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突然の訪問

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黒髪の女の子がガラス窓の外を見ている。その窓の向こうには、ストロベリーブロンドの髪の毛をした女の子が男性と親しげに歩いていて、視線を戻すと窓ガラスに写る自分。

(うわー、ちょうどいま目の前で起こっているこの場面、これはゲームの悪役令嬢が主人公と自分の婚約者との関係を初めて疑う場面じゃない。実際疑うも何も、二人はこれから婚約するくらい仲良くなるんだけどね。)

私はセインの別荘から帰った翌日、学校にてセインが例の惚れ薬を仕掛けるべくキースを呼び出して昼食に誘うのを、教室からそっと見ていたのだった。


◇◇◇

その夜、私がいつものようにお風呂に入ろうと湯を沸かし始めた時だった。

トントンと玄関をノックする音が聞こえてくる。

(セインかな。)私はこのところ毎日来ていたセインが今日は来なかったため、てっきり遅れてきたセインだと思って確認もせずドアを開けた。

しかし、そこにいたのはキースだった。

彼は何も言わず部屋に入ってきて、私の腕を掴むと後ろ手にドアを閉めるとともにいきなり私に口付けたのだった。

(何かがおかしい。)私はそう思ったものの、強い力で壁に押さえつけられていたためどうしようもなかった。

そのうち、息が苦しくなり彼から逃れるようにして口を開こうとしたら彼の舌が口内に入ってきた。

それとともにトロリとした甘い味が口内に広がる。

(これは、きっと惚れ薬だわ。)私は瞬間的にそう悟り、驚愕の表情でキースを凝視する。彼は瞳に冷酷な光を称えて私を見下ろしていた。

そのとき、ドタドタという足音が聞こえたかと思うと、「ルーナ!」セインの声が聞こえて私を掴んでいたキースの腕が離れた。

セインが何事かを呟くとキースは床に蹲った。セインは「間に合って良かった。」そう言いながら私の方に向き直った。満月の光を受けてキラキラとした黄金色の髪が眩しい。

「怖かったろう?」彼はそう言いながら私を抱きしめた。そのとき私は自分の体に上手く力が入らないことに気づいたのだった。

「セイン。」私はなんだか熱く火照ってきた身体に戸惑いながら彼にこれはどういうことかと問いかける。

「キースは君に媚薬を飲ませたんだよ。私たちの策略に気づいた奴は君の抵抗をなくした後、無理やり君を自分のものにしようとしたのさ。」セインは横で気絶しているキースを冷めた目で眺めながら言った。
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