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13−4 八つ当たり?
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エルウィンがやってくると、すぐに一行は出発した。
一番先頭を進むのはエルウィンだった。そしてアリアドネの馬車は上下左右を騎士達に守られるように進んでいる。
その様子を見ながらアリアドネは思った。
(初めてアイゼンシュタット城へ向かった時とはまるで勝手が違うわ。あの時は護衛の人もいなかったし、馬車は粗末な作りだった。それに旅のお供は御者を務めてくれたヨゼフさんだけだったもの。それが今は…私なんかの為に‥‥こんな立派な馬車を用意して貰った上に、これほどの護衛の方をつけて下さるなんて)
アリアドネは子供の頃からメイドとして働かされていたので、家事仕事にはそれなりに自信があった。
けれども、学も無ければ貴族令嬢としての教育は一切受けていない。
だからこそ尚更、自分を卑下してしまうところがあったのだ。
「使用人の身分なのに、このままエルウィン様に施しを受けてばかりではいけないわね…。そうだわ」
アリアドネは持ってきた荷物の中からバスケットを手元に寄せると蓋を開けた。
中には編み棒と紺色の毛糸が入っている。
これは馬車の中で暇つぶしの為に持ってきたものであった
「エルウィン様がお気に召すか分からないけれど…この毛糸でマフラーを編みましょ
う。この紺色のマフラー‥‥エルウィン様の青くて美しい瞳に良く映えると思うから」
そして、アリアドネは早速エルウィンの為にマフラーを編み始めた。
その様子を興味深げに護衛の騎士達が見ていることにも気づかず――。
**
「おい、見たか?アリアドネ様の様子を」
「ああ。見た見た」
「マフラーを編んでいらしたな?」
「誰に編むつもりなのだろう?」
「う~ん‥‥普通に考えればエルウィン様だろうけど‥‥」
「だが、エルウィン様がマフラーをする姿なんて想像がつかないな」
「ああ。俺もそう思う。と言う事は……?」
そこで、騎士達はある考えに至った――。
「おい、アリアドネは今何をしている?」
先頭を馬に乗って進むエルウィンがアリアドネの乗る馬車を護衛している騎士を自分の元へ呼び寄せていた。
「はい、アリアドネ様は今馬車の中で青い毛糸で編み物をしていらっしゃいます。どうやら形状から考えるとマフラーのようでした」
「何?マフラーだって?」
その言葉にエルウィンは少しだけ期待してしまった。
(アリアドネ‥‥ひょっとして俺の為に…?)
そこで、エルウィンは騎士に尋ねてみることにした。
「ところで…お前ならどう思う?」
「は?どう思う?とは何のことでしょうか?」
若い騎士は首を傾げる。
「鈍い奴だな?だから、お前ならアリアドネが編んでいるマフラーは‥‥誰の為に編んでいると思う?言っておくけどな、俺はお前たちの考えが聞きたくて尋ねているだけだからな?」
エルウィンは弁明するかのよう言う。
「あ、その事ですか?それならもう分かっていますよ」
「何?!そうなのか?そ、それで誰に編んでいるのだ?」
エルウィンは冷静さを保とうと思ったのに、つい興奮気味に尋ねる。
「それは簡単な事ですよ。ご自分の為にです」
「…え?」
「つまり、アリアドネア様は自分用のマフラーを編んでいたという訳です…え?ど、どうされたのですか?エルウィン様」
騎士はエルウィンが恨めしそうな目で自分を睨みつけているのを見て驚いた。
「…もういい」
「はい?」
「うるさい!もういいって言ってるんだっ!今から隊列変更だ!お前は一番後方に移動しろっ!」
「は、はい!」
騎士は何故エルウィンが不機嫌になったのか訳が分からないまま、首を捻りながら隊列の一番後ろに下がって行った。
「全く…」
エルウィンは面白くない気分を引きずりながら、馬を前に進めるのだった――。
一番先頭を進むのはエルウィンだった。そしてアリアドネの馬車は上下左右を騎士達に守られるように進んでいる。
その様子を見ながらアリアドネは思った。
(初めてアイゼンシュタット城へ向かった時とはまるで勝手が違うわ。あの時は護衛の人もいなかったし、馬車は粗末な作りだった。それに旅のお供は御者を務めてくれたヨゼフさんだけだったもの。それが今は…私なんかの為に‥‥こんな立派な馬車を用意して貰った上に、これほどの護衛の方をつけて下さるなんて)
アリアドネは子供の頃からメイドとして働かされていたので、家事仕事にはそれなりに自信があった。
けれども、学も無ければ貴族令嬢としての教育は一切受けていない。
だからこそ尚更、自分を卑下してしまうところがあったのだ。
「使用人の身分なのに、このままエルウィン様に施しを受けてばかりではいけないわね…。そうだわ」
アリアドネは持ってきた荷物の中からバスケットを手元に寄せると蓋を開けた。
中には編み棒と紺色の毛糸が入っている。
これは馬車の中で暇つぶしの為に持ってきたものであった
「エルウィン様がお気に召すか分からないけれど…この毛糸でマフラーを編みましょ
う。この紺色のマフラー‥‥エルウィン様の青くて美しい瞳に良く映えると思うから」
そして、アリアドネは早速エルウィンの為にマフラーを編み始めた。
その様子を興味深げに護衛の騎士達が見ていることにも気づかず――。
**
「おい、見たか?アリアドネ様の様子を」
「ああ。見た見た」
「マフラーを編んでいらしたな?」
「誰に編むつもりなのだろう?」
「う~ん‥‥普通に考えればエルウィン様だろうけど‥‥」
「だが、エルウィン様がマフラーをする姿なんて想像がつかないな」
「ああ。俺もそう思う。と言う事は……?」
そこで、騎士達はある考えに至った――。
「おい、アリアドネは今何をしている?」
先頭を馬に乗って進むエルウィンがアリアドネの乗る馬車を護衛している騎士を自分の元へ呼び寄せていた。
「はい、アリアドネ様は今馬車の中で青い毛糸で編み物をしていらっしゃいます。どうやら形状から考えるとマフラーのようでした」
「何?マフラーだって?」
その言葉にエルウィンは少しだけ期待してしまった。
(アリアドネ‥‥ひょっとして俺の為に…?)
そこで、エルウィンは騎士に尋ねてみることにした。
「ところで…お前ならどう思う?」
「は?どう思う?とは何のことでしょうか?」
若い騎士は首を傾げる。
「鈍い奴だな?だから、お前ならアリアドネが編んでいるマフラーは‥‥誰の為に編んでいると思う?言っておくけどな、俺はお前たちの考えが聞きたくて尋ねているだけだからな?」
エルウィンは弁明するかのよう言う。
「あ、その事ですか?それならもう分かっていますよ」
「何?!そうなのか?そ、それで誰に編んでいるのだ?」
エルウィンは冷静さを保とうと思ったのに、つい興奮気味に尋ねる。
「それは簡単な事ですよ。ご自分の為にです」
「…え?」
「つまり、アリアドネア様は自分用のマフラーを編んでいたという訳です…え?ど、どうされたのですか?エルウィン様」
騎士はエルウィンが恨めしそうな目で自分を睨みつけているのを見て驚いた。
「…もういい」
「はい?」
「うるさい!もういいって言ってるんだっ!今から隊列変更だ!お前は一番後方に移動しろっ!」
「は、はい!」
騎士は何故エルウィンが不機嫌になったのか訳が分からないまま、首を捻りながら隊列の一番後ろに下がって行った。
「全く…」
エルウィンは面白くない気分を引きずりながら、馬を前に進めるのだった――。
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