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5.第四幕

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「見たままだよ、ルイ。その宝石はまがい物だったってことだね」

 静かな声でエイデン侯爵は言いました。

「いくら、レオ、お前が私と竹馬の友とも言えど、許されることだと思ってるのか?」

 冷めた目でルイ王子はじっとエイデン侯爵を見据えました。

 しばらく2人の睨み合いが続きます。

「お前が、リリーに執心してることは知ってるんだ。いっその事、私に嫁ぐ前に亡き者にしようという判断か」

 (ええええ、エイデン侯爵がリリー伯爵令嬢のことを好きなようには全く見えないんだけど……)

 真剣な顔をしてとんでもないことを声を張り上げて言うルイ王子に、私は心の中で驚きを隠せませんでした。

 その時、部屋の扉の方でガタリと音がしました。

「誰だ?」

 ルイ王子は閉められた扉に向かって叫びます。

扉の外では、バタバタという足音がしたかと思うと走り去ったように見えました。

「早く追え」

エイデン侯爵はすぐさま扉に駆け寄り、扉を開くと遠くに控えさせていた侍従に言いつけます。

 再び扉を閉めてエイデン侯爵がこちらに来ると、

「ルイ、お前はリリー伯爵令嬢に惑わされてるんだよ!」

 抑えた声ながらも怒りを込めて彼はルイ王子に言い放ちました。

 そんなエイデン侯爵をルイ王子はキッと睨みつけると、

「お前はこの事を言いたいのか?」

 そう言うと、着ていたシャツのボタンも構わずに引きちぎって首の付け根を顕にしました。

 (刻印の魔法じゃない……)

 この世に存在する魔法で、1番強力とも言われる刻印の魔法が彼の首筋には刻まれていたのでした。

「ルイ、気づいてたんだな」

 ルイ王子はエイデン侯爵の発言には頷かず、手元にあったネックレスを見下ろします。

「これも国民、ひいてはノクタム一族のためさ。なのに、お前ときたらこんな小賢しい真似で俺の努力を水の泡にしようとした」

 どこか悲しげにルイ王子は呟きながら、服装を整えます。

「バロン伯爵家は今この国で1番力がある。そんな家の令嬢との婚約破棄をしたらどうなるか」

 国中を混乱に陥れられるだろう?ルイ王子はそう言い残して部屋を出ていったのでした。

 

 
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