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7-4 ゾーイとダリウスの口論
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「君は一体誰なんだ?相手に名前を名乗らせたのなら自分でも名乗るのが礼儀だろう?」
ダリウスはゾーイからアリアドネを庇うように前に立った。
「な、何よ…。貴方は…」
ゾーイはダリウスの姿を不躾に見渡した。
(安物の麻のシャツにシミの付いた黄ばんだエプロン…トラウザーだって安物ね…毛玉が浮いてるじゃないの)
「何だ?君は…。人のことをジロジロ見て…何処までも失礼な女だな」
その言い方にゾーイはカチンときた。
「な、何ですって…貴方、一体誰に向かって口を利いてるの?貧しくて教養も無い平民のくせに…!いい?私はランベール様の2人のお子様の侍女なのよ?子爵家の爵位だって持っているのよっ?!」
(子爵家…!やっぱりこの方は貴族の御令嬢だったのだわ…!そんな方の前で…この様な身なりで私は挨拶してしまったのね…)
アリアドネはゾーイを見ることが出来ず、目を伏せた。
いつの間にかアリアドネ達の周りには人だかりが出来ていた。彼等はドレス姿で現れたゾーイに興味津々だったのだ。
「子爵家の令嬢だから、どうだというのだ?偉いのはお前では無く、父親なんじゃないのか?」
ダリウスは動じること無くゾーイを睨む。
(な、何なのよっ?!この男は…!なんって失礼な男なのっ?!)
「お、お前…情けないとは思わないの?!女性相手にそんな口をきいて…少しも紳士じゃないわねっ?!」
「ああ、そうだな。俺は…お前が底辺と言う平民だからな」
ざわっ…
その言葉に周囲にいた人々がざわめいた。
「おい…聞いたか?」
「ええ、聞いたわ」
「何が底辺だよ」
「私達が働いているから暮らしていけるのに…」
ゾーイに周囲から敵意の目が向けられる。
「な、な、何よ…ほ、本当の事を言って何が悪いのよ…」
ゾーイは怯えながらも気丈に振るまう。
「何ですって?」
「随分偉そうな口を叩くな?」
「何も出来ないくせに…」
周囲の敵意がますます強くなったその時―。
「どうした?何の騒ぎだ?!」
異変を感じ取ったエルウィンがミカエルとウリエルを連れてやってきた。
「あ…エルウィン様っ!」
ゾーイが涙目になってエルウィンに駆け寄った。
「な、何だっ?!一体…」
「ここの人達が…大勢で寄ってたかって私を虐めるんですっ!」
「…そうなのか?」
正義感が強いエルウィンは集まっていた領民や下働きの者たちを見渡した。
「この女の言ってる事は事実なのか?」
すると、ダリウスが一歩進み出ると言った。
「別に虐めてなどいませんよ。第一…先に失礼なことを言ってきたのはそこの女性ですからね?」
ダリウスの背後にはアリアドネがいた。
(あの娘は…リア…!それに…この男は…確かリアと親しげな…)
エルウィンは眉をしかめながら尋ねた。
「失礼なこととは何だ?」
「ええ、そこの女性が彼女に言ったんですよ。そんな小汚い身なりで、すごく獣臭い匂いをさせて、よくも平気でエルウィン様の前に立てるものだと」
ダリウスはアリアドネを振り向きながら言った。
「何だって?」
エルウィンの眉が上がる。
「お前…そんな事をあの女に言ったのか?」
エルウィンは背後にいるゾーイに尋ねた。
「あ…そ、それは…」
ゾーイは顔を青ざめさせ、震えている。
「どうなんだ?答えろ」
エルウィンは苛立ちを募らせながらゾーイに再度尋ねる。
「は…はい…言いました…」
その言葉にエルウィンはカッとなった。領民や下働きの者たちを思いやるエルウィンにとっては許しがたい発言だった。
「!お前は…っ!」
エルウィンが声を荒らげようとした時―。
「お待ち下さいっ!」
アリアドネが声を上げた。
「…」
エルウィンはアリアドネをじっとみる。周囲の人々も成り行きを見守っている。
「お願いです…どうか…その方を許して頂けませんか?身なりが汚いのも…獣臭い匂いも…本当のことですから…」
アリアドネは必死になって頭を下げた。
「お前…」
(何故だ?自分が馬鹿にされたのに…何故お前が謝るのだ…?)
エルウィンにはアリアドネの気持ちが理解できなかった。しかし…。
「分かった…お前に免じてこの女のことは許すことにしよう…」
そしてミカエルとウリエルに声を掛けた。
「…戻ろう」
「分かりました…」
「はい…」
すっかり気が削がれてしまった2人は項垂れながら返事をした。
「…邪魔したな」
そしてエルウィンはミカエルとウリエルを連れ…後から追いすがるゾーイに目もくれることも無く、仕事場を後にした―。
ダリウスはゾーイからアリアドネを庇うように前に立った。
「な、何よ…。貴方は…」
ゾーイはダリウスの姿を不躾に見渡した。
(安物の麻のシャツにシミの付いた黄ばんだエプロン…トラウザーだって安物ね…毛玉が浮いてるじゃないの)
「何だ?君は…。人のことをジロジロ見て…何処までも失礼な女だな」
その言い方にゾーイはカチンときた。
「な、何ですって…貴方、一体誰に向かって口を利いてるの?貧しくて教養も無い平民のくせに…!いい?私はランベール様の2人のお子様の侍女なのよ?子爵家の爵位だって持っているのよっ?!」
(子爵家…!やっぱりこの方は貴族の御令嬢だったのだわ…!そんな方の前で…この様な身なりで私は挨拶してしまったのね…)
アリアドネはゾーイを見ることが出来ず、目を伏せた。
いつの間にかアリアドネ達の周りには人だかりが出来ていた。彼等はドレス姿で現れたゾーイに興味津々だったのだ。
「子爵家の令嬢だから、どうだというのだ?偉いのはお前では無く、父親なんじゃないのか?」
ダリウスは動じること無くゾーイを睨む。
(な、何なのよっ?!この男は…!なんって失礼な男なのっ?!)
「お、お前…情けないとは思わないの?!女性相手にそんな口をきいて…少しも紳士じゃないわねっ?!」
「ああ、そうだな。俺は…お前が底辺と言う平民だからな」
ざわっ…
その言葉に周囲にいた人々がざわめいた。
「おい…聞いたか?」
「ええ、聞いたわ」
「何が底辺だよ」
「私達が働いているから暮らしていけるのに…」
ゾーイに周囲から敵意の目が向けられる。
「な、な、何よ…ほ、本当の事を言って何が悪いのよ…」
ゾーイは怯えながらも気丈に振るまう。
「何ですって?」
「随分偉そうな口を叩くな?」
「何も出来ないくせに…」
周囲の敵意がますます強くなったその時―。
「どうした?何の騒ぎだ?!」
異変を感じ取ったエルウィンがミカエルとウリエルを連れてやってきた。
「あ…エルウィン様っ!」
ゾーイが涙目になってエルウィンに駆け寄った。
「な、何だっ?!一体…」
「ここの人達が…大勢で寄ってたかって私を虐めるんですっ!」
「…そうなのか?」
正義感が強いエルウィンは集まっていた領民や下働きの者たちを見渡した。
「この女の言ってる事は事実なのか?」
すると、ダリウスが一歩進み出ると言った。
「別に虐めてなどいませんよ。第一…先に失礼なことを言ってきたのはそこの女性ですからね?」
ダリウスの背後にはアリアドネがいた。
(あの娘は…リア…!それに…この男は…確かリアと親しげな…)
エルウィンは眉をしかめながら尋ねた。
「失礼なこととは何だ?」
「ええ、そこの女性が彼女に言ったんですよ。そんな小汚い身なりで、すごく獣臭い匂いをさせて、よくも平気でエルウィン様の前に立てるものだと」
ダリウスはアリアドネを振り向きながら言った。
「何だって?」
エルウィンの眉が上がる。
「お前…そんな事をあの女に言ったのか?」
エルウィンは背後にいるゾーイに尋ねた。
「あ…そ、それは…」
ゾーイは顔を青ざめさせ、震えている。
「どうなんだ?答えろ」
エルウィンは苛立ちを募らせながらゾーイに再度尋ねる。
「は…はい…言いました…」
その言葉にエルウィンはカッとなった。領民や下働きの者たちを思いやるエルウィンにとっては許しがたい発言だった。
「!お前は…っ!」
エルウィンが声を荒らげようとした時―。
「お待ち下さいっ!」
アリアドネが声を上げた。
「…」
エルウィンはアリアドネをじっとみる。周囲の人々も成り行きを見守っている。
「お願いです…どうか…その方を許して頂けませんか?身なりが汚いのも…獣臭い匂いも…本当のことですから…」
アリアドネは必死になって頭を下げた。
「お前…」
(何故だ?自分が馬鹿にされたのに…何故お前が謝るのだ…?)
エルウィンにはアリアドネの気持ちが理解できなかった。しかし…。
「分かった…お前に免じてこの女のことは許すことにしよう…」
そしてミカエルとウリエルに声を掛けた。
「…戻ろう」
「分かりました…」
「はい…」
すっかり気が削がれてしまった2人は項垂れながら返事をした。
「…邪魔したな」
そしてエルウィンはミカエルとウリエルを連れ…後から追いすがるゾーイに目もくれることも無く、仕事場を後にした―。
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