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57日目―翻弄―
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「同僚に会ったらどうしようかしらね」
「………こんな時間に起きてる奴なんかいないだろ」
そうは言うものの、梓は恥ずかしそうに裸身をくねらせる。
土曜日、早朝。
アイリーンは、梓の首輪にリードを付けて引きつつ、自室から白い部屋へと向かっていた。
「あ、梓。わたし、明日は忙しくて自室から出れそうにないのよ」
「だからなんだよ」
「いやあなんでも。で、あとあかりは、場合によっては蛍さんを鞭打つけど、表情変えちゃだめよ。ロック」
少しだけ眉を下げるあかりに、アイリーンはごめんなさいね、と謝る。
「ちゃんと痕は残らないように、綺麗に裂くから」
「……主様がそう言うのでしたら」
あかりからOKが出て、アイリーンは内心で安堵のため息をつく。
びん、びん、と梓のリードを引っ張って苦しげな声を楽しんで、一週間ぶりに白い部屋に入っていった。
■■■
「あ、ああ………っ、あ、――~~~っ! あ、っん、あっ!」
「あら、叫べるなんて割と元気ね」
涙と涎をまき散らして悶える蛍に、アイリーンは感心したように言う。後ろのあかりは無表情だ。すでに役に入っているらしい。
リモコンを操作して、棺桶を開く。
全身をてらてらと光らせた蛍が前のめりに突っ伏して、アイリーンは指示を出した。
「とりあえず水分補給、それが終わったら緩めに拘束して。ああ、普通に労ってあげていいから」
「かしこまりました」
恭しくお辞儀をしたあかりが姉を抱き上げるのを見て、アイリーンはリードを引っ張った。
「っぐ、あっ」
「あんたはそろそろ本気で堕としに行くわよ。一応、責任もって再構成しますって言っちゃったしね」
「やれるもんなら、やってみろよ……。この、三下っ」
「あら、評価下がっちゃった。でもそしたら、あなたの蔑称も変えないとね」
天井から吊り上げて、足も閉じられないように枷をはめる。
気丈に睨み上げる梓の顎をすりすりと撫でて、アイリーンはにやりと笑った。
「あなたは、猫で十分ね」
そして、もう片方の手で、内腿を優しく撫でる。
「………ぅ、ぁ、……――っ、」
「猫ちゃんは敏感ですねぇー。すりすりするだけでこんなに涎を垂らしちゃって、発情期かしらあ?」
「年中発情してんのはお前、だろっ。ぅ、ああっ、あああああっ」
くりくりと陰核を擦ってやると、梓は腰を振ってアイリーンの手から逃げようとする。
ただ、当然ながら逃げられるわけもなく。
肉感的な太腿を震わせ、ふりふりと尻を振って喘ぐ梓は、はたから見るとさらなる愛撫を誘っているようにしか見えなかった。
人差し指から手の甲に、熱い汁が垂れるのを感じながら、アイリーンはあえてそのまま、梓に抵抗を続けさせる。
抵抗させつつ、責め続ける。
「……く、ぅぅっ! はっ、ああぁ、……この、くっそ、やろぉっ、ぁあっ」
「良いわ。存分に抗いなさい。とっても愉快よ、その姿」
土台、無理な話なのだ。
想像を絶する感度になった体に、拘束までされて、それでも絶頂しないだなんて。
結局、アイリーンは最後まで責め手を強めなかった。
人差し指一本で、陰核をつつくだけ。
そして、それだけの責めに、たやすく梓は決壊した。
アイリーンを睨みつけて、がしゃがしゃと鎖に吊られた両腕を揺すって。
むき出しの双臀をうねらせ、花唇からたらたらと愛液を溢れさせた。
「こ、のっ………っ、あ、ゔあっ!」
がくり、と跳ね上がる体から一拍遅れて、豊かな胸が柔らかく揺れる。
その頂点、尖った桃色の突起をつついてさらに喘ぎ声を上げさせて、アイリーンはちらりと後ろを向いた。
あかりに抱かれるように、後ろ手に拘束されている蛍の目に光が戻り始めているのを認めて、持参してきた小道具を取り出す。
細くて、黒くて、長い鞭。
真壁沙羅が持っていたのと同形の鞭を目にして、梓の顔が、恐怖に歪んだ。
■■■
朝宮姉妹は、アイリーンが取り出した鞭の危険性を正確に理解していた。
SMグッズと言えば大事には至らなそうな気がするが、使うものが使えば鞭は立派な拷問器具だ。真偽のほどは定かではないが、過去に奉行所では、刑罰中にショック死したという例もあるぐらいの。
蛍は切羽詰まった声で叫ぶ。
「あかり! あれはやりすぎよ、今すぐやめさせてっ!」
「ダメです。主様の邪魔はできません」
「ふざ、っけんな、このっ!」
必死にもがくが、不感剤もない蛍は、後ろにいるあかりの髪が当たるだけで官能が迸ってしまいろくに動けない。今朝までイかされ続けて、腰もガタガタだ。
アイリーンは、頬を上気させて睨んでくる蛍に、小さく笑った。
笑って、そのまま鞭を振るった。
ピッシィッ! という音が、広い部屋を貫く。
「あ、ああああああああああっ!」
小さい背中に鞭を受けて、梓の体が限界まで反りあがる。
胸を揺らして、喉笛を晒して絶叫する梓に、アイリーンは笑った。
「あはは、猫というよりカエルみたいね。そんなに痛いのかしらあ? これ」
「あ、ああ……」
がくり、と首を折る梓は、涙こそ流していなかったが。
その目は恐怖に沈んでいた。
―――痛いだけじゃ、ないんでしょうね。
鞭打ちは、梓にとってはトラウマなのだろう。真壁沙羅に受けた凄惨な性拷問を想起させてしまうから。
思えば、梓は自分が責めるときも一度も鞭は使っていなかった気がする。
―――ま、どうでもいいけど。
「さて、じゃあ二発目いってみようかしら」
「いや、だ。いやだっ! いやだあっ!」
アイリーンの言葉に、梓はかたかたと体を震わせた。
その様子を見て、蛍はたまらず声を上げる。
「もうやめなさいよっ! 前も言ったけど、あんたら同僚でしょ、仲間でしょっ! もう許してあげてよ!」
―――ああ、やっぱり甘いわね。蛍さん。
その言葉を、待っていた。
そしてアイリーンは、青い目で蛍を見下ろして、内心では笑い転げそうになりながら、蛍に笑顔で語りかけた。
「あら、そお? まあ確かにそうよね。じゃあ、蛍さんが代わりに私のお願いを聞いてくれれば、猫への躾は緩くしてあげるわ」
「……鞭打ちでもなんでもしなさいよ」
「ああ、そんなことは言わないわよ。あかりさんの血縁を傷つけたりは、なるべくしたくないもの」
なるべくね、と含みを持たせて。
アイリーンは蛍の耳元で要求を言った。
■■■
「んーーーっ! む、むーっ!」
吊られた腕を下ろされたのも束の間。
梓は、あかりに右手と右足、左手と左足をそれぞれまとめて掴まれて、前屈をひっくり返したような姿勢で固定されていた。
俗にいう、まんぐり返し。
天井に秘部をさらけ出した姿勢で固められる。
そして、すでに蜜を湛えた花園に擦り寄るのは、後ろ手に縛られた蛍で。
アイリーンは、愉悦の極みといった口調で言う。
「鞭は可哀想だっていうなら、目一杯気持ち良くしてあげなさい? 拷問として成立するぐらいね」
「んんんんっ⁉ んーんーっ!」
必死で首を振る梓に、なにを思ったか。
ずりずりと舌が届く位置まで移動して、床に乳首が擦れてこちらも甘い息を吐く蛍は、少しだけ気まずそうに言う。
「さんざん私に好き勝手やってきたんだから、これぐらいのことで嫌がらないでくれる……?」
―――違う、そうじゃなくてっ!
懸命に伝えようとするが、全てを見越したアイリーンに口をふさがれて、ただ意味のないうめきだけが漏れる。
蛍が絡むと、おかしくなるのだ。
体が疼いて、どきどきして、熱くなって、どうしようもなくなるのだ。
今だって、蛍に見られていると思うだけで、とめどなく愛液が流れていて……。
「……ちゅ、んんっ、……んむっ」
「んんん⁉ んぐぅぅうううううっ!」
ひくひくと蠢いていた襞を舐められて、梓はがくんと体を跳ね上げた。
押さえているあかりが一瞬浮きそうになるほどの反応を見せ、ひと舐めごとに梓は濡れたうめきを発する。
蛍の舌使いは、上手くはないだろう。
だが、そのせいで予測ができなかった。
確かめるように襞を一枚一枚舐められていると思えば、いきなり陰核を吸い上げられ。
膣内の奥深くまで舌をねじ込んではすぐに引き抜き、すー、と会陰から肛門付近まで舌を伝わせる。
一般的には拷問になりようもない、もどかしいだけの奉仕に、しかし梓は顔を真っ赤にして翻弄されていた。
「ゔゔゔゔゔゔうっ! んんんんんんんんんんっ!」
何度も何度も腰を跳ね上げ、蛍の顔に陰部を押し付けるように尻を振る。
その様を見ていたアイリーンは、必死に笑いをかみ殺していた。
―――蛍さん、気づいているのかしら。
おそらく、無自覚だろう。そして梓にとっては想像もできないことだろう。
蛍の舌が、ただひたすらに梓の愛液を舐めとるために動いているだなんて。
手足を戒められ、唯一動く顔を梓の股間に押し付けて。
蛍はとろとろに濡れた口で、不貞腐れたようにつぶやいた。
「また鞭打たれたくなかったら、さっさとイけ」
「ん、んんんんんんっ、―――~~~~~~~ッ!」
その言葉がとどめだった。
蛍の声に呼応するように梓は陰唇をひくつかせ。
硬直した体を一気に震わせ、蛍の顔に真っ白な愛液を噴き出した。
■■■
「はいおつかれー」
「あ、んん、…………ん……ぅ」
「ぷは……っ、はあ、はあ」
異常に昂った梓が100回ぐらい果てた頃。
陰部をさらけ出したまま顔を火照らせて涙を流す梓と、何度も淫液を浴びせられた蛍に、アイリーンはにこにこと告げた。
上気しきった二人の顔を見て、アイリーンは笑う。
「うんうん。猫もたくさんイって疲れ切ってるみたいだし、今日はもう十分かしらね」
「なら、………さっさと、出てけよ」
「まあその前に」
目線を向けると、あかりは迅速に反応した。
まずは梓を後ろ手に縛る。
さらに蛍に猿ぐつわをはめ、さらに顔全体に布を被せて、外界と遮断する。
「んぐっ! んんんん、んーっ!」
元から嚙まされていた梓も含め、声を出せなくなった囚人二人。
あかりに蛍を直立させて、アイリーンは芝居がかった口調で言った。
「さて、私が次にここにくるまで、蛍ちゃんにはまた棺桶椅子で頑張ってもらおうと思うんだけど」
「んんん⁉ んーんーっ!」
悶える蛍を無視して、青い目を梓に向ける。
固定を外されても動けず、陰部をさらけ出してくたりとしている梓に、告げた。
「もし梓ちゃんが代わってあげたいっていうなら、代わってあげてもよくってよ」
蛍ちゃんが椅子に座るまでね、シンキングターイム、と。
おちゃらけて言うアイリーンに、梓は頬を引きつらせる。
―――優秀なアンタは、覚えちゃってるものね。
布石は、打ってある。
ここに来る前の廊下で、アイリーンはこう言った。「明日は自室で忙しい、次に来るのは1週間後」と。
だから、梓だけが知っているのだ。一度あの椅子に座れば、おおよそ8日間、地獄の責め苦から抜け出せないことに。
一歩一歩、椅子に歩かされる蛍を横目に、アイリーンは片目を吊り上げる。
「えー、梓。助けてくれた恩人を、見殺しにする気ぃ?」
「ん、んんんんんんんんっ‼」
事前の話を知らない蛍からすれば梓は「たった半日の責めすら肩代わりしてくれなかった薄情な女」にしか見えないだろう。
ぼたぼたと猿ぐつわの隙間から涎を垂らして何かを訴えかける梓だが、残念ながら声は届かない。
そして悲しいかな、快楽責めにめっぽう弱い梓に、あの椅子に座る度胸はない。
と、思っていたが。
―――へえ、やるじゃない。
後ろ手に縛られた体を不格好にくねらせ、がくがくと立ち上がる梓を、少しだけ見直す。
しかし、想定内だ。
のろのろと棺桶に歩を進める梓を、アイリーンは音が出ないように、そっと引き倒した。
そして、アイリーンの柔らかい体に包まれているうちに、蛍は椅子に座らせられて、ばちん、と四肢を留められる。
「んんんんっ! んんんんんっ‼」
「なにかしらあ梓。言い訳なんて蛍さんも聞きたくないでしょうに」
勝手に声を当てるアイリーンの、白々しさといったらない。
リモコンを弄んで、蛍に言う。
「あーあ。薄情な猫のせいで、蛍さんは今夜も棺桶責めね。可哀想に」
「………別に、最初から期待してないわよ。そいつは打たれ弱いから」
声を震わせながら、それでも気丈に言う蛍に、梓は泣きそうになって弱く首を振る。しかし、もう声は漏らさない。
自分のうめき声が蛍にどう聞こえるのかを想像すると怖くて、物音ひとつ立てたくない。
二人の声音と顔色を見て、アイリーンは脳内のチェックリストを一つ潰した。
―――これで、楔は打てたかしらね。
二人をずっと引き離す必要はない。
疑心を抱かせ、言葉を奪って、それからは逆に、一緒にいさせたほうが良い。そうすれば勝手に自壊していく。
「それじゃ、蛍さん。頑張ってね」
「あ、あああ………、ひゃ、……っく、あ、ああああああああああっ!」
膣内、陰核、肛門、乳首など。
昂った性感帯を一斉に刺激され、蛍は絞り出すように絶叫する。
その姿を見て、にやにやと笑って。
理解するのを拒否するようにうつむく梓を引きずって、白い部屋の扉を閉めた。
「………こんな時間に起きてる奴なんかいないだろ」
そうは言うものの、梓は恥ずかしそうに裸身をくねらせる。
土曜日、早朝。
アイリーンは、梓の首輪にリードを付けて引きつつ、自室から白い部屋へと向かっていた。
「あ、梓。わたし、明日は忙しくて自室から出れそうにないのよ」
「だからなんだよ」
「いやあなんでも。で、あとあかりは、場合によっては蛍さんを鞭打つけど、表情変えちゃだめよ。ロック」
少しだけ眉を下げるあかりに、アイリーンはごめんなさいね、と謝る。
「ちゃんと痕は残らないように、綺麗に裂くから」
「……主様がそう言うのでしたら」
あかりからOKが出て、アイリーンは内心で安堵のため息をつく。
びん、びん、と梓のリードを引っ張って苦しげな声を楽しんで、一週間ぶりに白い部屋に入っていった。
■■■
「あ、ああ………っ、あ、――~~~っ! あ、っん、あっ!」
「あら、叫べるなんて割と元気ね」
涙と涎をまき散らして悶える蛍に、アイリーンは感心したように言う。後ろのあかりは無表情だ。すでに役に入っているらしい。
リモコンを操作して、棺桶を開く。
全身をてらてらと光らせた蛍が前のめりに突っ伏して、アイリーンは指示を出した。
「とりあえず水分補給、それが終わったら緩めに拘束して。ああ、普通に労ってあげていいから」
「かしこまりました」
恭しくお辞儀をしたあかりが姉を抱き上げるのを見て、アイリーンはリードを引っ張った。
「っぐ、あっ」
「あんたはそろそろ本気で堕としに行くわよ。一応、責任もって再構成しますって言っちゃったしね」
「やれるもんなら、やってみろよ……。この、三下っ」
「あら、評価下がっちゃった。でもそしたら、あなたの蔑称も変えないとね」
天井から吊り上げて、足も閉じられないように枷をはめる。
気丈に睨み上げる梓の顎をすりすりと撫でて、アイリーンはにやりと笑った。
「あなたは、猫で十分ね」
そして、もう片方の手で、内腿を優しく撫でる。
「………ぅ、ぁ、……――っ、」
「猫ちゃんは敏感ですねぇー。すりすりするだけでこんなに涎を垂らしちゃって、発情期かしらあ?」
「年中発情してんのはお前、だろっ。ぅ、ああっ、あああああっ」
くりくりと陰核を擦ってやると、梓は腰を振ってアイリーンの手から逃げようとする。
ただ、当然ながら逃げられるわけもなく。
肉感的な太腿を震わせ、ふりふりと尻を振って喘ぐ梓は、はたから見るとさらなる愛撫を誘っているようにしか見えなかった。
人差し指から手の甲に、熱い汁が垂れるのを感じながら、アイリーンはあえてそのまま、梓に抵抗を続けさせる。
抵抗させつつ、責め続ける。
「……く、ぅぅっ! はっ、ああぁ、……この、くっそ、やろぉっ、ぁあっ」
「良いわ。存分に抗いなさい。とっても愉快よ、その姿」
土台、無理な話なのだ。
想像を絶する感度になった体に、拘束までされて、それでも絶頂しないだなんて。
結局、アイリーンは最後まで責め手を強めなかった。
人差し指一本で、陰核をつつくだけ。
そして、それだけの責めに、たやすく梓は決壊した。
アイリーンを睨みつけて、がしゃがしゃと鎖に吊られた両腕を揺すって。
むき出しの双臀をうねらせ、花唇からたらたらと愛液を溢れさせた。
「こ、のっ………っ、あ、ゔあっ!」
がくり、と跳ね上がる体から一拍遅れて、豊かな胸が柔らかく揺れる。
その頂点、尖った桃色の突起をつついてさらに喘ぎ声を上げさせて、アイリーンはちらりと後ろを向いた。
あかりに抱かれるように、後ろ手に拘束されている蛍の目に光が戻り始めているのを認めて、持参してきた小道具を取り出す。
細くて、黒くて、長い鞭。
真壁沙羅が持っていたのと同形の鞭を目にして、梓の顔が、恐怖に歪んだ。
■■■
朝宮姉妹は、アイリーンが取り出した鞭の危険性を正確に理解していた。
SMグッズと言えば大事には至らなそうな気がするが、使うものが使えば鞭は立派な拷問器具だ。真偽のほどは定かではないが、過去に奉行所では、刑罰中にショック死したという例もあるぐらいの。
蛍は切羽詰まった声で叫ぶ。
「あかり! あれはやりすぎよ、今すぐやめさせてっ!」
「ダメです。主様の邪魔はできません」
「ふざ、っけんな、このっ!」
必死にもがくが、不感剤もない蛍は、後ろにいるあかりの髪が当たるだけで官能が迸ってしまいろくに動けない。今朝までイかされ続けて、腰もガタガタだ。
アイリーンは、頬を上気させて睨んでくる蛍に、小さく笑った。
笑って、そのまま鞭を振るった。
ピッシィッ! という音が、広い部屋を貫く。
「あ、ああああああああああっ!」
小さい背中に鞭を受けて、梓の体が限界まで反りあがる。
胸を揺らして、喉笛を晒して絶叫する梓に、アイリーンは笑った。
「あはは、猫というよりカエルみたいね。そんなに痛いのかしらあ? これ」
「あ、ああ……」
がくり、と首を折る梓は、涙こそ流していなかったが。
その目は恐怖に沈んでいた。
―――痛いだけじゃ、ないんでしょうね。
鞭打ちは、梓にとってはトラウマなのだろう。真壁沙羅に受けた凄惨な性拷問を想起させてしまうから。
思えば、梓は自分が責めるときも一度も鞭は使っていなかった気がする。
―――ま、どうでもいいけど。
「さて、じゃあ二発目いってみようかしら」
「いや、だ。いやだっ! いやだあっ!」
アイリーンの言葉に、梓はかたかたと体を震わせた。
その様子を見て、蛍はたまらず声を上げる。
「もうやめなさいよっ! 前も言ったけど、あんたら同僚でしょ、仲間でしょっ! もう許してあげてよ!」
―――ああ、やっぱり甘いわね。蛍さん。
その言葉を、待っていた。
そしてアイリーンは、青い目で蛍を見下ろして、内心では笑い転げそうになりながら、蛍に笑顔で語りかけた。
「あら、そお? まあ確かにそうよね。じゃあ、蛍さんが代わりに私のお願いを聞いてくれれば、猫への躾は緩くしてあげるわ」
「……鞭打ちでもなんでもしなさいよ」
「ああ、そんなことは言わないわよ。あかりさんの血縁を傷つけたりは、なるべくしたくないもの」
なるべくね、と含みを持たせて。
アイリーンは蛍の耳元で要求を言った。
■■■
「んーーーっ! む、むーっ!」
吊られた腕を下ろされたのも束の間。
梓は、あかりに右手と右足、左手と左足をそれぞれまとめて掴まれて、前屈をひっくり返したような姿勢で固定されていた。
俗にいう、まんぐり返し。
天井に秘部をさらけ出した姿勢で固められる。
そして、すでに蜜を湛えた花園に擦り寄るのは、後ろ手に縛られた蛍で。
アイリーンは、愉悦の極みといった口調で言う。
「鞭は可哀想だっていうなら、目一杯気持ち良くしてあげなさい? 拷問として成立するぐらいね」
「んんんんっ⁉ んーんーっ!」
必死で首を振る梓に、なにを思ったか。
ずりずりと舌が届く位置まで移動して、床に乳首が擦れてこちらも甘い息を吐く蛍は、少しだけ気まずそうに言う。
「さんざん私に好き勝手やってきたんだから、これぐらいのことで嫌がらないでくれる……?」
―――違う、そうじゃなくてっ!
懸命に伝えようとするが、全てを見越したアイリーンに口をふさがれて、ただ意味のないうめきだけが漏れる。
蛍が絡むと、おかしくなるのだ。
体が疼いて、どきどきして、熱くなって、どうしようもなくなるのだ。
今だって、蛍に見られていると思うだけで、とめどなく愛液が流れていて……。
「……ちゅ、んんっ、……んむっ」
「んんん⁉ んぐぅぅうううううっ!」
ひくひくと蠢いていた襞を舐められて、梓はがくんと体を跳ね上げた。
押さえているあかりが一瞬浮きそうになるほどの反応を見せ、ひと舐めごとに梓は濡れたうめきを発する。
蛍の舌使いは、上手くはないだろう。
だが、そのせいで予測ができなかった。
確かめるように襞を一枚一枚舐められていると思えば、いきなり陰核を吸い上げられ。
膣内の奥深くまで舌をねじ込んではすぐに引き抜き、すー、と会陰から肛門付近まで舌を伝わせる。
一般的には拷問になりようもない、もどかしいだけの奉仕に、しかし梓は顔を真っ赤にして翻弄されていた。
「ゔゔゔゔゔゔうっ! んんんんんんんんんんっ!」
何度も何度も腰を跳ね上げ、蛍の顔に陰部を押し付けるように尻を振る。
その様を見ていたアイリーンは、必死に笑いをかみ殺していた。
―――蛍さん、気づいているのかしら。
おそらく、無自覚だろう。そして梓にとっては想像もできないことだろう。
蛍の舌が、ただひたすらに梓の愛液を舐めとるために動いているだなんて。
手足を戒められ、唯一動く顔を梓の股間に押し付けて。
蛍はとろとろに濡れた口で、不貞腐れたようにつぶやいた。
「また鞭打たれたくなかったら、さっさとイけ」
「ん、んんんんんんっ、―――~~~~~~~ッ!」
その言葉がとどめだった。
蛍の声に呼応するように梓は陰唇をひくつかせ。
硬直した体を一気に震わせ、蛍の顔に真っ白な愛液を噴き出した。
■■■
「はいおつかれー」
「あ、んん、…………ん……ぅ」
「ぷは……っ、はあ、はあ」
異常に昂った梓が100回ぐらい果てた頃。
陰部をさらけ出したまま顔を火照らせて涙を流す梓と、何度も淫液を浴びせられた蛍に、アイリーンはにこにこと告げた。
上気しきった二人の顔を見て、アイリーンは笑う。
「うんうん。猫もたくさんイって疲れ切ってるみたいだし、今日はもう十分かしらね」
「なら、………さっさと、出てけよ」
「まあその前に」
目線を向けると、あかりは迅速に反応した。
まずは梓を後ろ手に縛る。
さらに蛍に猿ぐつわをはめ、さらに顔全体に布を被せて、外界と遮断する。
「んぐっ! んんんん、んーっ!」
元から嚙まされていた梓も含め、声を出せなくなった囚人二人。
あかりに蛍を直立させて、アイリーンは芝居がかった口調で言った。
「さて、私が次にここにくるまで、蛍ちゃんにはまた棺桶椅子で頑張ってもらおうと思うんだけど」
「んんん⁉ んーんーっ!」
悶える蛍を無視して、青い目を梓に向ける。
固定を外されても動けず、陰部をさらけ出してくたりとしている梓に、告げた。
「もし梓ちゃんが代わってあげたいっていうなら、代わってあげてもよくってよ」
蛍ちゃんが椅子に座るまでね、シンキングターイム、と。
おちゃらけて言うアイリーンに、梓は頬を引きつらせる。
―――優秀なアンタは、覚えちゃってるものね。
布石は、打ってある。
ここに来る前の廊下で、アイリーンはこう言った。「明日は自室で忙しい、次に来るのは1週間後」と。
だから、梓だけが知っているのだ。一度あの椅子に座れば、おおよそ8日間、地獄の責め苦から抜け出せないことに。
一歩一歩、椅子に歩かされる蛍を横目に、アイリーンは片目を吊り上げる。
「えー、梓。助けてくれた恩人を、見殺しにする気ぃ?」
「ん、んんんんんんんんっ‼」
事前の話を知らない蛍からすれば梓は「たった半日の責めすら肩代わりしてくれなかった薄情な女」にしか見えないだろう。
ぼたぼたと猿ぐつわの隙間から涎を垂らして何かを訴えかける梓だが、残念ながら声は届かない。
そして悲しいかな、快楽責めにめっぽう弱い梓に、あの椅子に座る度胸はない。
と、思っていたが。
―――へえ、やるじゃない。
後ろ手に縛られた体を不格好にくねらせ、がくがくと立ち上がる梓を、少しだけ見直す。
しかし、想定内だ。
のろのろと棺桶に歩を進める梓を、アイリーンは音が出ないように、そっと引き倒した。
そして、アイリーンの柔らかい体に包まれているうちに、蛍は椅子に座らせられて、ばちん、と四肢を留められる。
「んんんんっ! んんんんんっ‼」
「なにかしらあ梓。言い訳なんて蛍さんも聞きたくないでしょうに」
勝手に声を当てるアイリーンの、白々しさといったらない。
リモコンを弄んで、蛍に言う。
「あーあ。薄情な猫のせいで、蛍さんは今夜も棺桶責めね。可哀想に」
「………別に、最初から期待してないわよ。そいつは打たれ弱いから」
声を震わせながら、それでも気丈に言う蛍に、梓は泣きそうになって弱く首を振る。しかし、もう声は漏らさない。
自分のうめき声が蛍にどう聞こえるのかを想像すると怖くて、物音ひとつ立てたくない。
二人の声音と顔色を見て、アイリーンは脳内のチェックリストを一つ潰した。
―――これで、楔は打てたかしらね。
二人をずっと引き離す必要はない。
疑心を抱かせ、言葉を奪って、それからは逆に、一緒にいさせたほうが良い。そうすれば勝手に自壊していく。
「それじゃ、蛍さん。頑張ってね」
「あ、あああ………、ひゃ、……っく、あ、ああああああああああっ!」
膣内、陰核、肛門、乳首など。
昂った性感帯を一斉に刺激され、蛍は絞り出すように絶叫する。
その姿を見て、にやにやと笑って。
理解するのを拒否するようにうつむく梓を引きずって、白い部屋の扉を閉めた。
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