7 / 34
2.第一幕
1-3
しおりを挟む
私は身体が気だるいのも気にせずに慌てて身を起こそうとしました。
しかしながら、魔法使いはそんな私をみて慌ててこちらに駆け寄ってきて
「そんな急に起き上がられると、身体に悪いですよ」と
私をそっと制止します。せっかく塁に会えたのに、なんだか塁の他人行儀な言い方に
「ちょっと、塁、せっかく会えたのにそんな言い方ないでしょう?」
と思わず言いました。そんな私のセリフを聞いた魔法使いは、きょとんとした顔をして
「リリー様、私の名前はカイですよ。もしかして、また高熱がでてきたのでしょうか」
そう言って、大真面目な顔をして、私の体温を確かめようと私の額に触れます。
ひんやりと冷たい手が額に当てられるのを感じながら、私はここで考えました。
私が、ゲームの世界から現実の世界に戻った時、私と塁の関係性は変わっていました。
となると、再度ゲームの世界に入った場合も、もしかしたら、塁の役柄は変わっているのかもしれないと。
そう思っていると、扉をノックする音が聞こえました。
私がどうぞ、と扉の向こうにいる相手に声をかけると、
失礼します、と言い入ってきたのは、私がこのゲームで一番好きなキャラクターの近衛騎士でした。
近衛騎士は、入ってくるなり魔法使いに私の容態を尋ね、
容態が安定していることを確認すると、魔法使いに少し席を外すように伝えました。
魔法使いが私に一礼して、部屋を出て行くのを見届けてから、私は騎士に向き直りました。
このシーンは、何度もゲームをしたからもう既視感満載です。
この後、騎士は私に明日の舞踏会に出席するように伝えるのです。
そして、私はそこで王子からプロポーズされるのです。
ただし、今回はなんだか騎士の様子が違いました。
私のことをじっと見つめると、
「ゆり、戻ってくるなと言ったのに」
そう言いながら、突然私を抱きしめたのです。
「でも、こうして会えて嬉しい」
そう言いながら、驚きで固まった私に優しく口付けを落としました。
「る、塁?」
私が呟くと、騎士はうんうんと頷いてさらに私を強く抱きしめます。
「その指輪をみて、君が帰ってきたんだと気付いたよ」
そう言いながら、私から離れると私の指をとって優しく指輪を撫でます。
「本物のリリーは、この指輪を持ってないからね」
そう言うと、
「今度は、僕に刻印なんかしないでよ」
と口を尖らせて言いました。
私はごめんなさいと謝ると、塁にずっと聞きたかったことを聞きました。
「私が向こうの世界に戻った後、貴方はどうなったの?」
しかしながら、魔法使いはそんな私をみて慌ててこちらに駆け寄ってきて
「そんな急に起き上がられると、身体に悪いですよ」と
私をそっと制止します。せっかく塁に会えたのに、なんだか塁の他人行儀な言い方に
「ちょっと、塁、せっかく会えたのにそんな言い方ないでしょう?」
と思わず言いました。そんな私のセリフを聞いた魔法使いは、きょとんとした顔をして
「リリー様、私の名前はカイですよ。もしかして、また高熱がでてきたのでしょうか」
そう言って、大真面目な顔をして、私の体温を確かめようと私の額に触れます。
ひんやりと冷たい手が額に当てられるのを感じながら、私はここで考えました。
私が、ゲームの世界から現実の世界に戻った時、私と塁の関係性は変わっていました。
となると、再度ゲームの世界に入った場合も、もしかしたら、塁の役柄は変わっているのかもしれないと。
そう思っていると、扉をノックする音が聞こえました。
私がどうぞ、と扉の向こうにいる相手に声をかけると、
失礼します、と言い入ってきたのは、私がこのゲームで一番好きなキャラクターの近衛騎士でした。
近衛騎士は、入ってくるなり魔法使いに私の容態を尋ね、
容態が安定していることを確認すると、魔法使いに少し席を外すように伝えました。
魔法使いが私に一礼して、部屋を出て行くのを見届けてから、私は騎士に向き直りました。
このシーンは、何度もゲームをしたからもう既視感満載です。
この後、騎士は私に明日の舞踏会に出席するように伝えるのです。
そして、私はそこで王子からプロポーズされるのです。
ただし、今回はなんだか騎士の様子が違いました。
私のことをじっと見つめると、
「ゆり、戻ってくるなと言ったのに」
そう言いながら、突然私を抱きしめたのです。
「でも、こうして会えて嬉しい」
そう言いながら、驚きで固まった私に優しく口付けを落としました。
「る、塁?」
私が呟くと、騎士はうんうんと頷いてさらに私を強く抱きしめます。
「その指輪をみて、君が帰ってきたんだと気付いたよ」
そう言いながら、私から離れると私の指をとって優しく指輪を撫でます。
「本物のリリーは、この指輪を持ってないからね」
そう言うと、
「今度は、僕に刻印なんかしないでよ」
と口を尖らせて言いました。
私はごめんなさいと謝ると、塁にずっと聞きたかったことを聞きました。
「私が向こうの世界に戻った後、貴方はどうなったの?」
0
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
【完結】悪役令嬢の反撃の日々
アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。
もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」
隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。
「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」
三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。
ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。
妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。
本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。
随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる