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18-2 気付いた気持ち

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 シュミットは薬品庫に来ていた。

 『ウルス』にはエルウィンを含め、アイゼンシュタットの手練れ達が総勢81名集結している。それなのに危機を知らせるのろしが上がっていると言う事は誰か怪我人が出たのだろうと考えたからであった。

 シュミットは片っ端から麻袋に包帯や消毒薬、薬等を入れていく。さらには常備された様々な解毒薬も詰め込んだ。

「これだけでは不十分かもしれないが…‥じっくり選んでいる時間は無いな」

 かなりの重量となった麻袋を肩に担ぎ上げるとシュミットは急いで薬品庫を飛び出し、厩舎へと駆け出した……。


 **

 城門前で防寒用マントを身にまとい、全ての準備を終えたシュミットは麻袋を取り付けた馬にまたがり、手綱を握りしめた。

「シュミット、1人で大丈夫か?」

 見送りに来ていたエデルガルトが馬上のシュミットに声を掛けた。

「ええ。大丈夫です。これでも剣に銃の心得もありますから」

 シュミットは腰に差した拳銃に触れた。

「うむ、そうであったな。お前は射撃の名手でもあったな。なら頼んだぞ!」

「はい!お任せ下さい!行くぞ!」


 シュミットの掛け声と同時に彼を乗せた馬は『ウルス』の村を目指して、駆け出した。

「エルウィン様……!アリアドネ様……!今、参ります!」

 シュミットは手綱を強く握りしめ、『ウルス』の村を目指した。



「シュミット、頼んだぞ」
 
 エデルガルトは小さくなっていくシュミットの後姿に声を掛けるのだった――。



****


「うぐううううううーっ!!」

 宿屋では猿轡を噛まされ、4人の騎士達に押さえつけられたエルウィンが激痛で呻いていた。

「頼みます!!大将!!耐えて下さいっ!!」

 スティーブは暴れるエルウィンを抑えつけながらゆっくりと背中に刺さった矢を抜いている。

「ムーッ!!」

 痛みでもがくエルウィンはやがて、完全に意識を失ってしまった。

「よし!!今の内だ!!抜いた途端血が噴き出さないようにしっかり押さえて置け!!」

「「「「はい!!!!」」」」

スティーブの言葉に騎士達は声を揃えて返事をした――。



**

 エルウィンが激痛で叫ぶ声は宿屋の外で待機していたアリアドネ達の耳にも届いていた。

「エルウィン様……」
「怖いよぉ~」

 今まで一度も聞いたことの無いエルウィンの叫び声にすっかりミカエルとウリエルは怯え、アリアドネにしがみついていた。
 そして他の騎士達も沈痛な面持ちで宿屋を見つめている。

「リア……エルウィン様…‥死んだりしないよね……?」

 涙目になってウリエルが問いかけて来る。

「ば、馬鹿っ!!エルウィン様は強いんだ…‥し、死ぬはずないじゃないかっ!!」

 泣き顔のミカエルがウリエルを𠮟りつける。

「ええ、そうです。ミカエル様の言う通りです。エルウィン様は……っ。と、とても強いお方です……こ、こんなところで死んだりしません……!」

 声を詰まらせながらアリアドネは2人を抱きしめた。

(そうよ……。まだ悲鳴が聞こえると言うことはエルウィン様が生きている証。お願いです……。エルウィン様。どうか、どうか死なないで下さい。私は貴方のことが‥‥好きなんです……!)


 アリアドネは、ようやくエルウィンへの想いを自覚するのだった――。

 



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