまた絶頂を取り上げられ、ついに蛍は涙をこぼす。
「もう、限界だからぁっ! イかせて…………っ」
蛍の股の間に顔を入れ、内腿を舐めていた奴隷が顔を上げる。
「絶頂させることは、禁止されています」
「なんでっ、昨日までは………っ」
『舐めろと言え』だの『自慰を見せろ』だの『蟹股で立ったまま果てろ』だの、屈辱的な条件を提示されてはいたが、それを守れば果てさせてくれた。
しかし、帰ってきた答えはそっけなかった。
「方針が変わったそうです」
それだけ言うと、再び焦らすような愛撫を再開される。
言われたことを理解して、全身に与えられるねっとりとした愛撫と自分の喘ぎ声を呆然と感じ、ぷつん、と頭の中で一本なにかが切れ落ちた。
ぎゅううう、と拘束限界まで熟れた体を縮こまらせる。
「ふ、ざけんなっ、触るな、よっ! あ、ああ、……ぅあ」
返事はない。しかし反抗の意志は感じたのか、奴隷たちはいっせいに突起を吸い上げた。
完全に体を弄ばれて、蛍は縮こまらせた体を固め、嬌声を搾り取られた。
「あああああああああっ! イ、……っ! あ、あぁ……ぁあっ! ああっ!」
ちゅぱ、と解放されても、今度は疼きで全身を焼かれる。
発散する手段を奪われたまま、蛍は延々と、寸止めの数を積み上げられていった。
■■■
そして、その日の深夜。
快楽に燃やされて、熱を留められた蛍の下に、アイリーンとあかりが帰ってくる。
「あ、イく、……イ……ぁ、こ、んど、こそ………っ! い、やぁ、イ、きたい、ぃ!」
「あらあら、可哀想なことになっちゃって」
口元をべったりと濡らして、なにやら満足げなアイリーンは、蛍に笑いかける。
「イきたい?」
「イきたい……、イかせ、て」
「じゃあ、私に協力してくれる?」
「…………」
蛍は、黙った。否定ではなく、黙った。
しかし、アイリーンは蛍の言葉を待たずにばっさりと会話を切り捨てた。
「逡巡するならまだ駄目ね。あかり、首輪付けて棺桶に入れといて」
「かしこまりました」
「あ、ちょっと、ね、え……。お願いだからぁっ!」
「ごめんね、お姉ちゃん」
声音は申し訳なさそうに、それでも淀むことのない手つきで、あかりが動く。
首輪をつけて、さらに性感帯にパッドを張り付けて、棺桶に入れる。
閉められる直前、アイリーンの言葉が滑り込んできた。
「来週末に、また聞くわ」
閉められたとたんに、パッドが微振動を始めて、蛍はすぐに体をくねらせる。
しかし、数秒で果てそうになると、また振動が止まって、泣き喚いた。
「いやああああああああっ! イかせてぇぇぇえええええええええええっ!」
躊躇もまじりっけもない懇願の叫びは、しかし棺桶の外には漏れない。
甘い地獄に、強靭な蛍の精神も少しずつ摩耗していく。
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