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10話
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声の聞こえた方向へ顔を向ければ、子豚……もとい、ブライが真っ赤な顔でこちらを指さしてプルプル震えて立っていた。
彼の後ろには2人の従者らしき男性がいる。きっと動物園好きのブライに付き添って来たのだろう。
「ねぇ、彼は誰なの?」
耳元でサイラスが尋ねてくる。
「あぁ、彼はね私のストーカーなの」
私もサイラスの耳元で囁き……彼の耳が真っ赤に染まる。
「ス……ストーカー……? ストーカーって何?」
「それはね、相手の気持ちを考えずにつきまとってくる人の事を言うのよ」
「え!? そうなの? それはイヤだね」
するとブライがイライラしながら近づいてきた。
「こら! 勝手にくっつくなよ!」
「近づかないで頂戴!! 私は今、彼とデート中なのだから!」
ピシャリと言ってのけ、サイラスの腕に自分の腕を絡める。
「そうだよ。僕たちは恋人同士なんだから邪魔をしないでくれないか?」
「な、何だと~!! お、俺を誰だと思ってるんだよ!」
「ええ。良く分かってるわ。あんたはブライ・シード子爵。子爵家のくせに、伯爵家の私に婚約を迫ってくる最低な男よ」
大体、ブライは私よりも身分が低い貴族のくせに横柄な態度をとることが許せない。若さゆえ……と言われても我慢の限界だ。
「だ、だったらそっちの男はどうなんだよ! 俺よりも貧乏そうな服を着ているじゃないか! どうせ俺より身分が下に決まってる! どうなんだよ!」
シード家は子爵家だが資産はある。成金趣味たっぷりの服を着たブライはサイラスを指さした。
「僕は侯爵家だよ。でも別にそれがすごいことだとは思わないけど」
「え!? 侯爵家だったの!?」
それは驚きだ。まさかサイラスがそんなに身分が高いとは思わなかった。しかも余裕の発言だ。
「な、何!? こ、侯爵家……? そ、それじゃ……ステファニーが今まで婚約を嫌がっていたのは……」
明らかにブライが震えている。
「ええ、そうよ。彼がいるからに決まっているでしょう? 何と言っても私達は恋人同士なんだもの」
「そ、そ、そんなぁ……ステファニー……」
あ、いやだ。ブライが涙目になってる。
「うわぁああああっ!!」
ブライは余程ショックだったのか、くるりと背を向けると走り去っていた。
「あ! ブライ様!」
「お待ち下さい!」
そしてその後を追う2人の従者。
「やれやれ……やっと静かになったわね」
再びジュースを飲み始めるとサイラスが尋ねてきた。
「ねぇ、ひょっとして動物園に来たのって……」
「あら、分かった? ブライはね、3度の食事の次に動物園が好きなの。週末は暇さえあれば動物園に来ているのよ。本当は会いたくなかったけど、やむを得ないわ。でもこれで私達のことを恋人同士と思ったはずだから婚約を申し出てくることはなくなるはずよ」
「え……それじゃ、ひょっとして今日のデートは終わりになるのかな?」
サイラスが何処か寂しそうな様子を見せる。
「まさか。だって今日は他にも色々計画を立てたのだから、終わりにするはずないでしょう。さて、そろそろ次の場所へ行きましょうよ」
「次は何処へ行くの?」
「フフフ……次は美術館よ! そこで今日はイベントがあるんだから」
私はにっこり笑った。
――その後。
私達は美術館で写生大会に参加したり、食事をしたり、公園に遊びに行ったり……と恋人らしい1日を過ごしたのだった――
****
「今日は、ありがとう! 本当に楽しかったよ!」
夕方になり、サイラスを屋敷の前まで送り届けると彼は嬉しそうに笑った。
「はい、これあげるわ」
私は自分が描いた絵をサイラスに渡した。
「あ……これは」
サイラスが絵を見て嬉しそうに笑う。
「そう、あなたを描いたの? 上手かしら?」
「うん! とっても上手だよ! まるで画家みたいだ!」
「それは当然でしょう? だって私は……」
そこで私は危うく自分の秘密を口にしそうになった。
「え? 私は……何?」
「いいえ、何でもないわ。それじゃ、私は帰るわね」
「ま、待って!! ステファニーッ!!」
馬車に乗り込もうとしたところを、サイラスが突然腕を掴んで引き止めてきた――
彼の後ろには2人の従者らしき男性がいる。きっと動物園好きのブライに付き添って来たのだろう。
「ねぇ、彼は誰なの?」
耳元でサイラスが尋ねてくる。
「あぁ、彼はね私のストーカーなの」
私もサイラスの耳元で囁き……彼の耳が真っ赤に染まる。
「ス……ストーカー……? ストーカーって何?」
「それはね、相手の気持ちを考えずにつきまとってくる人の事を言うのよ」
「え!? そうなの? それはイヤだね」
するとブライがイライラしながら近づいてきた。
「こら! 勝手にくっつくなよ!」
「近づかないで頂戴!! 私は今、彼とデート中なのだから!」
ピシャリと言ってのけ、サイラスの腕に自分の腕を絡める。
「そうだよ。僕たちは恋人同士なんだから邪魔をしないでくれないか?」
「な、何だと~!! お、俺を誰だと思ってるんだよ!」
「ええ。良く分かってるわ。あんたはブライ・シード子爵。子爵家のくせに、伯爵家の私に婚約を迫ってくる最低な男よ」
大体、ブライは私よりも身分が低い貴族のくせに横柄な態度をとることが許せない。若さゆえ……と言われても我慢の限界だ。
「だ、だったらそっちの男はどうなんだよ! 俺よりも貧乏そうな服を着ているじゃないか! どうせ俺より身分が下に決まってる! どうなんだよ!」
シード家は子爵家だが資産はある。成金趣味たっぷりの服を着たブライはサイラスを指さした。
「僕は侯爵家だよ。でも別にそれがすごいことだとは思わないけど」
「え!? 侯爵家だったの!?」
それは驚きだ。まさかサイラスがそんなに身分が高いとは思わなかった。しかも余裕の発言だ。
「な、何!? こ、侯爵家……? そ、それじゃ……ステファニーが今まで婚約を嫌がっていたのは……」
明らかにブライが震えている。
「ええ、そうよ。彼がいるからに決まっているでしょう? 何と言っても私達は恋人同士なんだもの」
「そ、そ、そんなぁ……ステファニー……」
あ、いやだ。ブライが涙目になってる。
「うわぁああああっ!!」
ブライは余程ショックだったのか、くるりと背を向けると走り去っていた。
「あ! ブライ様!」
「お待ち下さい!」
そしてその後を追う2人の従者。
「やれやれ……やっと静かになったわね」
再びジュースを飲み始めるとサイラスが尋ねてきた。
「ねぇ、ひょっとして動物園に来たのって……」
「あら、分かった? ブライはね、3度の食事の次に動物園が好きなの。週末は暇さえあれば動物園に来ているのよ。本当は会いたくなかったけど、やむを得ないわ。でもこれで私達のことを恋人同士と思ったはずだから婚約を申し出てくることはなくなるはずよ」
「え……それじゃ、ひょっとして今日のデートは終わりになるのかな?」
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「まさか。だって今日は他にも色々計画を立てたのだから、終わりにするはずないでしょう。さて、そろそろ次の場所へ行きましょうよ」
「次は何処へ行くの?」
「フフフ……次は美術館よ! そこで今日はイベントがあるんだから」
私はにっこり笑った。
――その後。
私達は美術館で写生大会に参加したり、食事をしたり、公園に遊びに行ったり……と恋人らしい1日を過ごしたのだった――
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「今日は、ありがとう! 本当に楽しかったよ!」
夕方になり、サイラスを屋敷の前まで送り届けると彼は嬉しそうに笑った。
「はい、これあげるわ」
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「そう、あなたを描いたの? 上手かしら?」
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「それは当然でしょう? だって私は……」
そこで私は危うく自分の秘密を口にしそうになった。
「え? 私は……何?」
「いいえ、何でもないわ。それじゃ、私は帰るわね」
「ま、待って!! ステファニーッ!!」
馬車に乗り込もうとしたところを、サイラスが突然腕を掴んで引き止めてきた――
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