182 / 200
第2章 120 彩花からのプロポーズ
しおりを挟む
俺たちは今向かい合わせでコーヒーを飲んでいた。
「ねぇ、たっくんは…これからどうなるのかな?」
神妙な顔で彩花が尋ねてくる。
「卓也は、今日は1日警察の方で預かって貰えるだろう。そして…明日からは取り敢えず児童養護施設に入れられる事になるだろうな」
そう……今迄何度も何度も同じ経験をしてきた俺には卓也がどうなるか分かりきっていた。
「たっくん…。私が引き取りたかったのに…」
え?
その言葉に耳を疑った。今迄繰り返してきた過去の世界で、彩花は一度もそんな台詞を言ったことが無かった。
これは初めてのことだった。
だけど……。
「いくら何でもそれは無理だ。だいたい独身女性では養子縁組する資格がないし、実の親の許可がいる」
そんなのは所詮夢物語に過ぎない。
「そんな…っ!あんな…あんな父親、たっくんを育てる権利は無いよっ!自分の子供に酷い暴力を振るうなんて…!父親が子供を殺しかねないような状況なら、そんなの適用されないんじゃないのっ?!」
「あ、彩花…」
彩花の取り乱した様子に戸惑ってしまった。
「あ…ご、ごめんなさい…。つ、つい…」
「いや…別にいいよ。それだけ、彩花が卓也のことを思ってくれているって証拠だろう?きっと…卓也は感謝しているよ」
俺は今も彩花に感謝しか無い。
無意識に愛しい彩花の頭を撫でていた。
「だけど児相になんて…私じゃ…どうあってもたっくんを引き取れないのね…?」
「…そうだな」
独身で一人暮らしの女性が子供を引き取れるはずがない。
すると、何故か彩花がじっと俺を見つめてきた。
「彩花?どうした?」
「…ねぇ、拓也さん」
不意に切羽詰まった様子で声を掛けてきた。
「ん?」
「拓也さんは…。今、恋人はいないんだよね?」
「あ、ああ…。今はもう…いないよ」
そうだ。
俺は……お前を何度も何度も失ってきたんだ。
しかし、彩花は次の瞬間とんでもないことを言ってきた。
「ねぇ、それなら…私と結婚してくれる?」
「は…はぁっ?!あ、彩花…!い、一体何を言い出すんだよ!」
まさか彩花からプロポーズッ?!
俺たちは恋人同士でもないのにっ?!思わず耳を疑う。
「お願い…私、たっくんを助けてあげたいの…。たっくんが18歳になるまでの間…書類上だけの結婚でいいから…私と結婚してもらえない?そうすればたっくんを引き取る事が出来るもの」
「あ、彩花…」
まるで夢みたいだ。
どうしよう、あまりに幸せすぎて自分でも顔が赤らんでくるのが分かる。
「あ、あの…だ、駄目…かな…」
伏し目がちに彩花が再度尋ねてきた。
「彩花…」
だけど、俺と彩花の結末はもう分かりきっていた。
6月9日……彩花は死ぬ。
けれど、今回はそうはさせない。自分の身を犠牲にして……彩花の命を救うんだ。
だから幸せな生活を夢見てはいけないんだ。
強く自分の心に言い聞かせた。
「ご、ごめんなさい…変な事…言って…。やっぱり…たっくんの養子縁組の話は…」
「2ヶ月後…」
気づけば無意識に返事をしていた。
「え?」
「2ヶ月後の…6月9日に…返事してもいいかな?」
この日、俺と彩花の運命が決まる。
もし……本当に仮に、2人とも無事にこの日を生き残ることが出来れば俺はもう二度と彩花の側から離れない。
「え?6月9日…?それって…?」
「ああ、卓也の…誕生日だ。それを過ぎたら…養子縁組の話…しないか?」
これは一種の賭けだ。
「う、うん…いいよ」
彩花は俺の言葉に頷いた――。
「ねぇ、たっくんは…これからどうなるのかな?」
神妙な顔で彩花が尋ねてくる。
「卓也は、今日は1日警察の方で預かって貰えるだろう。そして…明日からは取り敢えず児童養護施設に入れられる事になるだろうな」
そう……今迄何度も何度も同じ経験をしてきた俺には卓也がどうなるか分かりきっていた。
「たっくん…。私が引き取りたかったのに…」
え?
その言葉に耳を疑った。今迄繰り返してきた過去の世界で、彩花は一度もそんな台詞を言ったことが無かった。
これは初めてのことだった。
だけど……。
「いくら何でもそれは無理だ。だいたい独身女性では養子縁組する資格がないし、実の親の許可がいる」
そんなのは所詮夢物語に過ぎない。
「そんな…っ!あんな…あんな父親、たっくんを育てる権利は無いよっ!自分の子供に酷い暴力を振るうなんて…!父親が子供を殺しかねないような状況なら、そんなの適用されないんじゃないのっ?!」
「あ、彩花…」
彩花の取り乱した様子に戸惑ってしまった。
「あ…ご、ごめんなさい…。つ、つい…」
「いや…別にいいよ。それだけ、彩花が卓也のことを思ってくれているって証拠だろう?きっと…卓也は感謝しているよ」
俺は今も彩花に感謝しか無い。
無意識に愛しい彩花の頭を撫でていた。
「だけど児相になんて…私じゃ…どうあってもたっくんを引き取れないのね…?」
「…そうだな」
独身で一人暮らしの女性が子供を引き取れるはずがない。
すると、何故か彩花がじっと俺を見つめてきた。
「彩花?どうした?」
「…ねぇ、拓也さん」
不意に切羽詰まった様子で声を掛けてきた。
「ん?」
「拓也さんは…。今、恋人はいないんだよね?」
「あ、ああ…。今はもう…いないよ」
そうだ。
俺は……お前を何度も何度も失ってきたんだ。
しかし、彩花は次の瞬間とんでもないことを言ってきた。
「ねぇ、それなら…私と結婚してくれる?」
「は…はぁっ?!あ、彩花…!い、一体何を言い出すんだよ!」
まさか彩花からプロポーズッ?!
俺たちは恋人同士でもないのにっ?!思わず耳を疑う。
「お願い…私、たっくんを助けてあげたいの…。たっくんが18歳になるまでの間…書類上だけの結婚でいいから…私と結婚してもらえない?そうすればたっくんを引き取る事が出来るもの」
「あ、彩花…」
まるで夢みたいだ。
どうしよう、あまりに幸せすぎて自分でも顔が赤らんでくるのが分かる。
「あ、あの…だ、駄目…かな…」
伏し目がちに彩花が再度尋ねてきた。
「彩花…」
だけど、俺と彩花の結末はもう分かりきっていた。
6月9日……彩花は死ぬ。
けれど、今回はそうはさせない。自分の身を犠牲にして……彩花の命を救うんだ。
だから幸せな生活を夢見てはいけないんだ。
強く自分の心に言い聞かせた。
「ご、ごめんなさい…変な事…言って…。やっぱり…たっくんの養子縁組の話は…」
「2ヶ月後…」
気づけば無意識に返事をしていた。
「え?」
「2ヶ月後の…6月9日に…返事してもいいかな?」
この日、俺と彩花の運命が決まる。
もし……本当に仮に、2人とも無事にこの日を生き残ることが出来れば俺はもう二度と彩花の側から離れない。
「え?6月9日…?それって…?」
「ああ、卓也の…誕生日だ。それを過ぎたら…養子縁組の話…しないか?」
これは一種の賭けだ。
「う、うん…いいよ」
彩花は俺の言葉に頷いた――。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。


手を伸ばした先にいるのは誰ですか~愛しくて切なくて…憎らしいほど愛してる~【完結】
まぁ
恋愛
ワイン、ホテルの企画業務など大人の仕事、そして大人に切り離せない恋愛と…
「Ninagawa Queen's Hotel」
若きホテル王 蜷川朱鷺
妹 蜷川美鳥
人気美容家 佐井友理奈
「オークワイナリー」
国内ワイナリー最大手創業者一族 柏木龍之介
血縁関係のない兄妹と、その周辺の何角関係…?
華やかな人々が繰り広げる、フィクションです。

思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる