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第2章 114 伝えられない真実
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午前9時半――
彩花の部屋でスマホで情報集めをしていた。
掲示板を辿って、椎名の噂を書いてネットにばらまく……あいつは社会的にも抹殺しなければならない。
何しろあいつは別の世界で何度も彩花を殺してきたのだから。
よし、こんなものでいいだろう。
掲示板に書き込んだところで、彩花が声を掛けてきた。
「お待たせ」
ベランダから彩花が部屋に入ってきた。
「あ、洗濯干し終わったんだ」
「うん。だから今から出掛けようか?」
「そうだな。それじゃ買い物が終ったら俺はそのまま帰ることにするよ」
床に置いておいたジャケットを羽織ると立ち上がった。
名残惜しいが、あまりここにいるわけにはいかない。俺にはするべきことがあるからだ。
「…うん、それでいいよ」
「どうしたんだ?彩花」
彩花の元気の無い声が気になった。
「何が?」
「いや…今返事する時、何だか間が空いていたような気がするから」
「そう?気のせいじゃない?それじゃ行こうか?」
彩花は春物のコートを羽織った。
「よし、行くか」
そして俺たちは連れ立ってアパートを後にした――。
****
2人で駅に向かって歩いている時に、何度か彩花に質問されて返事に困ってしまうことがあった。
つい、うっかり過去の世界の別の彩花から聞いた話を口にしてしまったからだ。
彩花は何故その話を俺が知っているのか尋ねてきた。
いっそ…彩花に真実を伝えられたらいいのに。
俺はお前を助ける為に、何度も何度も過去の世界に戻ってきたのだと。
そこで俺と彩花は恋人同士になって来たのに、いつも6月9日に免れない運命によってお前は死んでしまったのだと……。
けれど、そんな話をしても信じてもらえないのは分かりきっていた。
頭のおかしい人間だと思われてしまうだろうし、何より彩花を怖がらせたくは無かった。
自分が同じ日に必ず死んでしまう運命なんて…誰だって、到底受け入れられるはずがない。
だから……俺は彩花にこう、答えた。
「俺が腕のいい調査員だからさ。これ位の情報調べるのどうってことないんだよ」
「ええ~そんなの嘘でしょう?」
やはり、俺の嘘なんか信じられないか。
だけど…それでも信じて欲しかった。
「本当だって。ほら、早く行こうぜ。彩花」
俺は誤魔化すために彩花の右手を握りしめた。
「え?な、何?!」
彩花は驚いた様子で目を見開いて俺を見る。
「ほら、速足で行くぞ」
言うなり、早足で歩き始める。
「え?ちょ、ちょっと…っ!」
しかし、俺は返事をする代わりに彩花の右手を繋ぐ手に力をこめた―。
彩花の部屋でスマホで情報集めをしていた。
掲示板を辿って、椎名の噂を書いてネットにばらまく……あいつは社会的にも抹殺しなければならない。
何しろあいつは別の世界で何度も彩花を殺してきたのだから。
よし、こんなものでいいだろう。
掲示板に書き込んだところで、彩花が声を掛けてきた。
「お待たせ」
ベランダから彩花が部屋に入ってきた。
「あ、洗濯干し終わったんだ」
「うん。だから今から出掛けようか?」
「そうだな。それじゃ買い物が終ったら俺はそのまま帰ることにするよ」
床に置いておいたジャケットを羽織ると立ち上がった。
名残惜しいが、あまりここにいるわけにはいかない。俺にはするべきことがあるからだ。
「…うん、それでいいよ」
「どうしたんだ?彩花」
彩花の元気の無い声が気になった。
「何が?」
「いや…今返事する時、何だか間が空いていたような気がするから」
「そう?気のせいじゃない?それじゃ行こうか?」
彩花は春物のコートを羽織った。
「よし、行くか」
そして俺たちは連れ立ってアパートを後にした――。
****
2人で駅に向かって歩いている時に、何度か彩花に質問されて返事に困ってしまうことがあった。
つい、うっかり過去の世界の別の彩花から聞いた話を口にしてしまったからだ。
彩花は何故その話を俺が知っているのか尋ねてきた。
いっそ…彩花に真実を伝えられたらいいのに。
俺はお前を助ける為に、何度も何度も過去の世界に戻ってきたのだと。
そこで俺と彩花は恋人同士になって来たのに、いつも6月9日に免れない運命によってお前は死んでしまったのだと……。
けれど、そんな話をしても信じてもらえないのは分かりきっていた。
頭のおかしい人間だと思われてしまうだろうし、何より彩花を怖がらせたくは無かった。
自分が同じ日に必ず死んでしまう運命なんて…誰だって、到底受け入れられるはずがない。
だから……俺は彩花にこう、答えた。
「俺が腕のいい調査員だからさ。これ位の情報調べるのどうってことないんだよ」
「ええ~そんなの嘘でしょう?」
やはり、俺の嘘なんか信じられないか。
だけど…それでも信じて欲しかった。
「本当だって。ほら、早く行こうぜ。彩花」
俺は誤魔化すために彩花の右手を握りしめた。
「え?な、何?!」
彩花は驚いた様子で目を見開いて俺を見る。
「ほら、速足で行くぞ」
言うなり、早足で歩き始める。
「え?ちょ、ちょっと…っ!」
しかし、俺は返事をする代わりに彩花の右手を繋ぐ手に力をこめた―。
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