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1−21 言いくるめられる辺境伯
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「全く…妻などいらないと断ったはずなのに何故あいつらは勝手に押しかけてきたのだ?しかもミレーユではなく、よりにもよって妾腹の娘だぞ?くそっ!ステニウス伯爵め…俺のことを見下しやがって…。しかもあんな貧しい身なりの娘を…人をバカにするにも程がある!」
エルウィンはイライラしながらブツブツ呟いている。一方、シュミットは呆然とその話を聞いていた。
(そう言えば…アリアドネ様はミレーユ様とは腹違いの娘だと話されていた。てっきり側室の御令嬢だと思っていたのに、まさか妾腹の娘だったなんて…だからなのだろうか?あの身なりはとてもではないが輿入れに来た女性が着るようなドレスではなかった…)
そこでシュミットは思った。
きっとアリアドネは…伯爵家から見捨てられた生活を強いられていたのだと。そしてミレーユの代わりに無理やり嫁がされてきたのだと言うことを…。
「おい!シュミットッ!」
不意にエルウィンに名前を呼ばれてシュミットは我に返った。
「はい、何でしょうか?エルウィン様」
「どう言う事なのだ?俺ははっきり妻はいらない。報奨金だけ受け取らせて貰うように陛下に伝えろと言っただろう?それなのに何故あいつ等はこの城へやってきたのだ?しかもたった2人きりで!絶対厄介者を俺に押し付けたに決まっているっ!」
「それは…」
恐らく、エルウィンの考えたとおりなのだろうとシュミットは思った。だが、その事をエルウィンに伝えようものなら火に油を注ぐようなものである。
(全く…)
シュミットは考えをまとめると口を開いた。
「恐らく、ステニウス伯爵は陛下からの書簡を待たずに2人きりでこの城へ向かうように命じられたのではないでしょうか?エルウィン様の話ではその女性は妾腹の娘だったのですよね?」
「ああ、そうだ」
「きっと…ステニウス伯爵はその女性を守る為に…こちらへ嫁がせたのではないでしょうか?私はそう思います」
「は?お前…一体何を言ってるんだ?」
エルウィンが首を傾げた。一方のスティーブも驚いた様子でシュミットに視線を送る。
(こいつ…いきなり何を言い出すつもりだ…?)
「つまり、その女性はステニウス家でミレーユ様とミレーユ様の母君にいじめられていたのではないでしょうか?そして伯爵はそれを止めることが出来なかった…。何故なら自分の妾の娘だったからです。やましい気持ちがあった為に、止める事が出来なかったのでしょう。そして今回、陛下からエルウィン様との婚姻話が浮上し…伯爵はその娘をミレーユ様と母君から守る為に急ぎで嫁がせようとされたのでしょう」
シュミットの弁論をスティーブは呆れた様に聞いていた。
(こ、こいつ…とんでも無い奴だな…良くもそこまで話を作り上げられるものだ。だが、エルウィン様がそんな話信じるとは思えないが…)
するとエルウィンは少しの間、沈黙していたが…ポツリと言った。
「そう…なのか…?ステニウス伯爵はその娘を守る為にここへ送ってきたのか…?」
(えっ?!嘘だろうっ!大将、こいつの話信じるのかっ?!)
スティーブは驚きのあまり、エルウィンとシュミットの顔を交互に見た。
「はい、そうです」
シュミットは頷いた。
(マジかっ?!シュミットの奴…言い切ったぞっ!!)
スティーブはもはや呆れてしまった。
「だが、俺は妻などいらぬっ!だから追い返してやったのだ。今頃はもう宿場町にでも到着しただろう。ここへ置いてもらいたいと頭を下げてきたがな…目障りだと言って追い払ってやった!あいつらの事情など知った事かっ!こちらにだってそれなりの事情があるのだからなっ!それを…陛下も他の貴族達だって…俺達の事を何も知らないから…勝手に俺の婚姻話を持ち出してきたに決まっている!」
「エルウィン様…」
「大将…」
「兎に角、あいつらはここから出ていった。だが…俺があの女を追い払った事は絶対陛下にもステニウス伯爵にも伝えるなよ?行き場が無いなら、勝手に他の土地へ行って暮せばいいんだ。少なくともここで暮らすよりは…マシな生活がおくれるだろう。いいか?2人共今回の事…口外しないように城の者たちに箝口令を敷いておけ。分かったか?」
「はい」
「分かりました」
スティーブとシュミットは返事をした。
「ところで…エルウィン様はその女性を見てどう思いましたか?」
シュミットは尋ねた。
「どうって…何がだ?」
エルウィンは首を傾げる。
「いえ、美しかったとか…可憐だったとか…」
シュミットは無意識に自分がアリアドネを見て感じたことを尋ねていた。
「さぁな。顔など見てないから分からん」
「えっ?顔を見て…おられないのですか?」
シュミットは驚いた。勿論スティーブもだった。
「ああ、嫁にするつもりもない女の顔など拝んでどうする?」
エルウィンは興味なさげに答える。
「そう…でしたか…」
返事をしながらシュミットは思った。
もしかすると…アリアドネの顔をエルウィンが見ていたら、追い出す事は無かったのではないだろうか…と―。
エルウィンはイライラしながらブツブツ呟いている。一方、シュミットは呆然とその話を聞いていた。
(そう言えば…アリアドネ様はミレーユ様とは腹違いの娘だと話されていた。てっきり側室の御令嬢だと思っていたのに、まさか妾腹の娘だったなんて…だからなのだろうか?あの身なりはとてもではないが輿入れに来た女性が着るようなドレスではなかった…)
そこでシュミットは思った。
きっとアリアドネは…伯爵家から見捨てられた生活を強いられていたのだと。そしてミレーユの代わりに無理やり嫁がされてきたのだと言うことを…。
「おい!シュミットッ!」
不意にエルウィンに名前を呼ばれてシュミットは我に返った。
「はい、何でしょうか?エルウィン様」
「どう言う事なのだ?俺ははっきり妻はいらない。報奨金だけ受け取らせて貰うように陛下に伝えろと言っただろう?それなのに何故あいつ等はこの城へやってきたのだ?しかもたった2人きりで!絶対厄介者を俺に押し付けたに決まっているっ!」
「それは…」
恐らく、エルウィンの考えたとおりなのだろうとシュミットは思った。だが、その事をエルウィンに伝えようものなら火に油を注ぐようなものである。
(全く…)
シュミットは考えをまとめると口を開いた。
「恐らく、ステニウス伯爵は陛下からの書簡を待たずに2人きりでこの城へ向かうように命じられたのではないでしょうか?エルウィン様の話ではその女性は妾腹の娘だったのですよね?」
「ああ、そうだ」
「きっと…ステニウス伯爵はその女性を守る為に…こちらへ嫁がせたのではないでしょうか?私はそう思います」
「は?お前…一体何を言ってるんだ?」
エルウィンが首を傾げた。一方のスティーブも驚いた様子でシュミットに視線を送る。
(こいつ…いきなり何を言い出すつもりだ…?)
「つまり、その女性はステニウス家でミレーユ様とミレーユ様の母君にいじめられていたのではないでしょうか?そして伯爵はそれを止めることが出来なかった…。何故なら自分の妾の娘だったからです。やましい気持ちがあった為に、止める事が出来なかったのでしょう。そして今回、陛下からエルウィン様との婚姻話が浮上し…伯爵はその娘をミレーユ様と母君から守る為に急ぎで嫁がせようとされたのでしょう」
シュミットの弁論をスティーブは呆れた様に聞いていた。
(こ、こいつ…とんでも無い奴だな…良くもそこまで話を作り上げられるものだ。だが、エルウィン様がそんな話信じるとは思えないが…)
するとエルウィンは少しの間、沈黙していたが…ポツリと言った。
「そう…なのか…?ステニウス伯爵はその娘を守る為にここへ送ってきたのか…?」
(えっ?!嘘だろうっ!大将、こいつの話信じるのかっ?!)
スティーブは驚きのあまり、エルウィンとシュミットの顔を交互に見た。
「はい、そうです」
シュミットは頷いた。
(マジかっ?!シュミットの奴…言い切ったぞっ!!)
スティーブはもはや呆れてしまった。
「だが、俺は妻などいらぬっ!だから追い返してやったのだ。今頃はもう宿場町にでも到着しただろう。ここへ置いてもらいたいと頭を下げてきたがな…目障りだと言って追い払ってやった!あいつらの事情など知った事かっ!こちらにだってそれなりの事情があるのだからなっ!それを…陛下も他の貴族達だって…俺達の事を何も知らないから…勝手に俺の婚姻話を持ち出してきたに決まっている!」
「エルウィン様…」
「大将…」
「兎に角、あいつらはここから出ていった。だが…俺があの女を追い払った事は絶対陛下にもステニウス伯爵にも伝えるなよ?行き場が無いなら、勝手に他の土地へ行って暮せばいいんだ。少なくともここで暮らすよりは…マシな生活がおくれるだろう。いいか?2人共今回の事…口外しないように城の者たちに箝口令を敷いておけ。分かったか?」
「はい」
「分かりました」
スティーブとシュミットは返事をした。
「ところで…エルウィン様はその女性を見てどう思いましたか?」
シュミットは尋ねた。
「どうって…何がだ?」
エルウィンは首を傾げる。
「いえ、美しかったとか…可憐だったとか…」
シュミットは無意識に自分がアリアドネを見て感じたことを尋ねていた。
「さぁな。顔など見てないから分からん」
「えっ?顔を見て…おられないのですか?」
シュミットは驚いた。勿論スティーブもだった。
「ああ、嫁にするつもりもない女の顔など拝んでどうする?」
エルウィンは興味なさげに答える。
「そう…でしたか…」
返事をしながらシュミットは思った。
もしかすると…アリアドネの顔をエルウィンが見ていたら、追い出す事は無かったのではないだろうか…と―。
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