7 / 12
7話
しおりを挟む
「そ、そんな……デートなんて……」
サイラスは真っ赤になって私をチラチラ見る。
「恋人同士はデートをするのは当然でしょう? そうやって2人の関係を深めていくのだから。それとも、シビルと交際する?」
「ええ!? そ、それはイヤだな……。僕、どうしても彼女は苦手なんだよ」
「だけど、私なら良いというわけね?」
「……うん」
ますます顔を赤らめて頷くサイラス。
「だったら、明日はデートをするわよ。というわけで、迎えに行くからお屋敷の場所を教えて頂戴」
「わ、分かったよ……」
こうして半ば強引に明日のデートの約束を取り付けた私は、迎えの馬車に乗って帰宅した――
****
「ただいま、帰りました。お母様」
帰宅した私は、真っ先に母の元へ向った。
「お帰りなさい、私の可愛い天使」
レース編みの手を止めた母が笑顔で私を迎え入れる。私の髪も、瞳も全て母譲りだ。
母は若く美しく、とても子持ちの女性には見えない。
子どものように無邪気な笑顔を向けてくる母に、私はため息をついた。
「やめて下さい、お母様。天使と呼ばれると恥ずかしいです」
「あら、どうして? だってあなたは本当に天使みたいに愛らしいじゃないの」
母は私が学園内で悪女とか、『クールビューティ』と呼ばれていることを知らないのだろう。
「それよりもお母様、明日出かけることになりましたので馬車を出す許可を下さい」
「え!? 出かけるですって? まぁ……どうしましょう」
母の顔に困惑の表情が浮かぶ。その様子を見て、いやな予感を抱いた。
「お母様……もしかして……明日、ブライ・シード様が来るのですか……?」
ブライ・シードとは、シード子爵家の長男で、つい最近ティーパーティーで知り合った令息だ。彼はどうやら私に一目惚れしてしまったらしく、図々しくも度々私を訪ねに来ていたのだった。
そして私は彼が大嫌いなのである。色白な肌に、小太りで脂ぎった肌のブライをどうして受け入れることが出来るだろう。
しかも使用人たちの噂話では、近いうちにブライは私に婚約を申し出てくるのではないだろうか……等と囁かれている。
つまり、私にとってもサイラスとの仲が噂される方が都合が良いのだ。
「ええ、そうなのよ。でも困ったわねぇ……明日、あなたの年の数だけバラの花を持ってくると伝言があったのよ」
ため息をつく母。
「お母様、何も困る必要はありません! 絶対にお断りして下さい! 明日は、どうしても出掛けなければならない用事があるのですから。それでは部屋に戻らせて頂きます」
「え? ちょ、ちょっとステファニーッ!?」
母の制止する声も聞かず、私は部屋を飛び出して自室へ向った。
冗談じゃない! こうなったら何としても明日、サイラスとのデートを成功させて周りから見ても、違和感ない恋人同士にならなければ!
――バンッ!
自室の扉を勢いよく閉めると、すぐに机に向った。
「見てなさいよ、サイラス……伊達に何冊もの恋愛小説を読んできたわけじゃないわ。完璧なデートブランを立てて、誰からも恋人同士に見られる関係を築き上げてみせるのだから……!」
そして、この日。
私は寝る直前まで、明日のデートプランの計画を練り続けるのだった――
サイラスは真っ赤になって私をチラチラ見る。
「恋人同士はデートをするのは当然でしょう? そうやって2人の関係を深めていくのだから。それとも、シビルと交際する?」
「ええ!? そ、それはイヤだな……。僕、どうしても彼女は苦手なんだよ」
「だけど、私なら良いというわけね?」
「……うん」
ますます顔を赤らめて頷くサイラス。
「だったら、明日はデートをするわよ。というわけで、迎えに行くからお屋敷の場所を教えて頂戴」
「わ、分かったよ……」
こうして半ば強引に明日のデートの約束を取り付けた私は、迎えの馬車に乗って帰宅した――
****
「ただいま、帰りました。お母様」
帰宅した私は、真っ先に母の元へ向った。
「お帰りなさい、私の可愛い天使」
レース編みの手を止めた母が笑顔で私を迎え入れる。私の髪も、瞳も全て母譲りだ。
母は若く美しく、とても子持ちの女性には見えない。
子どものように無邪気な笑顔を向けてくる母に、私はため息をついた。
「やめて下さい、お母様。天使と呼ばれると恥ずかしいです」
「あら、どうして? だってあなたは本当に天使みたいに愛らしいじゃないの」
母は私が学園内で悪女とか、『クールビューティ』と呼ばれていることを知らないのだろう。
「それよりもお母様、明日出かけることになりましたので馬車を出す許可を下さい」
「え!? 出かけるですって? まぁ……どうしましょう」
母の顔に困惑の表情が浮かぶ。その様子を見て、いやな予感を抱いた。
「お母様……もしかして……明日、ブライ・シード様が来るのですか……?」
ブライ・シードとは、シード子爵家の長男で、つい最近ティーパーティーで知り合った令息だ。彼はどうやら私に一目惚れしてしまったらしく、図々しくも度々私を訪ねに来ていたのだった。
そして私は彼が大嫌いなのである。色白な肌に、小太りで脂ぎった肌のブライをどうして受け入れることが出来るだろう。
しかも使用人たちの噂話では、近いうちにブライは私に婚約を申し出てくるのではないだろうか……等と囁かれている。
つまり、私にとってもサイラスとの仲が噂される方が都合が良いのだ。
「ええ、そうなのよ。でも困ったわねぇ……明日、あなたの年の数だけバラの花を持ってくると伝言があったのよ」
ため息をつく母。
「お母様、何も困る必要はありません! 絶対にお断りして下さい! 明日は、どうしても出掛けなければならない用事があるのですから。それでは部屋に戻らせて頂きます」
「え? ちょ、ちょっとステファニーッ!?」
母の制止する声も聞かず、私は部屋を飛び出して自室へ向った。
冗談じゃない! こうなったら何としても明日、サイラスとのデートを成功させて周りから見ても、違和感ない恋人同士にならなければ!
――バンッ!
自室の扉を勢いよく閉めると、すぐに机に向った。
「見てなさいよ、サイラス……伊達に何冊もの恋愛小説を読んできたわけじゃないわ。完璧なデートブランを立てて、誰からも恋人同士に見られる関係を築き上げてみせるのだから……!」
そして、この日。
私は寝る直前まで、明日のデートプランの計画を練り続けるのだった――
392
お気に入りに追加
680
あなたにおすすめの小説
【完結】そんなに側妃を愛しているなら邪魔者のわたしは消えることにします。
たろ
恋愛
わたしの愛する人の隣には、わたしではない人がいる。………彼の横で彼を見て微笑んでいた。
わたしはそれを遠くからそっと見て、視線を逸らした。
ううん、もう見るのも嫌だった。
結婚して1年を過ぎた。
政略結婚でも、結婚してしまえばお互い寄り添い大事にして暮らしていけるだろうと思っていた。
なのに彼は婚約してからも結婚してからもわたしを見ない。
見ようとしない。
わたしたち夫婦には子どもが出来なかった。
義両親からの期待というプレッシャーにわたしは心が折れそうになった。
わたしは彼の姿を見るのも嫌で彼との時間を拒否するようになってしまった。
そして彼は側室を迎えた。
拗れた殿下が妻のオリエを愛する話です。
ただそれがオリエに伝わることは……
とても設定はゆるいお話です。
短編から長編へ変更しました。
すみません
散財系悪役令嬢に転生したので、パーッとお金を使って断罪されるつもりだったのに、周囲の様子がおかしい
西園寺理央
恋愛
公爵令嬢であるスカーレットは、ある日、前世の記憶を思い出し、散財し過ぎて、ルーカス王子と婚約破棄の上、断罪される悪役令嬢に転生したことに気が付いた。未来を受け入れ、散財を続けるスカーレットだが、『あれ、何だか周囲の様子がおかしい…?』となる話。
◆全三話。全方位から愛情を受ける平和な感じのコメディです!
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。
しあ
恋愛
目が覚めるとお腹が痛い!
声が出せないくらいの激痛。
この痛み、覚えがある…!
「ルビア様、赤ちゃんに酸素を送るためにゆっくり呼吸をしてください!もうすぐですよ!」
やっぱり!
忘れてたけど、お産の痛みだ!
だけどどうして…?
私はもう子供が産めないからだだったのに…。
そんなことより、赤ちゃんを無事に産まないと!
指示に従ってやっと生まれた赤ちゃんはすごく可愛い。だけど、どう見ても日本人じゃない。
どうやら私は、わがままで嫌われ者の皇后に憑依転生したようです。だけど、赤ちゃんをお世話するのに忙しいので、構ってもらわなくて結構です。
なのに、どうして私を嫌ってる皇帝が部屋に訪れてくるんですか!?しかも毎回イラッとするとこを言ってくるし…。
本当になんなの!?あなたに構っている時間なんてないんですけど!
※視点がちょくちょく変わります。
ガバガバ設定、なんちゃって知識で書いてます。
エールを送って下さりありがとうございました!
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる