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ヒロインに惚れさせろーミッション1

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そんな私に気づいているのか、いないのか、セインは「ルーナ嬢のことは、俺がしっかり守るから。」と言って、私のことをそっと抱きしめる。髪の毛からかすかに甘いバニラの香がして、体はふわりと柔らかく女の子に抱きしめてもらうとこんな感じなんだ、と私はドキドキしていた。

「さて、パーティまでに俺に惚れさせて、婚約させたいところだけど、どうするべきかな。いっそのこと今の状態を利用して色気仕掛けでもやっちゃう?」と彼はなぜか変に乗り気である。

「ただ、ルーナ嬢に惚れ込んで突拍子もないことをしでかす奴だからな。そんな小手先の作戦で落とせるなんてことはないよな。」と一人でぶつぶつと考えている。

(私は、この世界にもともと悪役令嬢として転生してきたわ。今こそ役目を果たすときじゃないかしら。)と私はそこまで考えて、「私がとんでもない性悪令嬢だったってことにしたらどう?」と私は切り出した。

「私が転校してきた天使のように愛らしいリリシアを嫉妬からいじめるのよ。その性格に幻滅したキースは私を捨ててリリシアを助ける。そしてそのまま二人は結ばれる。」と私は転生前に遊んだ乙女ゲームを参考にしながら筋書きを考えた。

「俺は...、俺は君に悪役なんて演じてほしくない。でも、君のいう筋書きはかなり上手くいきそうな気がする。」彼は少し浮かない顔をしながらも頷いた。

そして「ということは、俺は俺の方でキースに接近して好感度を上げとかないとな。」と段々とこの作戦に乗り気になってきたのか、彼はつけ加えた。

その後、私たちは王族主催のパーティーまで後3か月しかないことを踏まえて、逆算的にどこでどういう行動をとるのか作戦を練った。さっそく今日の放課後から作戦ははじまる。

放課後ー

いつものようにキースは私の教室を訪れる。けれども、そこにはリリシアも居た。「キース様、私も寂しいので一緒にお二人と帰宅してもいいですよね。」ととびきりの笑顔でリリシアーセインは言う。

「あ、ああ。」キースは私の方を見ながら、頷いた。この時点でのキースの中におけるリリシアの好感度はかなり低いようだ。

私たち三人はキースを真ん中にして歩きながら帰宅する。私がもっぱら聞き役で、リリシアがキースと会話できるよう、かなり気を使った。

こういう風に帰宅すること1か月、キースのリリシアに対する心も、当初と比べるとかなり開いてきたように思われる。最近ではたまにリリシアとの会話に夢中で、私がわざと立ち止まってみてもそれに気づかずかなり歩き進めてしまうくらいである。


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