217 / 376
12-13 浮かれるエルウィン
しおりを挟む
「あ、エルウィン様だ!」
「エルウィン様!」
食事をしていたミカエルとウリエルが立ち上がった。
「まぁ、いけませんよ。ミカエル様、ウリエル様。お食事中立ち上がっては」
「あ、そうだった!」
「いけない!」
アリアドネに諭されて、慌てて座るウリエルとミカエル。
「ハハハハハ……どうだ?美味いか?2人とも」
エルウィンは笑いながら部屋に入ってきた。
「はい、美味しいです」
「美味しいよ~」
「あの、エルウィン様はお食事は召し上がられたのですか?」
「いや、まだだが?」
アリアドネの質問に首を振るエルウィン。
「でしたら、ミカエル様とウリエル様と御一緒にお食事を召し上がっていかれませんか?エルウィン様のお召し上がりになれる分はありますので」
アリアドネが銀のワゴンに乗った料理のフードカバーを開けた。
すると、まだ温かな湯気の立つ野菜とパンのチーズがたっぷりかかったグリル焼きの料理が現れた。
「これは美味そうだな」
香ばしいチーズの香りを満足そうに嗅ぐエルウィンにミカエルとウリエルが口々に言った。
「チーズが最高だよ」
「うん、この料理すごく美味しいんだよ」
「そうだな……それでは頂こうかな?」
エルウィンはテーブル席に着いた。
「ではすぐに御用意致しますね」
「ああ、頼む」
アリアドネが給仕をしているそばでミカエルがエルウィンに話しかけてきた。
「僕達、エルウィン様にお願いがあるんです」
「お願い……?珍しいな。お前たちの方から俺にお願いをしてくるなんて。どんな願いだ?他ならぬお前たちの願いなんだからな。遠慮せずに言ってみろ」
エルウィンはにこやかな笑みを浮かべ、ミカエルとウリエルを交互に見た。
「僕達、弱い人達を守れるような立派な騎士になりたいんです」
「エルウィン様やロイのように強くなりたいんだ」
ミカエルに続き、ウリエルがエルウィンに訴えてきた。
「お前たち……」
エルウィンは2人の言葉に感動した。
(まだまだ小さい子供達だと思っていたのに、いつの間にかこんなことを言うようになっていたのか……)
「よし、分かった。いいぞ、お前たちの望むような立派な騎士になれるように訓練を受けるといい。俺も協力するぞ?」
「本当?」
「ありがとう、エルウィン様!」
ウリエルとミカエルが礼を述べたところで、エルウィンの前にトレーに乗せられた湯気の立つ料理が置かれた。
「お待たせいたしました、エルウィン様」
スープにサラダ、ボイルドエッグに野菜とパンのグリルチーズ焼きの料理はどれも美味しそうだった。
「うん、美味そうだ。よし、食べるか」
「ごゆっくりどうぞ。私はリネン室に用事があるので暫く席を外しますので」
「ああ、分かった」
エルウィンは返事をした。
そしてミカエルとウリエルと一緒に料理を食べながら騎士としての心構えを熱く語り……食事を終えたエルウィンは満足気に2人の部屋を後にした。
(まさか、あの臆病な子供だったミカエルとウリエルが騎士を目指したいと言い出すねんて……。早速スティーブにも報告しなくては)
エルウィンはすっかり浮かれた気分だった。
その為、自分が何をしにあの部屋へ行ったかのかを忘れていたのだ。
アリアドネを説得すると言う、肝心な目的を――。
「エルウィン様!」
食事をしていたミカエルとウリエルが立ち上がった。
「まぁ、いけませんよ。ミカエル様、ウリエル様。お食事中立ち上がっては」
「あ、そうだった!」
「いけない!」
アリアドネに諭されて、慌てて座るウリエルとミカエル。
「ハハハハハ……どうだ?美味いか?2人とも」
エルウィンは笑いながら部屋に入ってきた。
「はい、美味しいです」
「美味しいよ~」
「あの、エルウィン様はお食事は召し上がられたのですか?」
「いや、まだだが?」
アリアドネの質問に首を振るエルウィン。
「でしたら、ミカエル様とウリエル様と御一緒にお食事を召し上がっていかれませんか?エルウィン様のお召し上がりになれる分はありますので」
アリアドネが銀のワゴンに乗った料理のフードカバーを開けた。
すると、まだ温かな湯気の立つ野菜とパンのチーズがたっぷりかかったグリル焼きの料理が現れた。
「これは美味そうだな」
香ばしいチーズの香りを満足そうに嗅ぐエルウィンにミカエルとウリエルが口々に言った。
「チーズが最高だよ」
「うん、この料理すごく美味しいんだよ」
「そうだな……それでは頂こうかな?」
エルウィンはテーブル席に着いた。
「ではすぐに御用意致しますね」
「ああ、頼む」
アリアドネが給仕をしているそばでミカエルがエルウィンに話しかけてきた。
「僕達、エルウィン様にお願いがあるんです」
「お願い……?珍しいな。お前たちの方から俺にお願いをしてくるなんて。どんな願いだ?他ならぬお前たちの願いなんだからな。遠慮せずに言ってみろ」
エルウィンはにこやかな笑みを浮かべ、ミカエルとウリエルを交互に見た。
「僕達、弱い人達を守れるような立派な騎士になりたいんです」
「エルウィン様やロイのように強くなりたいんだ」
ミカエルに続き、ウリエルがエルウィンに訴えてきた。
「お前たち……」
エルウィンは2人の言葉に感動した。
(まだまだ小さい子供達だと思っていたのに、いつの間にかこんなことを言うようになっていたのか……)
「よし、分かった。いいぞ、お前たちの望むような立派な騎士になれるように訓練を受けるといい。俺も協力するぞ?」
「本当?」
「ありがとう、エルウィン様!」
ウリエルとミカエルが礼を述べたところで、エルウィンの前にトレーに乗せられた湯気の立つ料理が置かれた。
「お待たせいたしました、エルウィン様」
スープにサラダ、ボイルドエッグに野菜とパンのグリルチーズ焼きの料理はどれも美味しそうだった。
「うん、美味そうだ。よし、食べるか」
「ごゆっくりどうぞ。私はリネン室に用事があるので暫く席を外しますので」
「ああ、分かった」
エルウィンは返事をした。
そしてミカエルとウリエルと一緒に料理を食べながら騎士としての心構えを熱く語り……食事を終えたエルウィンは満足気に2人の部屋を後にした。
(まさか、あの臆病な子供だったミカエルとウリエルが騎士を目指したいと言い出すねんて……。早速スティーブにも報告しなくては)
エルウィンはすっかり浮かれた気分だった。
その為、自分が何をしにあの部屋へ行ったかのかを忘れていたのだ。
アリアドネを説得すると言う、肝心な目的を――。
16
お気に入りに追加
2,844
あなたにおすすめの小説
【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します
佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚
不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。
私はきっとまた、二十歳を越えられないーー
一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。
二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。
三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――?
*ムーンライトノベルズにも掲載
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
嫌われ黒領主の旦那様~侯爵家の三男に一途に愛されていました~
めもぐあい
恋愛
イスティリア王国では忌み嫌われる黒髪黒目を持ったクローディアは、ハイド伯爵領の領主だった父が亡くなってから叔父一家に虐げられ生きてきた。
成人間近のある日、突然叔父夫妻が逮捕されたことで、なんとかハイド伯爵となったクローディア。
だが、今度は家令が横領していたことを知る。証拠を押さえ追及すると、逆上した家令はクローディアに襲いかかった。
そこに、天使の様な美しい男が現れ、クローディアは助けられる。
ユージーンと名乗った男は、そのまま伯爵家で雇ってほしいと願い出るが――
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユリアは、8歳の時に両親を亡くして以降、叔父に引き取られたものの、厄介者として虐げられて生きてきた。さらにこの世界では命を削る魔法と言われている、治癒魔法も長年強要され続けてきた。
そのせいで体はボロボロ、髪も真っ白になり、老婆の様な見た目になってしまったユリア。家の外にも出してもらえず、メイド以下の生活を強いられてきた。まさに、この世の地獄を味わっているユリアだが、“どんな時でも笑顔を忘れないで”という亡き母の言葉を胸に、どんなに辛くても笑顔を絶やすことはない。
そんな辛い生活の中、15歳になったユリアは貴族学院に入学する日を心待ちにしていた。なぜなら、昔自分を助けてくれた公爵令息、ブラックに会えるからだ。
「どうせもう私は長くは生きられない。それなら、ブラック様との思い出を作りたい」
そんな思いで、意気揚々と貴族学院の入学式に向かったユリア。そこで久しぶりに、ブラックとの再会を果たした。相変わらず自分に優しくしてくれるブラックに、ユリアはどんどん惹かれていく。
かつての友人達とも再開し、楽しい学院生活をスタートさせたかのように見えたのだが…
※虐げられてきたユリアが、幸せを掴むまでのお話しです。
ザ・王道シンデレラストーリーが書きたくて書いてみました。
よろしくお願いしますm(__)m
愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!
香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。
ある日、父親から
「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」
と告げられる。
伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。
その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、
伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。
親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。
ライアンは、冷酷と噂されている。
さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。
決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!?
そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる