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12-5 落ち込むエルウィン
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アリアドネと話を終えたエルウィンは、すっかり意気消沈した様子で執務室の前に辿り着いた。
「はぁ……」
深いため息をつきながら執務室の扉を開けて中へ入ると、スティーブとシュミットの姿があった。
「何だ……?お前達、まだここにいたのか?」
エルウィンは2人を見ると、書斎机の椅子に力なく座った。
「「……」」
そんないつもとは全く様子の違うエルウィンに2人は顔を見合わせたが、すぐにシュミットはエルウィンに話しかけた。
「当然ではありませんか?私はエルウィン様と一緒に仕事をしているのですから」
「俺もそうですぜ?まだ部隊の新しい規則を決めていませんでしたよね?それには俺の存在が不可欠ですぜ?」
どうしてもこの部屋に居残りたいスティーブは勝手に理由を作り上げる。
「ふん、そうか。ところで師匠はどちらへ行かれた?」
「エデルガルト様はオズワルド様の部下だった者達の元へ行かれております。大事な話があるそうなので」
エルウィンの質問にシュミットは答えた。
「そうか‥‥」
そこで再びエルウィンはため息をついた。
するとついに好奇心旺盛なスティーブは我慢出来ずに身を乗り出すようにエルウィンにつめよった。
「ところで大将、一体何があったと言うんです?ここを出て行かれた時は随分憤慨した様子でしたよね?それがどうして今はこんなに落ち込んでいるんです?」
「スティーブッ!」
スティーブの不躾な質問に驚いたシュミットではあったが、実のところはエルウィンの口から何があったのか尋ねたい気持ちは山々だった。
「落ち込んでいる……?この俺が?」
エルウィンはスティーブの顔を見上げた。
「ええ、見る限りかなり落ち込んでいますね」
「病んでるようにすら見えますぜ?」
シュミットとスティーブが交互に頷く。
「そうか……これが、いわゆる『落ち込む』ということなのか……」
普段から戦に身を投じて来たエルウィンには戦況が悪化したとしても、落ち込むことなど無かった。
刻一刻と戦況が変わる戦場ではそんな暇など無いからである。
それに元々割と能天気なところがあるエルウィンは、後悔することはあったとしても、あまりウジウジと思い悩むようなタイプの男では無かった。
「大将。一体何があったんです?ダリウスと話をしに行ったはずですよね?ここを出て行く時には随分威勢がよかったじゃありませんか」
スティーブの言葉にエルウィンは眉をしかめた。
「何でそのことを知ってるんだ?俺は一言でもダリウスの所へ行くなんて言ったか?」
「え?あ……そ、それは……そうですっ!シュミットがエルウィン様が置いて行った書簡を読んだからですよ!」
あろうことか、スティーブはシュミットを指さした。
「えっ?!」
(スティーブの奴!何を言い出すんだっ?!)
突然話を振られたシュミットが焦ったのは言うまでもない。
「そうなのか?シュミット」
次にエルウィンはシュミットに視線を移した。
「え?あ…は、はい。そうですね。私はエルウィン様の補佐官のようなものですから」
ゴホンと咳払いしながら、シュミットは心の中でスティーブを恨んだ。
「そうか‥‥だからか‥‥。なら何故俺が落ち込んでいるか分かるだろう?」
エルウィンは再びため息をつくと、スティーブとシュミットを交互に見ると尋ねた。
「俺は戦うだけしか能が無い男だ。だから……お前たちに尋ねる」
「「はい」」
今までに無いエルウィンの様子にシュミットとスティーブは緊張しながら返事をした。
「出て行こうとする人間を引き留めるには‥‥どうすればいい?」
「「え…?」」
その質問にシュミットとスティーブが戸惑ったのは言うまでも無かった――。
「はぁ……」
深いため息をつきながら執務室の扉を開けて中へ入ると、スティーブとシュミットの姿があった。
「何だ……?お前達、まだここにいたのか?」
エルウィンは2人を見ると、書斎机の椅子に力なく座った。
「「……」」
そんないつもとは全く様子の違うエルウィンに2人は顔を見合わせたが、すぐにシュミットはエルウィンに話しかけた。
「当然ではありませんか?私はエルウィン様と一緒に仕事をしているのですから」
「俺もそうですぜ?まだ部隊の新しい規則を決めていませんでしたよね?それには俺の存在が不可欠ですぜ?」
どうしてもこの部屋に居残りたいスティーブは勝手に理由を作り上げる。
「ふん、そうか。ところで師匠はどちらへ行かれた?」
「エデルガルト様はオズワルド様の部下だった者達の元へ行かれております。大事な話があるそうなので」
エルウィンの質問にシュミットは答えた。
「そうか‥‥」
そこで再びエルウィンはため息をついた。
するとついに好奇心旺盛なスティーブは我慢出来ずに身を乗り出すようにエルウィンにつめよった。
「ところで大将、一体何があったと言うんです?ここを出て行かれた時は随分憤慨した様子でしたよね?それがどうして今はこんなに落ち込んでいるんです?」
「スティーブッ!」
スティーブの不躾な質問に驚いたシュミットではあったが、実のところはエルウィンの口から何があったのか尋ねたい気持ちは山々だった。
「落ち込んでいる……?この俺が?」
エルウィンはスティーブの顔を見上げた。
「ええ、見る限りかなり落ち込んでいますね」
「病んでるようにすら見えますぜ?」
シュミットとスティーブが交互に頷く。
「そうか……これが、いわゆる『落ち込む』ということなのか……」
普段から戦に身を投じて来たエルウィンには戦況が悪化したとしても、落ち込むことなど無かった。
刻一刻と戦況が変わる戦場ではそんな暇など無いからである。
それに元々割と能天気なところがあるエルウィンは、後悔することはあったとしても、あまりウジウジと思い悩むようなタイプの男では無かった。
「大将。一体何があったんです?ダリウスと話をしに行ったはずですよね?ここを出て行く時には随分威勢がよかったじゃありませんか」
スティーブの言葉にエルウィンは眉をしかめた。
「何でそのことを知ってるんだ?俺は一言でもダリウスの所へ行くなんて言ったか?」
「え?あ……そ、それは……そうですっ!シュミットがエルウィン様が置いて行った書簡を読んだからですよ!」
あろうことか、スティーブはシュミットを指さした。
「えっ?!」
(スティーブの奴!何を言い出すんだっ?!)
突然話を振られたシュミットが焦ったのは言うまでもない。
「そうなのか?シュミット」
次にエルウィンはシュミットに視線を移した。
「え?あ…は、はい。そうですね。私はエルウィン様の補佐官のようなものですから」
ゴホンと咳払いしながら、シュミットは心の中でスティーブを恨んだ。
「そうか‥‥だからか‥‥。なら何故俺が落ち込んでいるか分かるだろう?」
エルウィンは再びため息をつくと、スティーブとシュミットを交互に見ると尋ねた。
「俺は戦うだけしか能が無い男だ。だから……お前たちに尋ねる」
「「はい」」
今までに無いエルウィンの様子にシュミットとスティーブは緊張しながら返事をした。
「出て行こうとする人間を引き留めるには‥‥どうすればいい?」
「「え…?」」
その質問にシュミットとスティーブが戸惑ったのは言うまでも無かった――。
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