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17-13 エデルガルトとシュミットの会話
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「皆!まずは一番近い宿場村から訪ねよう!そこで誰かリアたちを見ていないか聞いて周ろうよ!もしそこにいなければ次の宿場村に行こう!多分そんなに遠くへは行っていないはずだから、急げばきっと間に合うよ!」
ミカエルの言葉を皮切りに、スティーブ率いる騎士団を含めた総勢15名が一斉に宿場村へ向けて出発した。
「ミカエル様も立派になられましたね」
「ああ、本当にその通りだ。ランベール様とは大違いだな」
ミカエル達が城を発つ様子を執務室のバルコニーから見下ろしていたシュミットとエデルガルトが話し合っている。
「それにしても……エルウィン様にも困られたものです」
シュミットは執務室の椅子に力なく座っているエルウィンをチラリと見た。
「ああ、全くだ。しかし、本当に何故突然出ていかれてしまったのだろう。何かきっかけになることでもあったのだろうか?」
不思議そうに首を傾げるエデルガルト。
「いえ、別に……強いて言えば昨日アリアドネ様にエルウィン様の母君の形見のバッグと共に300万レニーを渡したことでしょうか?」
「何?一体それはどういうことだ?」
「はい、実は私もうっかりしていたのですがアリアドネ様は無給でこの城で働いていたのです。その事実を知ったエルウィン様が褒美として300万レニーをアリアドネ様に渡したのです」
「妙だな……それで何故このようなことになったのだろう?」
「そうですよね。エルウィン様は今までの褒美として受け取ってくれと話しておりました」
「褒美……?まぁ、確かアリアドネ様は無給で働いていたのだからな……」
「ええ、そのお金で自由に出来るだろうとも話されました」
「何と、自由にと話しておられたのか?」
エデルガルトはますます考え込む。
「もうメイドの仕事はしなくてもいいから、ゆっくり休むようにと労いの言葉も掛けられましたね」
シュミットは昨日の会話を一つ一つ、思い出すかのように話す。
「成程。確かにアリアドネ様は本来伯爵家のご令嬢であり、エルウィン様に嫁がれるためにこの城にいらしたのだからな」
「はい、そうです。アリアドネ様はお礼の言葉として『今迄お世話になりました』と言われました」
「何だと?」
初めてエデルガルトの眉が険しくなる。
「そこでエルウィン様は今迄ご苦労だったと声を掛けられたのです」
「分かった!それだ!」
エデルガルトが興奮気味に声を上げた。
「何か分かったのですか?」
シュミットの問いかけにエデルガルトは頷く。
「勿論分かったぞ。アリアドネ様は誤解されたのだ」
「誤解……ですか?」
「そうだ、恐らくアリアドネ様はエルウィン様から受け取った300万レニーを退職金だと思ったに違いない」
「な、何ですって!」
「お前の話を客観的に聞いて、気付いた。どう聞いてもエルウィン様から退職勧告されているようにしか思えない。褒美の300万レニーという大金に加え、メイドの仕事はもうしなくていいなどと。挙げ句にアリアドネ様は『今迄お世話になりました』と言ってきたのだろう?」
「え、ええ……確かにそうですが……」
「そこへ追い打ちを掛けるかのようなエルウィン様の言葉だ。『今迄ご苦労だった』と言われれば、誰だってクビにされたと思うではないか」
エデルガルトの言葉にシュミットは顔が青ざめた。
「あ……ど、どうしましょう……エデルガルト様……」
「何だ?どうしたのだ?」
「実は私も似たような言葉をアリアドネ様に掛けてしまったのです。『今迄お勤め、ご苦労様でした』と」
「な、何だと~?!」
エデルガルトの声が空に響き渡った――。
ミカエルの言葉を皮切りに、スティーブ率いる騎士団を含めた総勢15名が一斉に宿場村へ向けて出発した。
「ミカエル様も立派になられましたね」
「ああ、本当にその通りだ。ランベール様とは大違いだな」
ミカエル達が城を発つ様子を執務室のバルコニーから見下ろしていたシュミットとエデルガルトが話し合っている。
「それにしても……エルウィン様にも困られたものです」
シュミットは執務室の椅子に力なく座っているエルウィンをチラリと見た。
「ああ、全くだ。しかし、本当に何故突然出ていかれてしまったのだろう。何かきっかけになることでもあったのだろうか?」
不思議そうに首を傾げるエデルガルト。
「いえ、別に……強いて言えば昨日アリアドネ様にエルウィン様の母君の形見のバッグと共に300万レニーを渡したことでしょうか?」
「何?一体それはどういうことだ?」
「はい、実は私もうっかりしていたのですがアリアドネ様は無給でこの城で働いていたのです。その事実を知ったエルウィン様が褒美として300万レニーをアリアドネ様に渡したのです」
「妙だな……それで何故このようなことになったのだろう?」
「そうですよね。エルウィン様は今までの褒美として受け取ってくれと話しておりました」
「褒美……?まぁ、確かアリアドネ様は無給で働いていたのだからな……」
「ええ、そのお金で自由に出来るだろうとも話されました」
「何と、自由にと話しておられたのか?」
エデルガルトはますます考え込む。
「もうメイドの仕事はしなくてもいいから、ゆっくり休むようにと労いの言葉も掛けられましたね」
シュミットは昨日の会話を一つ一つ、思い出すかのように話す。
「成程。確かにアリアドネ様は本来伯爵家のご令嬢であり、エルウィン様に嫁がれるためにこの城にいらしたのだからな」
「はい、そうです。アリアドネ様はお礼の言葉として『今迄お世話になりました』と言われました」
「何だと?」
初めてエデルガルトの眉が険しくなる。
「そこでエルウィン様は今迄ご苦労だったと声を掛けられたのです」
「分かった!それだ!」
エデルガルトが興奮気味に声を上げた。
「何か分かったのですか?」
シュミットの問いかけにエデルガルトは頷く。
「勿論分かったぞ。アリアドネ様は誤解されたのだ」
「誤解……ですか?」
「そうだ、恐らくアリアドネ様はエルウィン様から受け取った300万レニーを退職金だと思ったに違いない」
「な、何ですって!」
「お前の話を客観的に聞いて、気付いた。どう聞いてもエルウィン様から退職勧告されているようにしか思えない。褒美の300万レニーという大金に加え、メイドの仕事はもうしなくていいなどと。挙げ句にアリアドネ様は『今迄お世話になりました』と言ってきたのだろう?」
「え、ええ……確かにそうですが……」
「そこへ追い打ちを掛けるかのようなエルウィン様の言葉だ。『今迄ご苦労だった』と言われれば、誰だってクビにされたと思うではないか」
エデルガルトの言葉にシュミットは顔が青ざめた。
「あ……ど、どうしましょう……エデルガルト様……」
「何だ?どうしたのだ?」
「実は私も似たような言葉をアリアドネ様に掛けてしまったのです。『今迄お勤め、ご苦労様でした』と」
「な、何だと~?!」
エデルガルトの声が空に響き渡った――。
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