転生令嬢の推しは王子様の側近ですが、なぜか王子様が私を誘惑してきます…

雪入凛子

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3.第二幕

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希少な宝石を見に纏い、ルイ王子を引き連れて去っていったリリー伯爵令嬢を確かめると、私はネックレスにかけられていた布をさっと手に取りました。

「ギルバート男爵令嬢?」

 どうされたのですか?とでも言いたげな怪訝な顔をした、エイデン侯爵が私に問いかけます。

私はその布をギュッと握り締めると、エイデン侯爵に向かって、さっと近くに見えたバルコニーに向かうように目で合図をしました。

 バルコニーについて、カーテン越しに貴族たちが優雅にダンスに興じる姿を眺めながら、私はそっとそばにいるエイデン侯爵に尋ねます。

「エイデン侯爵様は、何かバロン伯爵家に恨みでもあるのですか?」

 エイデン侯爵の方に顔を向けずに、私は尋ねたので彼が今どんな顔をしてるのかはわかりません。

 しばらく間があった後、エイデン侯爵は

「どういうことでしょうか」

 エイデン侯爵がじりりとこちらに、滲み寄りながら私に聞いてきます。

 私は着用していた手袋の片方だけをとり、手に施していた染料が見えなくなっているのを確かめてから、彼にその手を差し出しました。

「もともと鉱物に含まれる毒素に反応したら、反応する魔法陣を描いて塗りこんでいたのよ」

 私はそう言いながら、布に触らなかった方の手の手袋を外しました。

 すると、そちらにはしっかりと染料で描かれた紋様が
刻み込まれています。

「なるほど、ただの成り上がり商人の小娘と思っていたが、どうやら俺はみくびっていたみたいだな」 

 エイデン侯爵はそういうと、いとも簡単に私の両手を片手で掴むと、そのままバルコニーの端まで私を追い詰めます。

 (ここから私を突き落としでもするのかしら)

 そんなことを思いながら、私は彼をキッと睨みつけました。

「ここから、君が酔ったことにして突き落としてもいいんだよ?」

 そんな恐ろしいことを言いながら、しかし彼はもう片方の手で私の腰に手を回し、落ちないようにしっかりと支えます。

「ほんとは、君に恩を売っておいて協力させるつもりだったんだけど……」

 彼がそう言いかけた時、

 バルコニーのカーテンをサッと開ける人物がいたのでした。

「レオ、探したよ」

 その声が聞こえるや否や、エイデン侯爵は私の身体をぐっと自身の方に引き寄せると、驚く私をよそに、深い口付けをしたのでした。
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