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5-11 久しぶりの静寂
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季節は早いもので、12月になっていた。
『アイデン』はますます冬の寒さが厳しさを増し、外は1日中吹雪が続く日が何日も続き…ようやく今朝は久しぶりに雪がやんだ―。
午前9時―
アリアドネ達はいつものように仕事前の朝礼で、寮長のビルの前に集まっていた。
すると彼は全員をグルリと見渡すと口を開いた。
「全員聞いてくれ。今日は珍しく半月ぶりに吹雪が収まった。そこで男衆は今日は雪かきの仕事をしてほしいとアイゼンシュタット城からお達しが下った。男衆は外へ出る準備が終わったら雪かきの仕事に回ってくれ。女性陣はいつも通り、各自の持ち場で仕事をするように」
『はい!』
その場にいる全員が返事をした―。
****
男性達が全員雪かきの準備をする為に仕事場を出ていくと、途端に作業場はガランとしてしまった。
「男の人たちが仕事場からいなくなると、閑散としてしまいますね…」
アリアドネは今日は糸紬の作業をしていた。隣ではセイラが一緒に作業をしている。
「ええ、そうね。何しろ久しぶりに吹雪がやんだから今の内に雪かきをしておかないと城が雪に埋もれてしまうからね。いくら石造りの頑丈な城だとは言っても、雪の重さは相当なものだから、ほんの少しでも吹雪がやむと男性陣は全員駆り出されるのよ。勿論城にいる男性も全員ね」
「え?それでは騎士の方も兵士の方たちも…ですか?」
「ええ、当然よ」
「そうなのですか…」
その時、アリアドネは思った。
エルウィンも外の雪かきに駆り出されるのだろうか…と。
アリアドネのポケットにはいまだにエルウィンに返せていないクラバットが入っていた―。
****
その頃、執務室ではエルウィンとシュミットが激しく口論していた。
「なりません!」
「何故だっ?!俺も外に出て雪かきをやらせろっ!毎日毎日執務室に籠って書類ばかり見ていると頭が痛くなってくるんだよっ!」
「それはエルウィン様がすぐに仕事をさぼろうとされるからでしょう?ほんの少し目を離せばいつの間にか、地下の鍛錬場に行ったり、剣の手入れをしていたり…だから書類がたまっていく一方なのですよ?」
「う…し、仕方ないだろう?俺はもともと…」
「戦うことが専門だと仰りたいのは良くわかります。確かに辺境伯の役割は他国からの侵略者から国を守るのが重要な役割ではありますが、それだけではないでしょう?仮にもエルウィン様は『アイデン』地方の領主なのですよ?領民の為に働くのも大事な務めなのです。まさかそれをお忘れではないでしょうね」
「うっ!」
言葉巧みなシュミットに理詰めで話をされては、さすがのエルウィンも太刀打ち出来ない。
「大体、以前お話しておりませんでしたか?面目に仕事をすれば早く終わる。早く終われば領民達と話が出来ると。一体、どうされてしまったのです?」
「ふん、そう言えばそんな話もしたかもな」
エルウィンは不貞腐れた様子で返事をする。
(大体…俺が仕事場に行けるはず無いだろう?毎日毎日スティーブがあの領民のところへ通っているのだから、どうして俺が顔を出せるというのだ?)
エルウィンは自分の気持ちに全く気付いていなかったのだ。
自分があの仕事場に足を運ぼうと思ったのはアリアドネがいるからだと言うことに。
「とにかく、エルウィン様には…」
尚も話を続けようとするシュミットにエルウィンは言い放った。
「うるさいっ!ずっと机に向かっていれば身体がなまる!1時間…いや、2時間は俺も雪かきをしてくるからなっ!」
そう言い放つとエルウィンは椅子から立ち上がり、部屋を飛び出して行ってしまった。
「お待ち下さいっ!」
シュミットが静止する声も聞かずに…。
そして一方、アリアドネの身に危機が迫っていた―。
『アイデン』はますます冬の寒さが厳しさを増し、外は1日中吹雪が続く日が何日も続き…ようやく今朝は久しぶりに雪がやんだ―。
午前9時―
アリアドネ達はいつものように仕事前の朝礼で、寮長のビルの前に集まっていた。
すると彼は全員をグルリと見渡すと口を開いた。
「全員聞いてくれ。今日は珍しく半月ぶりに吹雪が収まった。そこで男衆は今日は雪かきの仕事をしてほしいとアイゼンシュタット城からお達しが下った。男衆は外へ出る準備が終わったら雪かきの仕事に回ってくれ。女性陣はいつも通り、各自の持ち場で仕事をするように」
『はい!』
その場にいる全員が返事をした―。
****
男性達が全員雪かきの準備をする為に仕事場を出ていくと、途端に作業場はガランとしてしまった。
「男の人たちが仕事場からいなくなると、閑散としてしまいますね…」
アリアドネは今日は糸紬の作業をしていた。隣ではセイラが一緒に作業をしている。
「ええ、そうね。何しろ久しぶりに吹雪がやんだから今の内に雪かきをしておかないと城が雪に埋もれてしまうからね。いくら石造りの頑丈な城だとは言っても、雪の重さは相当なものだから、ほんの少しでも吹雪がやむと男性陣は全員駆り出されるのよ。勿論城にいる男性も全員ね」
「え?それでは騎士の方も兵士の方たちも…ですか?」
「ええ、当然よ」
「そうなのですか…」
その時、アリアドネは思った。
エルウィンも外の雪かきに駆り出されるのだろうか…と。
アリアドネのポケットにはいまだにエルウィンに返せていないクラバットが入っていた―。
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その頃、執務室ではエルウィンとシュミットが激しく口論していた。
「なりません!」
「何故だっ?!俺も外に出て雪かきをやらせろっ!毎日毎日執務室に籠って書類ばかり見ていると頭が痛くなってくるんだよっ!」
「それはエルウィン様がすぐに仕事をさぼろうとされるからでしょう?ほんの少し目を離せばいつの間にか、地下の鍛錬場に行ったり、剣の手入れをしていたり…だから書類がたまっていく一方なのですよ?」
「う…し、仕方ないだろう?俺はもともと…」
「戦うことが専門だと仰りたいのは良くわかります。確かに辺境伯の役割は他国からの侵略者から国を守るのが重要な役割ではありますが、それだけではないでしょう?仮にもエルウィン様は『アイデン』地方の領主なのですよ?領民の為に働くのも大事な務めなのです。まさかそれをお忘れではないでしょうね」
「うっ!」
言葉巧みなシュミットに理詰めで話をされては、さすがのエルウィンも太刀打ち出来ない。
「大体、以前お話しておりませんでしたか?面目に仕事をすれば早く終わる。早く終われば領民達と話が出来ると。一体、どうされてしまったのです?」
「ふん、そう言えばそんな話もしたかもな」
エルウィンは不貞腐れた様子で返事をする。
(大体…俺が仕事場に行けるはず無いだろう?毎日毎日スティーブがあの領民のところへ通っているのだから、どうして俺が顔を出せるというのだ?)
エルウィンは自分の気持ちに全く気付いていなかったのだ。
自分があの仕事場に足を運ぼうと思ったのはアリアドネがいるからだと言うことに。
「とにかく、エルウィン様には…」
尚も話を続けようとするシュミットにエルウィンは言い放った。
「うるさいっ!ずっと机に向かっていれば身体がなまる!1時間…いや、2時間は俺も雪かきをしてくるからなっ!」
そう言い放つとエルウィンは椅子から立ち上がり、部屋を飛び出して行ってしまった。
「お待ち下さいっ!」
シュミットが静止する声も聞かずに…。
そして一方、アリアドネの身に危機が迫っていた―。
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