上 下
307 / 376

16-18 違和感ある2人の会話

しおりを挟む
 エルウィンとアリアドネが騎士たちの元へ戻ってきたので、全員で遅めの昼食を取ることになった。

 
 全員でこの村唯一の宿屋件食堂に入り、昼食を取っていたのだが……。


「おい、見ろ。アリアドネ様とエルウィン様の様子を」

 一人の騎士が小声で同じテーブルに座る2人の仲間たちに話かけてきた。

「ああ、何だかおかしな雰囲気だな?」

「お前もそう思うか?」

「当然だろう?エルウィン様だけ、やたらと上機嫌だ。それに引き換え……」

「「「何故、アリアドネ様は元気がないのだろう?」」」

 3人が声を揃えて首を傾げるのだった……。


 そんな彼らの会話を近くの席でマティアスとカインは聞いていた。

「どう思う?カイン?」

 肉料理を口に入れていたカインにマティアスが尋ねてきた。

「そうですね……。お2人で戻られたときからアリアドネ様の様子がおかしいですよね?」

「ああ、そうなんだ。時折笑顔を見せてはいるものの……何だか無理に笑っているようにも見える」

「はい。エルウィン様はアリアドネ様が好きな木彫りのアクセサリーをプレゼントすることが出来て満足しているようですが……」

「これは何か2人の間で行き違いが合ったかもしれないな」

 マティアスの言葉に頷くカイン。

 そして2人は思った。
 やはり、エルウィンは女心に疎い……と――。



「アリアドネ、食事が終わればまた出発する。次の場所で今日は宿泊する予定だ。そこはこの村よりもずっと大きな町だ。到着したら、好きなだけ欲しいものを買ってやろう」

 エルウィンは上機嫌で向かい側に座るアリアドネに話しかけていた。

「いえ、もうあんなに沢山素晴らしい木彫りのアクセサリーを頂いたので、もう十分です」

「何故だ?その……俺からの褒美は欲しくはないのか?」

「いえ、そうではありません。とても嬉しいです。でも私には過ぎたものですから」

「そうか?なら、やはりここはお前に金を渡すべきなのだろうな。そのほうがいいだろう?好きなものを自分で買えるわけだし……何より生きていくには金は必要うだからな。大体今迄給金を貰っていなかったのだろう?まとめて支払うことにしよう」

「お金……ですか?」

「ああ、そうだ。それなら受け取ってもらえるだろう?やはり自由にできる金が無いとこの先も困るだろうしな」

 エルウィンは特に深い意味を持ってこの言葉を言ったわけでは無かったが、アリアドネはその言葉を重く受け取った。

(まとめて支払う……それは下働きやメイドとして働いたお金と退職金のことを言っているのかしら……?)

 けれどアイゼンシュタット城を出れば必然的にお金は必要になってくる。今は衣食住に困らない生活をおくれてはいるものの、城を出れば一切の補助を受けられなくなるのだ。

「それでは……お金を頂けますか?」

「ああ、勿論だ。お前の好きなだけくれてやろう」


 そんな2人の会話をその場にいる騎士達が違和感のある目で見つめていることに、エルウィンもアリアドネも気付いてはいなかった――。




 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

「やっぱり君がいい」と言われましても。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:482pt お気に入り:4,054

睡姦しまくって無意識のうちに落とすお話

恋愛 / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:105

【R18】女嫌いの医者と偽りのシークレット・ベビー

恋愛 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:479

夫に「好きな人が出来たので離縁してくれ」と言われました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,777pt お気に入り:3,914

婚約者を見限った令嬢は、1年前からやり直す。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:2,183

悲しみは続いても、また明日会えるから

恋愛 / 完結 24h.ポイント:960pt お気に入り:2,724

婚約者は聖女を愛している。……と、思っていたが何か違うようです。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:10,593pt お気に入り:8,978

処理中です...