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5-15 幽閉されるランベール
しおりを挟むここは壁に取り付けられた松明で、オレンジ色の明かりがゆらゆらと揺れる薄明かりに照らされた冷たい地下室―
ガチャーンッ!!
ランベールが地下牢に入れられ、鉄格子に南京錠が掛けられた。
「エルウィンッ!貴様…よくも…私をこんな場所にっ!」
ランベールは冷たい鉄格子にしがみつくと、憎悪の込められた目でエルウィンを睨みつけた。
「こんな場所?まさに今の叔父上にピッタリの場所ではありませんか?」
エルウィンは肩をすくめながら言う。
「ええ、そうですぜ?ランベール様。ここの地下牢は特別に仕立てた場所です。何と牢屋なのに暖炉はあるし、机にベッド、簡易トイレまで付いてるじゃありませんか?しかも一人部屋でこんなに広々としている」
スティーブは笑みを浮かべながらランベールを見た。
「き、貴様ら…っ!」
ランベールは下唇を噛み締めながら悔しげに呻く。
「叔父上、何か欲しい物があればお届けしますよ?ああ…尤も女の差し入れは無理ですがね。せいぜい残りの越冬期間…禁欲生活に励んで下さい」
エルウィンは腕組みしながら、思い切り侮蔑を含んだ嫌味な言い方をした。
「ええ、そうですね。あ、酒も届けられませんので」
スティーブが後に続く。
「おのれ…!このままで済むと思うなよっ!言っておくが…この城に済む半数の者たちは私の見方だと言う事を忘れるなっ!」
激しく吠えるランベールにエルウィンが恫喝した。
「黙れランベールッ!!貴様…もう忘れたのかっ?!この城の城主は俺であると言うことをっ!!」
「!」
これには流石のランベールも黙ってしまった。
「…行くぞ、スティーブ」
「はい、大将」
そしてエルウィンは靴音を響かせ、スティーブを連れて冷たい地下牢を後にした―。
****
一方、その頃アリアドネはシュミットに連れられて仕事場へと向かっていた。
「…」
アリアドネの小さな身体はすっかり怯え、震えている。
「…大丈夫ですか?アリアドネ様…」
「は、はい…申し訳ございません…ま、まだ身体の震えが…」
「アリアドネ様…申し訳ございません」
シュミットは頭を下げた。
「え?何を謝るのですか?」
「いえ…あの時の状況を考えれば、いずれランベール様はアリアドネ様を狙って来るのは予想がついたのに…うっかり油断しておりました」
「そんな…シュミット様のせいではありません。ですが…助けに来ていただいて、本当にありがとうございます。…嬉しかったです」
そしてアリアドネは笑みを浮かべた。
「アリアドネ様…」
シュミットはアリアドネの笑顔を見て、胸が締め付けられそうになった。そして、自分の中にある感情が芽生えてくるのを感じざるを得なかった―。
****
「アリアドネッ!」
地下通路へ続く階段を上りきって、仕事場へ戻るとセイラとイゾルネ、マリアの3人が駆けつけてきた。
「皆さんっ!」
アリアドネも3人に向かって掛けていく。
「良かった…アリアドネッ!本当に無事で…!」
マリアがアリアドネを強く抱きしめた。
「ランベール様がここへ現れた時…すぐに嫌な予感が頭をよぎったんだよ。そして雪かきをしている男衆に助けを求めに行ったら…真っ先にエルウィン様が動いたんだよ」
「え?エルウィン様が…?」
「ああ、エルウィン様も外で雪かき作業をしていたのだけど、女性がランベール様に連れ去られてしまったと話をしたら、真っ青な顔色になって…スコップを放り投げてアリアドネを助けに向かったんだよ。勿論、そこにいるシュミット様とスティーブ様も一緒になってね」
マリアがシュミットに視線を移した。
「ええ、本当に驚きました。まさかあれほどまでにエルウィン様が血相を変えて助けに向かう姿を私は始めて見ました」
シュミットの言葉にアリアドネの頬がうっすら赤く染まる。
「そうだったのですか…エルウィン様が…」
アリアドネが嬉しそうにエルウィンの名を口にする姿に…シュミットは自分の胸が痛むのを感じるのだった―。
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