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7-12 訪問
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朝の食事を終えて間もない頃―。
コンコン
ミカエルとウリエルの部屋の扉がノックされた。
「兄上、誰か来たよ」
クレヨンで絵を描いていたウリエルが本を読んでいたミカエルに声を掛けた。
「多分、ゾーイじゃないかな。ほっておけばいいさ。勝手に部屋に入ってくるだろう?」
ミカエルは顔も上げずに興味なさげに返事をする。
実はミカエルはゾーイの事が好きでは無かった。自分たちの侍女であるはずなのに、すぐに何処かへ行ってしまうからだ。用事があって探しに行けば、大抵騎士達と楽し気に話をしている。
そして、2人にこう言うのだった。
<お父様と側近の人達には決してこの話をしてはいけません。さもなくば今よりも学習の課題を増やしますよ>
と―。
(ウリエルはどう思っているか知らないけれど、僕はあんな侍女ならいなくても別に構うものか)
なので、ミカエルはノックの音を無視することに決めた。
「いいのかな~…出なくても…」
ウリエルは少し不安げミカエルを見つめている。
すると2人がノックに応じない為に、再び扉がノックされ、同時に呼びかける声が聞こえてきた。
コンコン
『ミカエル様、ウリエル様。いらっしゃいませんか?シュミットですが』
「あ!シュミットさんだっ!」
ウリエルは椅子から飛び降りるとすぐに扉に向い、大きく開け放った。
「いらっしゃい!シュミットさん。あ!スティーブさんも来てくれたんですか?!」
扉を開けたウリエルはすぐにシュミットの背後に立っていたスティーブに気付き、笑顔になる。
「ああ、こんにちは。ウリエル様」
スティーブの声がミカエルの耳にも届いてきた。
「え?シュミットさんとスティーブさんが来たの?!」
ミカエルも慌てて本に栞を挟み、扉に駆け寄ると嬉しそうにシュミットとスティーブに声を掛けた。
「おはようございます!シュミットさん、スティーブさん。まさかお2人がここへ来てくれるなんて思ってもいませんでした」
ミカエルもウリエルもエルウィン達の事が大好きだったのだ。
「ええ、おはようございます。ミカエル様、ウリエル様。ところで…ゾーイ様はいらっしゃいますか?」
シュミットは笑みを浮かべながら2人を見下ろし…部屋の中を見渡した。
「ゾーイならいないよ」
ウリエルが返事をする。
「え…いない…?それじゃ、2人きりでこの部屋にいたのか?」
スティーブが腕組みしながら尋ねた。
「はい、そうです。…でも、元々ゾーイはあまり僕達と一緒に過ごしていませんから」
ミカエルの言葉にシュミットは眉をしかめた。
「え…?どういうことなのです?」
「ゾーイはね、僕達に自習させるとすぐに何処かへ行っちゃうんだよ」
「何だって?それは本当の話なのか?」
スティーブが呆れた顔つきをする。
「そうです。あ、もしかしてゾーイに用事があったんですか?」
「ええ、そうなんです。実は…」
シュミットがミカエルに返事をしかけた時…。
「あ、あの…何か御用でしょうか?」
背後でゾーイの声が聞こえ、シュミットとスティーブが同時に振り向いた。
「「え…?」」
2人はゾーイの顔を見てギョッとした。
何故なら、現れたゾーイは真っ赤に泣きはらした目をしていたからであった―。
****
「それで…お話と言うのは何でしょうか…」
ゾーイはすっかり気落ちした様子で、シュミットの向かい側のソファに座っていた。
「ええ…それが…」
シュミットは言葉を濁しながら、何と言って話を切り出せばよいか考えていた。そして部屋の奥をチラリと見た。
そこにはミカエルとウリエルに剣の構え方を楽しげに教えているスティーブの姿があった。
(全く…スティーブは本当に呑気でうらやましいものだ)
シュミットは少しだけ恨め気にスティーブを見ていた。
「あの…?シュミット様…?」
いつまでも話を切り出さないシュミットに、ハンカチを握りしめたゾーイが声を掛けてくる。
(もう、ここまで来たらストレートに伝えてしまった方が良いかも知れないな…)
そこでスティーブは覚悟を決めてゾーイを見た―。
コンコン
ミカエルとウリエルの部屋の扉がノックされた。
「兄上、誰か来たよ」
クレヨンで絵を描いていたウリエルが本を読んでいたミカエルに声を掛けた。
「多分、ゾーイじゃないかな。ほっておけばいいさ。勝手に部屋に入ってくるだろう?」
ミカエルは顔も上げずに興味なさげに返事をする。
実はミカエルはゾーイの事が好きでは無かった。自分たちの侍女であるはずなのに、すぐに何処かへ行ってしまうからだ。用事があって探しに行けば、大抵騎士達と楽し気に話をしている。
そして、2人にこう言うのだった。
<お父様と側近の人達には決してこの話をしてはいけません。さもなくば今よりも学習の課題を増やしますよ>
と―。
(ウリエルはどう思っているか知らないけれど、僕はあんな侍女ならいなくても別に構うものか)
なので、ミカエルはノックの音を無視することに決めた。
「いいのかな~…出なくても…」
ウリエルは少し不安げミカエルを見つめている。
すると2人がノックに応じない為に、再び扉がノックされ、同時に呼びかける声が聞こえてきた。
コンコン
『ミカエル様、ウリエル様。いらっしゃいませんか?シュミットですが』
「あ!シュミットさんだっ!」
ウリエルは椅子から飛び降りるとすぐに扉に向い、大きく開け放った。
「いらっしゃい!シュミットさん。あ!スティーブさんも来てくれたんですか?!」
扉を開けたウリエルはすぐにシュミットの背後に立っていたスティーブに気付き、笑顔になる。
「ああ、こんにちは。ウリエル様」
スティーブの声がミカエルの耳にも届いてきた。
「え?シュミットさんとスティーブさんが来たの?!」
ミカエルも慌てて本に栞を挟み、扉に駆け寄ると嬉しそうにシュミットとスティーブに声を掛けた。
「おはようございます!シュミットさん、スティーブさん。まさかお2人がここへ来てくれるなんて思ってもいませんでした」
ミカエルもウリエルもエルウィン達の事が大好きだったのだ。
「ええ、おはようございます。ミカエル様、ウリエル様。ところで…ゾーイ様はいらっしゃいますか?」
シュミットは笑みを浮かべながら2人を見下ろし…部屋の中を見渡した。
「ゾーイならいないよ」
ウリエルが返事をする。
「え…いない…?それじゃ、2人きりでこの部屋にいたのか?」
スティーブが腕組みしながら尋ねた。
「はい、そうです。…でも、元々ゾーイはあまり僕達と一緒に過ごしていませんから」
ミカエルの言葉にシュミットは眉をしかめた。
「え…?どういうことなのです?」
「ゾーイはね、僕達に自習させるとすぐに何処かへ行っちゃうんだよ」
「何だって?それは本当の話なのか?」
スティーブが呆れた顔つきをする。
「そうです。あ、もしかしてゾーイに用事があったんですか?」
「ええ、そうなんです。実は…」
シュミットがミカエルに返事をしかけた時…。
「あ、あの…何か御用でしょうか?」
背後でゾーイの声が聞こえ、シュミットとスティーブが同時に振り向いた。
「「え…?」」
2人はゾーイの顔を見てギョッとした。
何故なら、現れたゾーイは真っ赤に泣きはらした目をしていたからであった―。
****
「それで…お話と言うのは何でしょうか…」
ゾーイはすっかり気落ちした様子で、シュミットの向かい側のソファに座っていた。
「ええ…それが…」
シュミットは言葉を濁しながら、何と言って話を切り出せばよいか考えていた。そして部屋の奥をチラリと見た。
そこにはミカエルとウリエルに剣の構え方を楽しげに教えているスティーブの姿があった。
(全く…スティーブは本当に呑気でうらやましいものだ)
シュミットは少しだけ恨め気にスティーブを見ていた。
「あの…?シュミット様…?」
いつまでも話を切り出さないシュミットに、ハンカチを握りしめたゾーイが声を掛けてくる。
(もう、ここまで来たらストレートに伝えてしまった方が良いかも知れないな…)
そこでスティーブは覚悟を決めてゾーイを見た―。
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