216 / 376
12-12 2人のアドバイス
しおりを挟む
今を遡ること30分程前――。
「よし、行くか」
執務室で剣の手入れをしていたエルウィンが突然立ち上がった。
「え?お待ちください、エルウィン様。まだ仕事が終わっていないのですよ?しかも今まで剣の手入れをしていただけですよね?終われば執務に戻って頂けるだろうと思って今まで私は黙っていたのですよ?それなのに一体今からどちらへ行かれると言うのですか?」
「全く……男のくせに煩い奴だな。俺のたった一言で、そこまで言い返すことは無いだろう?」
エルウィンは不機嫌な顔を隠しもせずにシュミットを睨みつけた。
「当然ではありませんか!まだ越冬期間中に終わらせることが出来なかった残務処理が残っているのですよ?」
2人の机の上には積み重ねられた書類の束が置かれている。そして、シュミットの机に乗っている書類はエルウィンのおよそ2倍量はあった。
「宜しいですか?私はただでさえエルウィン様の倍は仕事を抱えております。少しは御理解頂けないでしょうか?」
「俺の仕事の補佐をするのがお前の役目だ朗?今更何言ってるんだ。とにかく俺は忙しい。後のことはお前に任せる」
エルウィンはシュミットの制止も聞かずに出て行こうとすると、そこへスティーブがノックもせずに駆け込んできた。
「た、大将!こちらにいたんですかっ?!」
「何だ。相変わらず騒々しい奴だな……。俺は今からアリアドネを説得しに行かなければならないんだ。急用でないなら後にしてくれ」
「「え?説得?!」」
シュミットとスティーブの声が重なる。
「ああ、そうだ。何とかしてアリアドネにもう一度考え直してもらえるように説得に行くつもりだ。そこで今からミカエル達の部屋へ行くつもりだ。今なら2人は食事中で、アリアドネは給仕をしている最中だろうからな」
ここでエルウィンの話している説得とは、勿論アリアドネをアイゼンシュタット城に止めて置く為の説得のことをさしている。しかし、シュミットとスティーブの思いは違った。
(まさか、一度は断られているのに再びアリアドネ様に結婚を申し込まれるつもりなのだろうか?)
(大将‥‥アリアドネに振られたのに、もう一度挑戦する気なのか‥‥?)
エルウィンの本気度を知った2人は背中を押すことに決めた。
「分かりました、エルウィン様。仕事の件でしたら本日は多めにみましょう」
シュミットが眼鏡をクイッと上げた。
「え?いいのか?」
以外な台詞に驚くエルウィン。
「ええ、エルウィン様の本気度が伺えましたからね。ご武運をお祈り申し上げます」
「あ?ああ‥‥分かった」
「大将、頑張ってくれよ。応援してるぜ!」
シュミットに引き続き、スティーブが声を掛けて来た。
「そうだな。何とか説得してみせる」
頷くエルウィンにシュミットとスティーブがアドバイスしてきた。
「そうそう、エルウィン様。まず相手の第一印象を上げるには笑顔ですよ」
「そうですぜ、大将。相手の警戒心を解くにはまず笑顔が一番ですぜ?」
「わ、分かった‥‥笑顔…だな?」
エルウィンは口角を上げてみた。
「う~ん‥‥まだまだ表情が硬いですねぇ」
「そうだな、大将。目も笑ってみたらどうです?」
「こ、こうか…?」
こうしてエルウィンは2人から笑顔の指導?を受けて、ミカエルとウリエルの部屋へと向かったのであった――。
「よし、行くか」
執務室で剣の手入れをしていたエルウィンが突然立ち上がった。
「え?お待ちください、エルウィン様。まだ仕事が終わっていないのですよ?しかも今まで剣の手入れをしていただけですよね?終われば執務に戻って頂けるだろうと思って今まで私は黙っていたのですよ?それなのに一体今からどちらへ行かれると言うのですか?」
「全く……男のくせに煩い奴だな。俺のたった一言で、そこまで言い返すことは無いだろう?」
エルウィンは不機嫌な顔を隠しもせずにシュミットを睨みつけた。
「当然ではありませんか!まだ越冬期間中に終わらせることが出来なかった残務処理が残っているのですよ?」
2人の机の上には積み重ねられた書類の束が置かれている。そして、シュミットの机に乗っている書類はエルウィンのおよそ2倍量はあった。
「宜しいですか?私はただでさえエルウィン様の倍は仕事を抱えております。少しは御理解頂けないでしょうか?」
「俺の仕事の補佐をするのがお前の役目だ朗?今更何言ってるんだ。とにかく俺は忙しい。後のことはお前に任せる」
エルウィンはシュミットの制止も聞かずに出て行こうとすると、そこへスティーブがノックもせずに駆け込んできた。
「た、大将!こちらにいたんですかっ?!」
「何だ。相変わらず騒々しい奴だな……。俺は今からアリアドネを説得しに行かなければならないんだ。急用でないなら後にしてくれ」
「「え?説得?!」」
シュミットとスティーブの声が重なる。
「ああ、そうだ。何とかしてアリアドネにもう一度考え直してもらえるように説得に行くつもりだ。そこで今からミカエル達の部屋へ行くつもりだ。今なら2人は食事中で、アリアドネは給仕をしている最中だろうからな」
ここでエルウィンの話している説得とは、勿論アリアドネをアイゼンシュタット城に止めて置く為の説得のことをさしている。しかし、シュミットとスティーブの思いは違った。
(まさか、一度は断られているのに再びアリアドネ様に結婚を申し込まれるつもりなのだろうか?)
(大将‥‥アリアドネに振られたのに、もう一度挑戦する気なのか‥‥?)
エルウィンの本気度を知った2人は背中を押すことに決めた。
「分かりました、エルウィン様。仕事の件でしたら本日は多めにみましょう」
シュミットが眼鏡をクイッと上げた。
「え?いいのか?」
以外な台詞に驚くエルウィン。
「ええ、エルウィン様の本気度が伺えましたからね。ご武運をお祈り申し上げます」
「あ?ああ‥‥分かった」
「大将、頑張ってくれよ。応援してるぜ!」
シュミットに引き続き、スティーブが声を掛けて来た。
「そうだな。何とか説得してみせる」
頷くエルウィンにシュミットとスティーブがアドバイスしてきた。
「そうそう、エルウィン様。まず相手の第一印象を上げるには笑顔ですよ」
「そうですぜ、大将。相手の警戒心を解くにはまず笑顔が一番ですぜ?」
「わ、分かった‥‥笑顔…だな?」
エルウィンは口角を上げてみた。
「う~ん‥‥まだまだ表情が硬いですねぇ」
「そうだな、大将。目も笑ってみたらどうです?」
「こ、こうか…?」
こうしてエルウィンは2人から笑顔の指導?を受けて、ミカエルとウリエルの部屋へと向かったのであった――。
15
お気に入りに追加
2,844
あなたにおすすめの小説
【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します
佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚
不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。
私はきっとまた、二十歳を越えられないーー
一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。
二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。
三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――?
*ムーンライトノベルズにも掲載
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユリアは、8歳の時に両親を亡くして以降、叔父に引き取られたものの、厄介者として虐げられて生きてきた。さらにこの世界では命を削る魔法と言われている、治癒魔法も長年強要され続けてきた。
そのせいで体はボロボロ、髪も真っ白になり、老婆の様な見た目になってしまったユリア。家の外にも出してもらえず、メイド以下の生活を強いられてきた。まさに、この世の地獄を味わっているユリアだが、“どんな時でも笑顔を忘れないで”という亡き母の言葉を胸に、どんなに辛くても笑顔を絶やすことはない。
そんな辛い生活の中、15歳になったユリアは貴族学院に入学する日を心待ちにしていた。なぜなら、昔自分を助けてくれた公爵令息、ブラックに会えるからだ。
「どうせもう私は長くは生きられない。それなら、ブラック様との思い出を作りたい」
そんな思いで、意気揚々と貴族学院の入学式に向かったユリア。そこで久しぶりに、ブラックとの再会を果たした。相変わらず自分に優しくしてくれるブラックに、ユリアはどんどん惹かれていく。
かつての友人達とも再開し、楽しい学院生活をスタートさせたかのように見えたのだが…
※虐げられてきたユリアが、幸せを掴むまでのお話しです。
ザ・王道シンデレラストーリーが書きたくて書いてみました。
よろしくお願いしますm(__)m
愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!
香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。
ある日、父親から
「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」
と告げられる。
伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。
その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、
伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。
親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。
ライアンは、冷酷と噂されている。
さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。
決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!?
そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~
柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。
家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。
そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。
というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。
けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。
そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。
ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。
それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。
そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。
一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。
これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。
他サイトでも掲載中。
【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました
成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。
天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。
学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる