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5.第四幕

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「ゴホッゴホッ」

 エイデン侯爵家での晩餐会の後から、体調を崩しがちな私は今日もベットの上にいました。

「リリーお嬢様、ルイ王子が今日はお見舞いに来て下さるそうですよ」

 侍女がカーテンを開けながら、私にそう告げます。

 私は不調を我慢して起き上がると、侍女に止められながらも身支度を整えました。

 (せめてルイの前では綺麗に着飾っていたい…)

 私はそんな思いのもと、着飾った仕上げにルビーのネックレスを身につけます。

「リリー?」

 私の支度が終わるや否や、自室の扉の外から優しく私を呼ぶルイ王子の声が聞こえました。

 どうやら、早く到着したものの私が支度中と知り、待っていてくれたみたいでした。

「ルイ」

 私がそっと扉に向かって囁くようにいうと、ガチャリと扉が開いてルイが入ってきます。

「今日もすごく綺麗だね、リリー」

 ルイは目を細めて柔らかく笑いながら、私の手を取って窓辺に促します。

「みて、前に僕達が一緒にデザインを決めた馬車が完成したんだよ」

 窓の外には、結婚式の際に乗る予定の馬車が止められていました。

「まぁ、素敵ね」

 思わず咳き込みそうなのを我慢して、私はルイに微笑みながら言いました。

 その時、ルイがおやと私の胸元に視線を落としました。

「リリー、そのネックレス、留め具のところが少し欠けてるみたいだね?」

 ルイはそう言いながら、私を後ろに向かせてそっとネックレスを外します。

「せっかくレオに貰ったものだし、僕が治しておくね」

 ルイはそういうと控えていた侍従に、ネックレスを渡します。

 「えぇ……ありがとう、ルイ」

 どこまでも優しいルイに私はお礼を言いながらも、留め具に欠けてる部分なんてあったかしら?とふと思ったのでした。

 ――翌日、昼――

「ルイ王子、今年はエイデン侯爵が提案した方式で小麦を育てたところ、かなりの豊作だったようで」

 臣下が嬉しそうに僕に今年の秋の収穫状況を伝えてきます。

 (これを輸出に回せば、国庫も潤いさらなるこの国の発展に繋がるだろう)

 そんなことを考えながらも、頭に浮かぶのはルビーのネックレス……

 (あのネックレスは朝日に反射していなかった。つまりは紛い物。まさか、レオがリリーを傷つけようとしたのだろうか)

 兄弟のように幼い頃から一緒に育ってきたレオがそんなわけが無いと思いつつも、僕は胸のつっかえが取れませんでした。

 それに輪をかけるように、ギルバート男爵令嬢とレオの婚約の話が僕の気を重くさせます。

 (なぜ俺は、2.3度しか会ったことしかない令嬢の婚約話に気が沈むのだろう……)

 僕がじっと考え込んでいると、

「ルイ様、ルイ様!」

 臣下が何度か自分を呼んでたことにようやく僕は気がついたのでした。

 

 
 
 
 
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