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実演的作戦会議

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「あの分だと、意外とチョロいかもしれないな。」私の部屋でくつろぎながら、セインは言った。今日は満月の日なので、本来の姿である。

キース同一事件勃発後は、私は一人でこちらで暮らしている。まぁもっぱら、というかほとんど毎日セインが訪ねてはきているがー本人曰く、キース除けらしいー。

「でもキースのことだもの、どこで罠を張っているかわからない。今だって、目新しいリリシアに興味があるだけかも。」私はスープの中のマカロニをフォークでつつきながら答えた。

「そんなこと言ったって、パーティーまでは後2か月だぜ?そろそろ第二段階にいかないと。」彼は言う。

「そうよね。第二段階は色気仕掛け作戦だっけ。休日に湖に誘って、私が 貴方を水浸しにしちゃうのよね。で、貴方の透けた服を見てキースをどきどきさせよう、ってことか。」私は本当に上手くいくのかしら、とちょっと不安だった。

「濡れた服が肌に張り付いている良さがわからないとはな。」彼はそういうと、水差しを持ってきて「ほら、実践してあげるよ。」と私に水をかけようとしてくる。

「ちょっと、やめてよ。家の中びしょびしょになっちゃうじゃない。」私はその手をすり抜けると、彼の手を抑えて水差しを抜き取った。

「じゃ、バスルームならいいよな?」彼はにやりと笑うと、私をさっと抱き上げてバスルームに連れていく。

(どうしても、私のことをびしょびしょにしたいのか、この人は。)私はあきらめに似た境地でされるがままだった。

バスルームに着くと彼は、私を椅子に下ろし、シャワーの蛇口をひねってサァッーと水をかけてくる。学校から帰宅して、部屋着の薄手のワンピースを着ていた私は言うまでもなく、服が体にくっついた状態になった。

「ほら、みてよ。下着が浮かび上がってきた。」彼は目の前の鏡を指さすと、シャワーの蛇口を止めた。

そして、そーっと私のワンピースに手をかけようとしてくる。私はその手をぴしりとたたくと、「効果は十分わかったから、これまで。触るのはなし。」言い放った。

「ちぇっ。」彼はそう言って、傍にあったタオルを手に取ると私に渡し、「濡れちゃったし、一緒にお風呂にはいろっか。」そんなセリフを追加した。

「もっとダメに決まってるでしょ。」セインは基本的には好きだが、こういうところは何とかならないかな、なんて私は思ったのだった。

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