7 / 13
第6話 悪役令嬢の交渉
しおりを挟む
セリーヌはまさか、私から二人きりで話がしたいと言われるとは思っていなかったらしく驚きの表情を浮かべた。
「駄目だ!お前のような悪女と愛しいセリーヌを二人きりで話をさせるわけにはいかない!」
反対するのは当然アイザック。
「アイザック様……」
セリーヌは助けを求めるか如く、アイザックにしなだれかかる。
「ほら見ろ。セリーヌはこんなに怖がっているだろう?よしよし……可愛そうに。大丈夫だ、絶対にあんな女と二人きりにはさせないからな」
アイザックはセリーヌの肩を抱き寄せ、頭を撫でる。ここで本物のアンジェリカなら嫉妬に狂って、声を荒げたかもしれないが……。
「おい、見ろよ。平然としてるぞ」
「あれほどアイザック様に執着していたのに……」
「何だか様子がおかしいな……」
周囲で見ている学生たちのヒソヒソ声が私の耳にまで届いてくる。
私はそんなギャラリーたちを気に掛けることなく、セリーヌとアイザックに声を掛けた。
「大丈夫です、ご安心下さい。何もセリーヌと二人きりにさせて欲しいとは言いません。ただ、二人だけで話がしたいだけです。何なら私が手出しできないように、見張って頂いても構いません。ただし、会話が聞こえない距離まで下がって頂きたいだけです」
「何故、お前とセリーヌだけで話をさせなければならないのだ?」
アイザックは私を睨みつけている。
「アイザック様、私怖いです‥…」
セリーヌは私に何かされるとでも思っているのだろうか?怯えた様子でアイザックにしがみついている。
けれど、その様子から私は確信した。
間違いない。セリーヌは私と同様転生者だ。そして……恐らくここがゲームの世界だと知っている。
本物のセリーヌなら、どんなにアンジェリカから嫌がらせを受けても彼女を怖がる素振りなど一度も見せたことが無いからだ。
とにかく、今はセリーヌが転生者かどうかを確認した上で二人きりで話をしなければ……私はこのまま断罪されてしまう。それだけは何としても死守しなければ!
そこで私は最終手段に打って出ることにした。
「セリーヌ。聞きたいことがあるのだけど……どうやらトゥルーエンドまで辿り着くことが出来たようね?」
「え⁈な、何故そのことを……!」
途端にセリーヌが驚愕の表情を浮かべる。
やはりそうだった。私の思った通り、セリーヌは私と同様転生者だったのだ
実はこのゲーム『ムーンライトの騎士』はとても難易度の高い乙女ゲームであり、少しでも選択肢を謝ったりミニゲームで失敗すればトゥルーエンドを見ることは出来ない。
そしてそのトゥルーエンドとは、今まさにこの場面。
ヒロインであるセリーヌがアイザックと結ばれ、アンジェリカが『ルーラル』に追放されてしまうことなのだから。
「何だ?そのトゥルーエンドとは?」
アイザックが尋ねて来た。当然攻略対象であるバートやクレイブも不思議そうに首を傾げている。
「さぁ?そこにいるセリーヌは御存知のようですけど?」
私は肩をすくめた。すると……。
「アンジェリカ様!どうか私と二人きりで話をさせて下さい!」
セリーヌが慌てた様子で手を上げてきた――。
「駄目だ!お前のような悪女と愛しいセリーヌを二人きりで話をさせるわけにはいかない!」
反対するのは当然アイザック。
「アイザック様……」
セリーヌは助けを求めるか如く、アイザックにしなだれかかる。
「ほら見ろ。セリーヌはこんなに怖がっているだろう?よしよし……可愛そうに。大丈夫だ、絶対にあんな女と二人きりにはさせないからな」
アイザックはセリーヌの肩を抱き寄せ、頭を撫でる。ここで本物のアンジェリカなら嫉妬に狂って、声を荒げたかもしれないが……。
「おい、見ろよ。平然としてるぞ」
「あれほどアイザック様に執着していたのに……」
「何だか様子がおかしいな……」
周囲で見ている学生たちのヒソヒソ声が私の耳にまで届いてくる。
私はそんなギャラリーたちを気に掛けることなく、セリーヌとアイザックに声を掛けた。
「大丈夫です、ご安心下さい。何もセリーヌと二人きりにさせて欲しいとは言いません。ただ、二人だけで話がしたいだけです。何なら私が手出しできないように、見張って頂いても構いません。ただし、会話が聞こえない距離まで下がって頂きたいだけです」
「何故、お前とセリーヌだけで話をさせなければならないのだ?」
アイザックは私を睨みつけている。
「アイザック様、私怖いです‥…」
セリーヌは私に何かされるとでも思っているのだろうか?怯えた様子でアイザックにしがみついている。
けれど、その様子から私は確信した。
間違いない。セリーヌは私と同様転生者だ。そして……恐らくここがゲームの世界だと知っている。
本物のセリーヌなら、どんなにアンジェリカから嫌がらせを受けても彼女を怖がる素振りなど一度も見せたことが無いからだ。
とにかく、今はセリーヌが転生者かどうかを確認した上で二人きりで話をしなければ……私はこのまま断罪されてしまう。それだけは何としても死守しなければ!
そこで私は最終手段に打って出ることにした。
「セリーヌ。聞きたいことがあるのだけど……どうやらトゥルーエンドまで辿り着くことが出来たようね?」
「え⁈な、何故そのことを……!」
途端にセリーヌが驚愕の表情を浮かべる。
やはりそうだった。私の思った通り、セリーヌは私と同様転生者だったのだ
実はこのゲーム『ムーンライトの騎士』はとても難易度の高い乙女ゲームであり、少しでも選択肢を謝ったりミニゲームで失敗すればトゥルーエンドを見ることは出来ない。
そしてそのトゥルーエンドとは、今まさにこの場面。
ヒロインであるセリーヌがアイザックと結ばれ、アンジェリカが『ルーラル』に追放されてしまうことなのだから。
「何だ?そのトゥルーエンドとは?」
アイザックが尋ねて来た。当然攻略対象であるバートやクレイブも不思議そうに首を傾げている。
「さぁ?そこにいるセリーヌは御存知のようですけど?」
私は肩をすくめた。すると……。
「アンジェリカ様!どうか私と二人きりで話をさせて下さい!」
セリーヌが慌てた様子で手を上げてきた――。
43
お気に入りに追加
346
あなたにおすすめの小説
【改稿版】婚約破棄は私から
どくりんご
恋愛
ある日、婚約者である殿下が妹へ愛を語っている所を目撃したニナ。ここが乙女ゲームの世界であり、自分が悪役令嬢、妹がヒロインだということを知っていたけれど、好きな人が妹に愛を語る所を見ていると流石にショックを受けた。
乙女ゲームである死亡エンドは絶対に嫌だし、殿下から婚約破棄を告げられるのも嫌だ。そんな辛いことは耐えられない!
婚約破棄は私から!
※大幅な修正が入っています。登場人物の立ち位置変更など。
◆3/20 恋愛ランキング、人気ランキング7位
◆3/20 HOT6位
短編&拙い私の作品でここまでいけるなんて…!読んでくれた皆さん、感謝感激雨あられです〜!!(´;ω;`)
完 さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。
水鳥楓椛
恋愛
わたくし、エリザベート・ラ・ツェリーナは今日愛しの婚約者である王太子レオンハルト・フォン・アイゼンハーツに婚約破棄をされる。
なんでそんなことが分かるかって?
それはわたくしに前世の記憶があるから。
婚約破棄されるって分かっているならば逃げればいいって思うでしょう?
でも、わたくしは愛しの婚約者さまの役に立ちたい。
だから、どんなに惨めなめに遭うとしても、わたくしは彼の前に立つ。
さぁ、悪役令嬢のお役目の時間よ。
【完結】どうやら、乙女ゲームのヒロインに転生したようなので。逆ざまぁが多いい、昨今。慎ましく生きて行こうと思います。
❄️冬は つとめて
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生した私。昨今、悪役令嬢人気で、逆ざまぁが多いいので。慎ましく、生きて行こうと思います。
作者から(あれ、何でこうなった? )
【コミカライズ】今夜中に婚約破棄してもらわナイト
待鳥園子
恋愛
気がつけば私、悪役令嬢に転生してしまったらしい。
不幸なことに記憶を取り戻したのが、なんと断罪不可避の婚約破棄される予定の、その日の朝だった!
けど、後日談に書かれていた悪役令嬢の末路は珍しくぬるい。都会好きで派手好きな彼女はヒロインをいじめた罰として、都会を離れて静かな田舎で暮らすことになるだけ。
前世から筋金入りの陰キャな私は、華やかな社交界なんか興味ないし、のんびり田舎暮らしも悪くない。罰でもなく、単なるご褒美。文句など一言も言わずに、潔く婚約破棄されましょう。
……えっ! ヒロインも探しているし、私の婚約者会場に不在なんだけど……私と婚約破棄する予定の王子様、どこに行ったのか、誰か知りませんか?!
♡コミカライズされることになりました。詳細は追って発表いたします。
婚約破棄をいたしましょう。
見丘ユタ
恋愛
悪役令嬢である侯爵令嬢、コーデリアに転生したと気づいた主人公は、卒業パーティーの婚約破棄を回避するために奔走する。
しかし無慈悲にも卒業パーティーの最中、婚約者の王太子、テリーに呼び出されてしまうのだった。
悪役令嬢は婚約破棄したいのに王子から溺愛されています。
白雪みなと
恋愛
この世界は乙女ゲームであると気づいた悪役令嬢ポジションのクリスタル・フェアリィ。
筋書き通りにやらないとどうなるか分かったもんじゃない。それに、貴族社会で生きていける気もしない。
ということで、悪役令嬢として候補に嫌われ、国外追放されるよう頑張るのだったが……。
王子さま、なぜ私を溺愛してらっしゃるのですか?
強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します
天宮有
恋愛
私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。
その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。
シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。
その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。
それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。
私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。
婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる