悪魔との100日ー淫獄の果てにー

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33日目―梓と蛍の祝日―

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 土日でないにもかかわらず、白い部屋の扉が開いたのは、寸止め電撃責めが3日目に入ったころだった。
 大きくあくびをしながら足を踏み入れた梓は、ぱくぱくと金魚のように開閉する蛍の陰唇を見て吹き出すように笑う。
「いやいやあ、ちょっとは恥じらいとかないの? ねえねえ蛍ちゃん」
「黙れ、黙れっ、っは、あああっ! がっ! あ、っふあ、あああああああああっ!」
 反抗的な返しは健在だが、蛍の目は梓には向いていない。
 イきそうになるたび虚ろな目を細めて歯を食いしばり、電撃を受けるたびに全身をこわばらせて痛みに耐える。
 マグマのように煮えたぎる絶頂への欲も合わせて、蛍の意識はほとんど落ちかけていた。
 手に収まるぐらいの胸を左右に揺らし、ほとんど動かない足を必死に内側に曲げて悶える蛍に、梓は頭を掻いた。
「どこぞのクソ野郎の真似してみたけど、やっぱりオーバーだよなあこの責め方」
 リモコン操作で、突起を苛んでいた繊毛を止める。
 管を取って数分待ってやると、ようやく蛍の意識が浮上してきた。
「………なんで、あんたが、いるのよ」
「いや、祝日だから今日」
「……くそったれ」
「相変わらずひどいなあ」
「………ぁ、う」
 噛まれないように唇を指で触ると、ふるふると震えて鼻に抜ける声を出す。
 ああ可愛いなあ、と抱きしめたくなる衝動を抑えて、梓はポケットから薬を取り出した。
「これ、あげる」
「………今度は、何を……」
「ん、色々あるけど。まあとりあえず」
 そう言って、梓はその薬を奥歯に挟んで、外殻を割る。
 そしてそのまま、赤く戦慄く蛍の唇に自らのそれを重ね合わせた。
「ん、んんんんっ‼」
「ん、んむ」
 ぴちゃ、ぴちゃ、と唾液を絡ませて音を立て、逃げようとする蛍の顔を両手で抑える。
 舌を絡められ、ときに口蓋を舐められて、媚毒漬けにされた蛍の口ははっきりと快楽を受け取ってしまう。
「んん、――~~~っ! んん、ゔ、く、ん、んんんんんんんっ、! ………んく」
「んはあ………、うん、ちゃんと飲んだね」
 逃げられないキスと梓の意図を汲んで薬を飲み下すと、偉い偉いとでも言いたげに頭を撫でられて、唇が離れた。
 至近距離にある、年下の悪魔の端正な顔は真っ直ぐに蛍を見ていて。
 街を歩いたら誰もが振り返るような容姿と、肉欲を湛えた目に、体が粟立つ。
「あ……」
「ふふ、続き」
「え、ちょっ、んんっ!」
 そして再び、唇が重なった。
 両手両足を縛られた蛍に逃げるすべはない。
 薬が回っているため快楽を感じることはないが、貪るようなキスに溺れそうになる。
だが。
―――調子に、乗るなっ!
 がりっ、と舌を噛んでやると、一瞬だけ梓は体をこわばらせた。
 しかし、それだけ。
 出血も気にせず、憑かれたように深いキスを続ける梓に、いよいよ蛍はなすすべがなくなった。
「ん、ま、って、あず、さぁ……、ん、ぅ、なん、なのよっ!」
「んんんっ、んぐ、んむ、ちゅ。蛍ちゃんが可愛いのが、いけないんだぜ、はあ」
 上気した顔でそんなことを言われて、訳が分からなくなる。
 嫌悪感を覚える心と、反応してしまう体に挟まれて、脳が混乱を起こす。
 擦り合わせた太腿から暖かく粘ついた感触が返ってきて、火が出るかと思うほど顔が熱い。
 舌を噛み切ることもできなくはないが……。
―――拘束されたまま殺しちゃったら、どうにもならない。
 蛍は廃棄だろうし、あかりも助からない。
 結局、がりがりと舌を手加減して噛むのが精いっぱいで。
 頭に腕を回されて、服越しに梓の熱を感じながら、蛍は溺死するようなディープキスを強要され続けた。
 
■■■
 
「さて、これから蛍ちゃんの平日メニューを発表します」
「あんたもう本当にテンションの振れ幅がさ……」
 さっきまであんなに妖艶な雰囲気を出していたのに、今は完全に少女である。
 梓と手枷足枷から拘束された蛍は、ベッドと繋がった首輪だけ残して自由となっていた。
 そして、心から意外だったが、セパレートスタイルのトレーニングウェアを支給された。
 心なしかうきうきしている梓は、蛍に言う。
「将来的に助手になってもらうわけだから、やっぱり戦闘能力というか体力は戻してもらわないと困るわけね。だから運動もしてもらおうかと」
「で、これとアレ?」
 蛍が指さしたのは、部屋の隅っこの床からせり出してきたランニングマシンやら何やらの運動器具。
「そうそう。でー、平日のスケジュールはっと」
 手帳をいじくって、梓は告げる。
「えっとまず、起きてから2時間は今まで通り調教で、それから投薬、朝食、排泄の後、薬が切れるまで運動をしてもらいます。で、薬が切れたらまた寝るまで調教ね」
「もう好きにすれば」
「でー、まずは初期値を計りたいから、何ていうの? 体力測定……? みたいなのが学校にはあるらしくて、今日はそれをやりまーす」
 ああ、だからこいつそんなにうきうきしているのか、となんとなく納得しつつ、蛍は一応質問してみた。
「なんであんたもジャージ着てるの?」
「え、わたし体動かしたことないから。超楽しみ」
「この箱入りめ………」
 さて頑張るぞー、とこぶしを握る梓の指示で、とりあえず測定が始まる。
 
■■■
 
「ねえ、あんたさあ………」
「ぜ、ぜひゅ……。ちょ、ごめ、むり……」
 持久走、腹筋、長座体前屈など。
 一通りの種目を終えて、死体のようにべしゃりと突っ伏す梓に、息一つ切れていない蛍は呆れ切った目を向けていた。
 鎖の行動範囲外でぶっ倒れているため反撃はできないし、疲れ切っていてもそういう頭が回るところはまあ、馬鹿ではないのだろうけど。
「もうちょっとこう、繕うというか、悪役感出してくれないとさ……。こんなのにやりたい放題やられてるって思うと私も惨めになるから、ちゃんとしてくれない?」
「うるっさいなあ。何さこの化け物め!」
 がくがくと小鹿のように震えながら、真っ赤になって梓は吠える。
「私はいいの! 頭が資本で体はオマケなんだから! 付録に性能を求めるのが間違ってるんだよ!」
「持久走1分保たないやつも、腹筋1回もできないやつも初めて見たよ……」
「もう二度と運動なんかするか!」
 しらけきった目を向ける蛍に言い捨てて、梓はジャージの上から白衣を羽織る。
 真っ赤になった顔に何とか冷静さを張り付けて、リモコンを操作する。
「がっ! ちょ、っと!」
「くっそー立場をわからせてやる」
 鎖を巻き取られ、垂直に立ったベッドに磔にされる蛍。
 梓が白衣からはさみを取り出したのを見て、背筋に緊張が走った。
「え、ちょっとうそでしょ、ねえ!」
「さあ、どうかなあ」
 びりびりと、雑にトレーニングウェアを破かれ、再び裸に戻される。
 重力に従ってたらー、と垂れる淫液をはさみの刃に絡ませて、梓は笑った。
「脳を誤魔化してるだけで体は感じてるからねー。ほおら、もう蛍ちゃんは運動するだけで愛液まみれのいやらしい子なんだよー」
「………あんたもでしょうが。まあ、あんたは元々運動できないんだろうけど」
「ああそう、そういう口聞いちゃうんだ」
 刃を乳首に当てる。
「一個ぐらい、切り落としても良いんだよ?」
 そんなこと、するわけがない。
 冗談に決まっている。今までだって梓は体に傷が残る責めはしなかったし、理性もある。だから、そんなことで血を見るようなことは、しないはずだ。
 そう思っていても体は細かく震えて。
 しん、と黙った蛍に、梓はへらりと笑みを向けた。
「あはは、うそうそ。かわいー蛍ちゃんにそんなことはしないよ」
「………わかってるわよ」
「傷は心に残すものだぜ」
 そしてその笑みのまま。
 不感剤を無効化する座薬を、蛍の肛門に押し込んだ。
 
■■■
 
「あ、ふ、あ、……っ、ぁ、ぅ………あんっ!」
 体中を触れるか触れないかの強さで触られていた蛍は、陰核を筆でなぞられて嬌声を上げた。
 イかせないように。慣れさせないように。
 10本の指と筆を巧みに使って蛍を快楽地獄に引きずり込んで、梓は蛍の耳を舐めた。
「ふぁ!」
「電撃は痛いもんねー。だからイかせないように触ってあげる」
 いっそ、痛い方がよかったかもしれない。
 痛みで気を紛らわせられない以上、蛍はイけない体を虚しく昂らせることしか考えられない。
 淫液で濡れた筆で、内腿と陰唇、陰核をさわさわと撫でられると、自分から快楽を求めるように腰を突き出してしまう。
 フェザータッチに声を我慢していると、乳首をつままれて楽器のように鳴かされる。
「あっ! ぅ、っく、はあ、………く、っそ、ああっ、あ、ぅぅ………ああっ!」
「ふふ、蛍ちゃんはやっぱり、悶えているのが一番かわいーよ」
 ぴん、と一度だけ陰核を弾いて、梓は笑った。
 運動をしているときの凛々しい姿と、快楽に耐えながらも顔を蕩けさせる姿のギャップに、胸が締め付けられるように熱い。
 しかも。
「ほたるちゃあん? いかせてほしい?」
「……………ばぁ、か」
 何もかも支配されているというのに、未だに心は折れていない。
―――ああ、本当に。最高。
 つぷり、と菊門にも指を入れると、蛍は体を反らせて硬直する。
「あうっ! っく、は、あ、ぁぁ、………っ」
「じゃあ、もっと追い詰めてあげるね」
 結局それから数時間。
 開発されきった体に一か所ずつ丁寧に快楽をため込まれ、絶頂を禁じられた蛍への焦らし責めは続いていった。
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