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2章 5 聞かされた真実
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1時間程、馬車は走り続け……やがてバーデン伯爵へ続く道に入った。
今馬車が走る周囲の風景は、枝葉がすっかり落ちてしまった木々に囲まれて物寂しい光景だが、春になればこの馬車道は美しい緑道へと変わる。
まだ父が元気で私が子供だった頃は、よくリリスと一緒にクリフの家に遊びに行っていた。
けれど父が病気になった頃から、家に呼ばれることも無くなり……すっかり足が遠のいてしまった。
それがまさか、こんな形でクリフの屋敷に行くことになるとは思いもしていなかった。
「もうすぐ、バーデン伯爵家の屋敷に着くのね……クリフのご両親はお元気にしていらっしゃるかしら」
会ったら、何と御挨拶したらいいだろう?
そんな事を考えていると、やがて馬車は大きく開け放たれた門をくぐり抜け……ついに屋敷の前で停車した。
「どうもありがとうございました」
馬車から荷物を下ろしてもらうと男性御者にお礼を述べた。
「お代はもう頂いているから大丈夫だよ。それじゃ、お嬢さん。しっかり奉公するんだよ」
「え? はい、分かりました」
奉公という言葉に戸惑いながらも返事をすると、御者は私に手を振り馬を走らせて去って行った。
「これから、どうすれば良いのかしら……」
屋敷の正面扉の前で立ち尽くしていても、迎えの人が出てくる気配も無い。
「待っていても仕方ないわね。自分から訪ねてみましょう」
扉の前にある呼び鈴の紐を引いて鳴らそうとした時――
「ちょっと! そんなところで何をしているの!?」
不意に背後から大きな声をかけられた。
「え!?」
驚いて振り向くと、ホワイトブリムを被ったメイド服姿の大柄の女性がこちらへ向かって近づいてくる。
「あ、あの……」
戸惑っていると、女性は私の近くまで来ると立ち止まった。
「あなたが今日から入って来た新人ね?」
「え? 新人……?」
一体何のことだろう? 理由が分からず首を傾げる。
「あなた、名前は?」
「フローネ・シュゼットですけど……」
「フローネ・シュゼット。やっぱりね、今日からこの屋敷で働く新人メイドじゃないの」
「え!? 新人……メイド……?」
その言葉に耳を疑う。
「あら? 何、その驚いた顔は。クリフ様から聞かされているのよ。今日からこの屋敷でフローネ・シュゼットという新人メイドが来るから、面倒を見てあげてくれって。私はこの屋敷のメイド長、オルガよ」
「ク……クリフが、そう言ったのですか? 今日から新人メイドのフローネ・シュゼットが来るって……?」
とても信じられなかった。クリフが私をここへ呼んだのが……メイドとして雇うためだったなんて。
するとオルガと名乗ったメイド長の顔が険しくなる。
「まぁ! この屋敷で働くメイドの癖にクリフ様を呼び捨てにするなんて図々しい娘だねぇ!? おまけに使用人の癖に、正面扉から入っていこうとするなんて。いいかい? 私達使用人は裏口を使用するんだよ。この扉をくぐれるのはバーデン家の皆様方に、お客様たちだけ。早く荷物を持ってこっちへ来なさい!」
「は、はい……」
ショックで何も考えられない。
言われるまま足元のボストンバッグを手に取ると、メイド長オルガの後をついていくしか無かった――
今馬車が走る周囲の風景は、枝葉がすっかり落ちてしまった木々に囲まれて物寂しい光景だが、春になればこの馬車道は美しい緑道へと変わる。
まだ父が元気で私が子供だった頃は、よくリリスと一緒にクリフの家に遊びに行っていた。
けれど父が病気になった頃から、家に呼ばれることも無くなり……すっかり足が遠のいてしまった。
それがまさか、こんな形でクリフの屋敷に行くことになるとは思いもしていなかった。
「もうすぐ、バーデン伯爵家の屋敷に着くのね……クリフのご両親はお元気にしていらっしゃるかしら」
会ったら、何と御挨拶したらいいだろう?
そんな事を考えていると、やがて馬車は大きく開け放たれた門をくぐり抜け……ついに屋敷の前で停車した。
「どうもありがとうございました」
馬車から荷物を下ろしてもらうと男性御者にお礼を述べた。
「お代はもう頂いているから大丈夫だよ。それじゃ、お嬢さん。しっかり奉公するんだよ」
「え? はい、分かりました」
奉公という言葉に戸惑いながらも返事をすると、御者は私に手を振り馬を走らせて去って行った。
「これから、どうすれば良いのかしら……」
屋敷の正面扉の前で立ち尽くしていても、迎えの人が出てくる気配も無い。
「待っていても仕方ないわね。自分から訪ねてみましょう」
扉の前にある呼び鈴の紐を引いて鳴らそうとした時――
「ちょっと! そんなところで何をしているの!?」
不意に背後から大きな声をかけられた。
「え!?」
驚いて振り向くと、ホワイトブリムを被ったメイド服姿の大柄の女性がこちらへ向かって近づいてくる。
「あ、あの……」
戸惑っていると、女性は私の近くまで来ると立ち止まった。
「あなたが今日から入って来た新人ね?」
「え? 新人……?」
一体何のことだろう? 理由が分からず首を傾げる。
「あなた、名前は?」
「フローネ・シュゼットですけど……」
「フローネ・シュゼット。やっぱりね、今日からこの屋敷で働く新人メイドじゃないの」
「え!? 新人……メイド……?」
その言葉に耳を疑う。
「あら? 何、その驚いた顔は。クリフ様から聞かされているのよ。今日からこの屋敷でフローネ・シュゼットという新人メイドが来るから、面倒を見てあげてくれって。私はこの屋敷のメイド長、オルガよ」
「ク……クリフが、そう言ったのですか? 今日から新人メイドのフローネ・シュゼットが来るって……?」
とても信じられなかった。クリフが私をここへ呼んだのが……メイドとして雇うためだったなんて。
するとオルガと名乗ったメイド長の顔が険しくなる。
「まぁ! この屋敷で働くメイドの癖にクリフ様を呼び捨てにするなんて図々しい娘だねぇ!? おまけに使用人の癖に、正面扉から入っていこうとするなんて。いいかい? 私達使用人は裏口を使用するんだよ。この扉をくぐれるのはバーデン家の皆様方に、お客様たちだけ。早く荷物を持ってこっちへ来なさい!」
「は、はい……」
ショックで何も考えられない。
言われるまま足元のボストンバッグを手に取ると、メイド長オルガの後をついていくしか無かった――
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