62 / 90
18 意味深なセリフ
しおりを挟む
「一体これは何の騒ぎなんだ!!」
背後で大きな声が聞こえた。振り向くと、そこには目を見開いたアドニス様と……ベネットさんが立っていた。
「あ……アドニス様。御機嫌よう」
ビアンカ様は振り上げようとした手を下ろすと、笑顔でアドニス様に挨拶する。
「ビアンカ。今、君は一体フローネに何をしようとしていた?」
「い、いえ。別に何もしておりませんわ」
「左様でございますか? 私の目には、ビアンカ様がフローネ様に手を上げようとしていたように見えますが?」
ベネットさんが答える。
「ベネット! あ、あなた……!」
「そうだな、俺にもそう見えた」
「アドニス様!」
ビアンカ様の顔が青ざめる。
「ビアンカ、君はアデルの為に良かれと思ってこの部屋を用意したのかもしれないが……アデルの好きな色は水色だ。シュタイナー家で暮らしていた頃からずっと水色に囲まれて暮らしてきたんだ。第一、俺はアデルは水色が好きだと伝えておいたはずだが? 何故、ピンクの部屋を用意したんだ?」
「そ、それは……女の子は、みんなピンクが好きだと……私もそうですし……」
俯きながら答えるビアンカ様。
「自分の意見を強引に押し付けるな。アデルの気持ちを第一優先するべきだろう? ……部屋の模様替えはビアンカには関係ないことだ」
「っ! す、すみませんでした……」
ビアンカ様は項垂れ、去って行った。
「大丈夫だったか? アデル、フローネ」
心配そうな顔でアドニス様がこちらに近づいてきた。
「は、はい。私は大丈夫ですが……サラが……」
「え? サラが?」
アドニス様がサラを振り返った。
「わ、私なら大丈夫です!」
サラは首を振るも、よく見ると頬が赤く腫れている。
「……サラ、ビアンカ様にやられたのか?」
ベネットさんが静かに尋ねる。
「……はい。お部屋の内装をやめさせようとなさっていたので、お止めした時に……」
「そうだったのか……」
ベネットさんがサラの頭をそっと撫でた。
「サラ、ありがとう。ビアンカを止めてくれて」
「い、いいえ! 私はアデル様のメイドですので!」
「ありがとう、サラ」
私もサラにお礼を述べた。
「フローネさん……」
するとベネットさんがアドニス様に声をかけてきた。
「アドニス様。サラの頬の手当をしますので、半日お休みさせて頂けますか?」
「そうだな、そうしてくれ」
「で、ですが……」
アドニス様とベネットさんの会話にサラは驚きの表情を浮かべる。
「はい。アデルのお世話は私でも出来ますので、サラを半日お休みさせてあげて下さい」
私も二人の話に同意すると、サラはようやく納得してくれた。
「……ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、半日お休みさせていただきます」
「では、行こう。サラ」
「はい」
こうして、サラはベネットさんに連れられて去って行った。その様子を見届けると、アドニス様は内装業者の人たちに声をかけた。
「皆さん。お騒がせしました、作業を続けて下さい」
『はい!』
内装業者の人たちは返事をすると、再び作業の続きを始めた。
「アデル、驚いただろう?」
アドニス様が私の後ろで隠れていたアデルに声をかけた。
「う、うん……怖かった……」
「アデル……」
私はそっとアデルの頭を撫でた。
「フローネ、ありがとう。アデルをかばってくれて。これで決心がついたよ」
アドニス様が意味深な言葉を口にする。
「決心……ですか?」
「そうだよ、それじゃもう二人は部屋に戻っていいよ。次にこの部屋へ戻ってきた時は、きっとアデルの好きな水色になっているだろうから。
アドニス様は笑顔を向けると、その場を去って行った――
背後で大きな声が聞こえた。振り向くと、そこには目を見開いたアドニス様と……ベネットさんが立っていた。
「あ……アドニス様。御機嫌よう」
ビアンカ様は振り上げようとした手を下ろすと、笑顔でアドニス様に挨拶する。
「ビアンカ。今、君は一体フローネに何をしようとしていた?」
「い、いえ。別に何もしておりませんわ」
「左様でございますか? 私の目には、ビアンカ様がフローネ様に手を上げようとしていたように見えますが?」
ベネットさんが答える。
「ベネット! あ、あなた……!」
「そうだな、俺にもそう見えた」
「アドニス様!」
ビアンカ様の顔が青ざめる。
「ビアンカ、君はアデルの為に良かれと思ってこの部屋を用意したのかもしれないが……アデルの好きな色は水色だ。シュタイナー家で暮らしていた頃からずっと水色に囲まれて暮らしてきたんだ。第一、俺はアデルは水色が好きだと伝えておいたはずだが? 何故、ピンクの部屋を用意したんだ?」
「そ、それは……女の子は、みんなピンクが好きだと……私もそうですし……」
俯きながら答えるビアンカ様。
「自分の意見を強引に押し付けるな。アデルの気持ちを第一優先するべきだろう? ……部屋の模様替えはビアンカには関係ないことだ」
「っ! す、すみませんでした……」
ビアンカ様は項垂れ、去って行った。
「大丈夫だったか? アデル、フローネ」
心配そうな顔でアドニス様がこちらに近づいてきた。
「は、はい。私は大丈夫ですが……サラが……」
「え? サラが?」
アドニス様がサラを振り返った。
「わ、私なら大丈夫です!」
サラは首を振るも、よく見ると頬が赤く腫れている。
「……サラ、ビアンカ様にやられたのか?」
ベネットさんが静かに尋ねる。
「……はい。お部屋の内装をやめさせようとなさっていたので、お止めした時に……」
「そうだったのか……」
ベネットさんがサラの頭をそっと撫でた。
「サラ、ありがとう。ビアンカを止めてくれて」
「い、いいえ! 私はアデル様のメイドですので!」
「ありがとう、サラ」
私もサラにお礼を述べた。
「フローネさん……」
するとベネットさんがアドニス様に声をかけてきた。
「アドニス様。サラの頬の手当をしますので、半日お休みさせて頂けますか?」
「そうだな、そうしてくれ」
「で、ですが……」
アドニス様とベネットさんの会話にサラは驚きの表情を浮かべる。
「はい。アデルのお世話は私でも出来ますので、サラを半日お休みさせてあげて下さい」
私も二人の話に同意すると、サラはようやく納得してくれた。
「……ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、半日お休みさせていただきます」
「では、行こう。サラ」
「はい」
こうして、サラはベネットさんに連れられて去って行った。その様子を見届けると、アドニス様は内装業者の人たちに声をかけた。
「皆さん。お騒がせしました、作業を続けて下さい」
『はい!』
内装業者の人たちは返事をすると、再び作業の続きを始めた。
「アデル、驚いただろう?」
アドニス様が私の後ろで隠れていたアデルに声をかけた。
「う、うん……怖かった……」
「アデル……」
私はそっとアデルの頭を撫でた。
「フローネ、ありがとう。アデルをかばってくれて。これで決心がついたよ」
アドニス様が意味深な言葉を口にする。
「決心……ですか?」
「そうだよ、それじゃもう二人は部屋に戻っていいよ。次にこの部屋へ戻ってきた時は、きっとアデルの好きな水色になっているだろうから。
アドニス様は笑顔を向けると、その場を去って行った――
200
お気に入りに追加
3,382
あなたにおすすめの小説
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!

【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。
海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】
クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。
しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。
失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが――
これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。
※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました!
※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。

【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく
たまこ
恋愛
10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。
多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。
もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる