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17-19 エルウィンの復活
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「いいかい?ゼロ。この手紙をエルウィン様に必ず届けるんだよ?」
ミカエルは伝書鳩の右足に手紙を巻き付けると頭を撫でた。
「クゥルルルル……」
ゼロと呼ばれたハトはすぐにバサリと羽を広げて空にふわりと舞い上がると、アイゼンシュタット城へ向けて飛んで行った。
飛び去って行く鳩を見送りながらマティアスがミカエルに話しかけた。
「それにしても知りませんでした。まさかミカエル様とウリエル様が伝書鳩を飼いならしていたとは」
するとミカエルは首を振った。
「違うよ、飼いならしているんじゃないよ。ゼロは僕とウリエルの友達なんだよ?」
「うん、そうだよ!」
ウリエルが頷く。
「成程……お友達、ですか。それではお友達が城の仲間を連れて戻ってくるまでの間、我々だけで出来ることをしましょう」
マティアスの言葉に、3人は頷いた――。
****
その頃、アイゼンシュタット城では何とか笑いを収めて来たシュミットとエデルガルトがエルウィンを説得していた。
「とにかく、アリアドネ様は誤解されていただけですよ。クビにされたと思い込んでしまったから出て行かれたのですよ」
「そうですとも、シュミットの言う通りですぞ?アリアドネ様だってエルウィン様のことを憎からず思っていたはずです。だからこそ、ショックを受けて誰にも知られないように出て行かれたのです。迎えに行けば、きっと戻られますとも」
「そうです!エルウィン様。今にスティーブがアリアドネ様を連れて城に戻ってくるはずですから!」
シュミットとエデルガルトは必死になってエルウィンを説得する。
何しろ、越冬期間が開けた今……いつまたこの国を狙って、敵が襲ってくるか分からないのだ。
「戦場の暴君」と呼ばれるエルウィンがまるで抜け殻のような状態になってしまっていては非常に困るのであった。
しかしエルウィンは机の上に頭をつけたまま、ボソリと言う。
「それは単なる憶測だろう……?アリアドネは血の気が多くて、気の利かない俺が嫌になって出て行ったに違いない……」
「エルウィン様……」
「しっかりなさって下さい!貴方はこの国を守る『辺境伯』なのですぞ!」
その時――。
コン!コン!
窓を叩く音が執務室に響き渡った。
「あ!伝書鳩ではありませんか!」
シュミットが窓を開けると、ミカエルの放った伝書鳩が室内に飛び込んできた。そしてエルウィンの伏している机の上に降りると「クルルル」と喉を鳴らす。
「何やら手紙が巻き付けてあるようだ」
「手紙……?」
エデルガルトの言葉に反応したエルウィンは少しだけ顔を上げた。
「拝読致します」
シュミットは鳩の足から手紙を取ると、広げて目を通し……驚きの声を上げた。
「た、大変です!アリアドネ様の捜索に向かったスティーブ達が……どうやら見知らぬ男たちによって、眠らされた上に縛り上げられたようです!」
「何だって?!それは大変だ!場所はどこだ?!」
エデルガルトはシュミットに尋ねた。
「宿場村『ウルス』です!エルウィン様!今すぐ救出に向かいましょう!」
「ああ……そうだな。それでは師匠。指揮をとって『ウルス』へ向かって下さい。悪いですが、今は剣を持つ気にもなれなくて‥‥‥」
エルウィンの発言に目を見開くシュミットとエデルガルト。
「何を言っているのですか!スティーブ達が捕まったのですよ?!」
シュミットが血相を変えてエルウィンに訴える。
「ええ、そうです!『ウルス』と言えば、『アイデン』の一番外れにある最後の宿場村です。恐らくスティーブ達はアリアドネ様の行方をそこまで追っていたのでしょう。そして『ウルス』で見知らぬ男たちに捕まった…‥‥つまり、アリアドネ様も捕らえられている可能性があると言う事ですぞ!」
「な、何だってっ?!」
エデルガルトの言葉にエルウィンは真っ青になって立ち上がった。
「よし!すぐに『ウルス』へ向かう!1番部隊の騎士達と遠隔攻撃を行う騎士たちを大至急集めろ!!」
シュミットに命じるエルウィンは……いつものオーラをまとった『戦場の暴君』に戻っていた――。
ミカエルは伝書鳩の右足に手紙を巻き付けると頭を撫でた。
「クゥルルルル……」
ゼロと呼ばれたハトはすぐにバサリと羽を広げて空にふわりと舞い上がると、アイゼンシュタット城へ向けて飛んで行った。
飛び去って行く鳩を見送りながらマティアスがミカエルに話しかけた。
「それにしても知りませんでした。まさかミカエル様とウリエル様が伝書鳩を飼いならしていたとは」
するとミカエルは首を振った。
「違うよ、飼いならしているんじゃないよ。ゼロは僕とウリエルの友達なんだよ?」
「うん、そうだよ!」
ウリエルが頷く。
「成程……お友達、ですか。それではお友達が城の仲間を連れて戻ってくるまでの間、我々だけで出来ることをしましょう」
マティアスの言葉に、3人は頷いた――。
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その頃、アイゼンシュタット城では何とか笑いを収めて来たシュミットとエデルガルトがエルウィンを説得していた。
「とにかく、アリアドネ様は誤解されていただけですよ。クビにされたと思い込んでしまったから出て行かれたのですよ」
「そうですとも、シュミットの言う通りですぞ?アリアドネ様だってエルウィン様のことを憎からず思っていたはずです。だからこそ、ショックを受けて誰にも知られないように出て行かれたのです。迎えに行けば、きっと戻られますとも」
「そうです!エルウィン様。今にスティーブがアリアドネ様を連れて城に戻ってくるはずですから!」
シュミットとエデルガルトは必死になってエルウィンを説得する。
何しろ、越冬期間が開けた今……いつまたこの国を狙って、敵が襲ってくるか分からないのだ。
「戦場の暴君」と呼ばれるエルウィンがまるで抜け殻のような状態になってしまっていては非常に困るのであった。
しかしエルウィンは机の上に頭をつけたまま、ボソリと言う。
「それは単なる憶測だろう……?アリアドネは血の気が多くて、気の利かない俺が嫌になって出て行ったに違いない……」
「エルウィン様……」
「しっかりなさって下さい!貴方はこの国を守る『辺境伯』なのですぞ!」
その時――。
コン!コン!
窓を叩く音が執務室に響き渡った。
「あ!伝書鳩ではありませんか!」
シュミットが窓を開けると、ミカエルの放った伝書鳩が室内に飛び込んできた。そしてエルウィンの伏している机の上に降りると「クルルル」と喉を鳴らす。
「何やら手紙が巻き付けてあるようだ」
「手紙……?」
エデルガルトの言葉に反応したエルウィンは少しだけ顔を上げた。
「拝読致します」
シュミットは鳩の足から手紙を取ると、広げて目を通し……驚きの声を上げた。
「た、大変です!アリアドネ様の捜索に向かったスティーブ達が……どうやら見知らぬ男たちによって、眠らされた上に縛り上げられたようです!」
「何だって?!それは大変だ!場所はどこだ?!」
エデルガルトはシュミットに尋ねた。
「宿場村『ウルス』です!エルウィン様!今すぐ救出に向かいましょう!」
「ああ……そうだな。それでは師匠。指揮をとって『ウルス』へ向かって下さい。悪いですが、今は剣を持つ気にもなれなくて‥‥‥」
エルウィンの発言に目を見開くシュミットとエデルガルト。
「何を言っているのですか!スティーブ達が捕まったのですよ?!」
シュミットが血相を変えてエルウィンに訴える。
「ええ、そうです!『ウルス』と言えば、『アイデン』の一番外れにある最後の宿場村です。恐らくスティーブ達はアリアドネ様の行方をそこまで追っていたのでしょう。そして『ウルス』で見知らぬ男たちに捕まった…‥‥つまり、アリアドネ様も捕らえられている可能性があると言う事ですぞ!」
「な、何だってっ?!」
エデルガルトの言葉にエルウィンは真っ青になって立ち上がった。
「よし!すぐに『ウルス』へ向かう!1番部隊の騎士達と遠隔攻撃を行う騎士たちを大至急集めろ!!」
シュミットに命じるエルウィンは……いつものオーラをまとった『戦場の暴君』に戻っていた――。
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