【完結】悪役令嬢に転生しちゃったけど、婚約者様とヒロイン(仮)に溺愛されちゃいそうです!?

雪入凛子

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満月

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私はいきなり唇に彼の指を感じて、ドキドキしたが、(ここで流されちゃいけない。だっていつも私はそうだもん。)と考えた。

セインは「どう?試してみる?」なんてにやにやしながら聞いてくる。だから「もう、からかうのはやめて。」私はぴしりと言い返した。そして手早く荷物をまとめると彼の方を見もせずに、「そろそろ帰るね。お茶ご馳走様。」と言って立ち上がった。

しかし、彼も一緒に立ち上がったようだがなんだか様子がおかしかった。だって同じ背丈のはずなのに、今の私には彼の胸あたりしか見えないのだ。

「セイン?」私がおそるおそる顔を見上げると、そこに女の子はいなかった。代わりにいたのは綺麗な男の子だった。窓から差し込む沈む夕日に照らされた髪は燃えるような黄金色で、あめ色のような瞳は涼し気な鼻梁の上できらきらと輝き、薄い唇は上品に弧を描いていた。

「驚いた?」彼は柔らかな優しいテノールの声でそういうと、優し気に微笑んだ。そして「満月の夜あたりなるとこうして元に戻れるんだ。ほんと、相手の魔力がそこまで強くなくてよかったよ。」と言った。

(満月の夜に戻るなんて、まるで狼男みたい。でも少しは前の姿に戻れる時があるのね。これは何かのヒントになりそう。)私はそう思うと、さっき考えていたことを思い出して、「じゃあ帰るわ。」と言った。

「ちょっと、ちょっと、それはないでしょ。何か反応してよ!せっかく君にこっちの姿を見てほしくて、今日は呼んだんだからさ。」と彼が言ってきた。

「だって、なんだか雲行きが怪しそうだし。」ちらりと私は彼を見て言う。セインはぷっと噴き出して「それは勘のよろしいことで。」そう言って、「今キスしてくれたら、もうこの姿のままいられるかも。」なんてほざく。

私がギロリと睨むと「ご、ごめん、冗談だってば。」なんて言いながら、あははと乾いた声で笑った。

寮の戸口まで来た時、セインは「ごめん。俺は今は家から出られないからさ。」と悲しそうに言った。
「ううん。ありがとう。また根本的に解決できる方法を見つけなきゃね。」と私は元気づけるように言った。「そうだよな。図書館あたりで探すかな。」彼はちょっと遠い目をして、そう呟いた。

その顔がなんだか寂しそうだったので、「ねぇちょっと、」私は彼に向ってちょいちょいと手招きする。「?」セインは不思議そうな顔をして私の方に耳を寄せる。私はその横顔に触れるくらいの優しいキスをしたのだった。
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