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10-8 エルウィンの策

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 会議終了後の約1時間後―

エルウィンは執務室で剣の手入れをしていた。

その時だった。

バンッ!

勢いよく扉が開かれ、シュミットが荒い息を吐きながら執務室へ飛び込んできたのだ。

「ハァ…ハァ……エ、エルウィン様…」

「シュミットッ!何か分かったかっ?!」

エルウィンは素早く立ち上がった。

「エルウィン様…」

シュミットは荒い息を整えながら、再度エルウィンの名を呼んだ。

「何だ?どうした?!」

「い、いえ…も、申し訳ございません…」

「な、何がだ…?!」

シュミットの様子にエルウィンはいやな予感を覚えた。

「ノックもせずに…部屋の扉を開けてしまったことについて…です…」

シュミットの言葉にエルウィンは思わず拍子抜けしそうになってしまった。

「はぁ?なんだ…そのことか…」

しかし、次の瞬間苛立ちが募ってきた。

「チッ!緊急事態中にそれ位の事は気にするな!…と言うか、紛らわしい真似はするんじゃないっ!」

「はい、かしこまりました」

ようやく息が整ったシュミットは頭を下げた。

「それよりも領民達に話は聞けたのか?」

腕組みするとエルウィンはジロリとシュミットに尋ねた。

「はい、ここから一番近い宿場町と、その先の町に様子を聞いてきました。どうやら8時頃に、馬に乗ったマント姿の人々と2台の荷馬車が通り過ぎていったそうです。その数はおよそ10程だったそうです。非常に目立っていたので、よく覚えていたそうです。そして町の方では、10人程の旅人達が越冬期間中ずっと宿屋に宿泊していたそうですが、今朝方全員出て行ったそうです。それ以上は追跡しておりません。何しろその先の村まではかなり距離がありましたので」

「いや、いい。それだけ聞ければ十分だ。少なくとも20人以上の集団で行動しているということだな。多く見積もっても30人弱かもしれない。10人単位で行動していた可能性があるな…よし!作戦会議再開だ!先程と同じメンバーを全員招集させろっ!」

エルウィンはそれだけ告げると、手入れしていた剣を握りしめて執務室を大股で出ていった。

「はい!」

シュミットは返事をすると、すぐに招集を掛ける為に鐘つき堂へ向った―。



****


15分後―

先程と同じメンバーが会議室に集められていた。

「エルウィン様。いかがいたしましょうか?」

シュミットが早速尋ねてきた。

「ああ、奴等の数はおおく見積もっても30弱と見た。奴等は砂漠の民、雪は苦手なはずだ。よって、我らも30人で兵を出す。何としても奴等を逃がすな!奴等の陣地に入られればこちらが不利だ!先回りして奴等を囲い込む!騎士団長5名、選りすぐりの騎士25名で出るのだ!」

「なら、人選は私が致しましょう」

エデルガルトが前に進み出てきた。

「師匠」

「今回の作戦に最適な人員を選び抜きますので、エルウィン様はすぐに出れるように準備をお願い致します」

「分かりました」

頷くと、エルウィンは声を張り上げた。

「今回主要メンバーに選ばれなかった者達は城の警備を怠るな。東塔で怪しい動きが見て取れる。奴等から目を離すなっ!分かったか?!」

『はいっ!』

その場にいる全員が大きく返事をした―。
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