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7-17 脅迫と命令
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カツーン
カツーン…
ひんやりと冷え切った、人の気配が感じられない長く続く廊下。
そこをアリアドネは騎士ロイに連れられて歩いていた。
「…」
前方を歩くロイは先程から一言も話さず、ただ黙って前を見つめて歩いている。そしてその後ろを不安げな顔を浮かべて歩くアリアドネ。
(困ったわ…私は一体何処へ連れて行かれるのかしら…。先程、オズワルド様の所へ連れて行くと言われたけれども、オズワルド様とは一体どんな方なのかしら…)
考え事をして歩いていると騎士ロイと距離が空いてしまった。
すると彼はアリアドネを振り返った。
「さっさと歩くんだ。オズワルド様は待たされるのが一番嫌いなお方なのだから」
「は、はい。申し訳ございません」
慌てて謝罪したついでにアリアドネはオズワルドのことを尋ねようと思った。
「あ、あの…お尋ねしたいことがあるのですが、オズワルド様とは一体どの様な方なのでしょうか?」
「オズワルド様はランベール様の腹心であり、アイゼンシュタット城の第3騎士団長であらせられるお方だ」
ロイはアリアドネを見ることもなく答える。
「ランベール様の…」
アリアドネは口の中で小さく呟くも、ロイは全く反応はしなかった。
(私は何故呼び出されたのかしら…。恐らくこの方に尋ねても答えてくれないでしょうね…)
アリアドネは益々不安な気持ちがこみ上げてくるのだった―。
****
「ここだ、この部屋にオズワルド様がいらっしゃる」
ロイは黒い扉の前で足を止めると扉をノックした。
コンコン
「オズワルド様、アリアドネ・ステニウス伯爵令嬢をお連れ致しました」
「!」
ロイの言葉にアリアドネは自分の身元が完全にバレていることに驚いた。
『そうか、中に入れ』
扉の奥からは低音だが、よく響く声が聞こえてきた。
「聞こえただろう?扉を開けて中へ入れ」
ロイはアリアドネに扉を開けるように指示した。
「はい…」
覚悟を決めたアリアドネは震える手でノブを握ると、ゆっく扉を開いた。
「失礼致します」
すると、正面に大きなマホガニー製のテーブルに向かって座るオズワルドの姿がアリアドネの目に飛び込んできた
「…お前がアリアドネだな?」
オズワルドは冷たい視線でアリアドネをじっと見つめた。
「は、はい…アリアドネ・ステニウスと申します。あの…私に何か御用でしょうか…?」
「ああ、そうだ。用があるからお前を呼んだのだ。実はお前に頼みがあってな。」
「頼み…ですか?」
「そうだ。実はランベール様には2人のお子様がいらっしゃる。名はミカエル様とウリエル様だ。そして2人に仕える侍女がいた。だがエルウィン様に無礼を働いて侍女を解任されたのだ。そしてその侍女は今はメイドしてこの城で働いている」
「あ…」
その話はアリアドネの耳にも届いていた。ランベールの子の侍女だった女がエルウィンのベッドに忍び込み、追い出された話は城中に知れ渡っていたからだ。
「今現在お2人には侍女がいない。そこで新しい侍女を探しているのだが…お前にその役を任せようかと思って呼んだのだ」
「!」
あまりにも突然の話でアリアドネは耳を疑った。だが、アリアドネは貴族令嬢としての嗜みである礼儀作法を習った事など無かった。
「も、申し訳ございませんが…私には貴族令嬢の嗜みが一切ありません。侍女の仕事などとてもではありませんが出来そうにありません。お許しください」
アリアドネは必死になって頭を下げた。
「それはお前が妾腹の娘で、一切貴族の教育を受けて来なかったからだろう?だがメイドとしてのキャリアは長い。だからこの際、侍女では無く専属メイドとしてお前に働いて貰おうかと思ってな」
「で、ですが…」
尚も言いよどむアリアドネにオズワルドは視線を向けた。
「まさか断るつもりではないだろうな?元はと言えばランベール様が殺された事の発端はお前にあるということを忘れるな」
オズワルドの言葉にアリアドネは血の気が引いた―。
カツーン…
ひんやりと冷え切った、人の気配が感じられない長く続く廊下。
そこをアリアドネは騎士ロイに連れられて歩いていた。
「…」
前方を歩くロイは先程から一言も話さず、ただ黙って前を見つめて歩いている。そしてその後ろを不安げな顔を浮かべて歩くアリアドネ。
(困ったわ…私は一体何処へ連れて行かれるのかしら…。先程、オズワルド様の所へ連れて行くと言われたけれども、オズワルド様とは一体どんな方なのかしら…)
考え事をして歩いていると騎士ロイと距離が空いてしまった。
すると彼はアリアドネを振り返った。
「さっさと歩くんだ。オズワルド様は待たされるのが一番嫌いなお方なのだから」
「は、はい。申し訳ございません」
慌てて謝罪したついでにアリアドネはオズワルドのことを尋ねようと思った。
「あ、あの…お尋ねしたいことがあるのですが、オズワルド様とは一体どの様な方なのでしょうか?」
「オズワルド様はランベール様の腹心であり、アイゼンシュタット城の第3騎士団長であらせられるお方だ」
ロイはアリアドネを見ることもなく答える。
「ランベール様の…」
アリアドネは口の中で小さく呟くも、ロイは全く反応はしなかった。
(私は何故呼び出されたのかしら…。恐らくこの方に尋ねても答えてくれないでしょうね…)
アリアドネは益々不安な気持ちがこみ上げてくるのだった―。
****
「ここだ、この部屋にオズワルド様がいらっしゃる」
ロイは黒い扉の前で足を止めると扉をノックした。
コンコン
「オズワルド様、アリアドネ・ステニウス伯爵令嬢をお連れ致しました」
「!」
ロイの言葉にアリアドネは自分の身元が完全にバレていることに驚いた。
『そうか、中に入れ』
扉の奥からは低音だが、よく響く声が聞こえてきた。
「聞こえただろう?扉を開けて中へ入れ」
ロイはアリアドネに扉を開けるように指示した。
「はい…」
覚悟を決めたアリアドネは震える手でノブを握ると、ゆっく扉を開いた。
「失礼致します」
すると、正面に大きなマホガニー製のテーブルに向かって座るオズワルドの姿がアリアドネの目に飛び込んできた
「…お前がアリアドネだな?」
オズワルドは冷たい視線でアリアドネをじっと見つめた。
「は、はい…アリアドネ・ステニウスと申します。あの…私に何か御用でしょうか…?」
「ああ、そうだ。用があるからお前を呼んだのだ。実はお前に頼みがあってな。」
「頼み…ですか?」
「そうだ。実はランベール様には2人のお子様がいらっしゃる。名はミカエル様とウリエル様だ。そして2人に仕える侍女がいた。だがエルウィン様に無礼を働いて侍女を解任されたのだ。そしてその侍女は今はメイドしてこの城で働いている」
「あ…」
その話はアリアドネの耳にも届いていた。ランベールの子の侍女だった女がエルウィンのベッドに忍び込み、追い出された話は城中に知れ渡っていたからだ。
「今現在お2人には侍女がいない。そこで新しい侍女を探しているのだが…お前にその役を任せようかと思って呼んだのだ」
「!」
あまりにも突然の話でアリアドネは耳を疑った。だが、アリアドネは貴族令嬢としての嗜みである礼儀作法を習った事など無かった。
「も、申し訳ございませんが…私には貴族令嬢の嗜みが一切ありません。侍女の仕事などとてもではありませんが出来そうにありません。お許しください」
アリアドネは必死になって頭を下げた。
「それはお前が妾腹の娘で、一切貴族の教育を受けて来なかったからだろう?だがメイドとしてのキャリアは長い。だからこの際、侍女では無く専属メイドとしてお前に働いて貰おうかと思ってな」
「で、ですが…」
尚も言いよどむアリアドネにオズワルドは視線を向けた。
「まさか断るつもりではないだろうな?元はと言えばランベール様が殺された事の発端はお前にあるということを忘れるな」
オズワルドの言葉にアリアドネは血の気が引いた―。
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